今日はクリスマスイブ。
去年は色々あったらしいが、俺達は楽しく過ごせたのは事実。
さてさて、今年はどのようなクリスマスを迎えるのだろうか・・・。

「何やってんのシンドウ?」

「ああ、ちょっとな。エイミは先に行っててくれ。俺も後で行くから」



「とある日のプレゼント(前編)」



俺もマルキオ邸に住む孤児の中でも最年長者。
となれば、当然サンタの事情についても知っているわけだ。
いつしか人は気づくものである。
サンタクロースについて。
今のところ、そのことに気づいているのは孤児の中では俺くらいだろう。
他の年長者であるエイミやエレーナも気づいていない。

「シンドウ、こっちに来てくれますか?」

「分かったよ、ラクス姉ちゃん」

サンタについての真実を知っているとなれば、大人達はある意味で容赦しなかった。
それは、他の子供達を先導させたりするのに俺を使うのだ。
まあ、俺もみんなが喜ぶ顔を見れるのは悪い気はしない。
むしろ嬉しいのも事実だ。
俺は呼ばれるままにキッチンへと向かった。

「今年は私がプレゼントを配るのですが・・・」

「え?ラクス姉ちゃんがプレゼントを配るの!?」

俺はその発言に驚いた。
いつもはジャンケンなどでサンタ役を決めるからだ。
しかし、今年はいつもと違う。
俺は「止めたほうがいいんじゃない?」と言った。
さすがにキラ兄ちゃんはともかくとして、ラクス姉ちゃんは女だ。
女がサンタをやるなんて・・・それはたぶんコスプレの領域ではないだろうか。
これは俺の妄想かもしれないが、俺の頭では女サンタ=コスプレサンタというイメージが離れなかった。

「でも、決まりなの。だからこそ、あなたにお願いしたいことがあるのよ」

隣でカリダおばさんが口を割って来た。
そう言えば、今日はキラ兄ちゃんやバルトフェルドおじさん、マリューお姉さん(そう呼べと言われている)の姿が見えない。
ということは、どこかで他の準備をしているのだろう。
俺はどういうお願いかをたずねた。

「それでなのですが、夜8時頃に子供達を海岸へ連れ出してくれませんか?」

「海岸?それは構わないけど、何をするの?」

それ以上はラクス姉ちゃんもカリダおばさんも教えてくれなかった。
時間になれば分かるとしか。
俺にも秘密とは、今年は一体どのようなサプライズなのだろうか。
そこら辺の好奇心は子供だなと自覚せざるを得なかった。
俺は知りたいという気持ちを抑えつつ、これ以上は探らないようにした。
やはりサプライズというのは楽しみなのである。
話を聞いた俺は言うとおりに動くべく、キッチンから離れるのだった。


「ねえ、シンドウ兄ちゃん。どうして海岸へ行くの?」

やっぱりだ。
言い出すとこうなるのは目に見えていた。
話を聞いてから言い訳をずっと考えていたが、名案と呼べるような言い訳は思い浮かばなかった。
だが、いい訳をしなければ、余計に怪しまれる。
そう思い、何か言おうと思った時だった。

「みんな、シンドウがそう言うのだから何かプレゼントを用意しているのよ」

「え!シンドウ兄ちゃんからもプレゼントを貰えるの!?」

「シンドウ兄ちゃん、いつの間に用意してたんだぁ・・・」

助け舟を出してくれたのはエレーナだった。
それに釣られて色々言いだす子供達。
なんだか、嫌な予感もするが、現状ではこの手に乗るべきだな。
俺は彼女の話に乗るしかなかった。

「ああ、そうだ!お前らを喜ばすためのプレゼントを用意したんだ。だから、海岸へ行くぞ!」

「おおー!」

俺は安心した。
とりあえずは海岸へ出すことに成功するのだから。
その後、すぐにみんなで海岸へ向かうこととなった。
なお、この時点では俺達子供しか居ない。
カリダおばさんとマルキオ導師は家へと残ったからだ。
やがて、夜の海岸へと辿り着いた。
赤道に近いオーブとはいえ、夜+冬なのだから少々寒く感じた(南半球は季節が・・・とか、そういう突っ込みはするな)。

「ねえ、シンドウ兄ちゃん。どんなプレゼントを用意してくれてたの?」

子供達の中からそんな声が聞こえた。
一人でもそんな事を言えば、他の連中もつられるのは明白だった。
つられて何人もの子供達が同じことを言い出した。
ここから先の事を聞いていない俺も正直困り果てていた。
どうすればよいのか分からないからだ。
その時、空に光が覆った。
まるで、ピカッと雷が落ちたかのように一瞬光ったのだ。
すると月の方向から何やら、とんでもない影がこちらに向かってきていたのだった。



END



後書き
これは前編です。
タイトルは私があまり見れていない某アニメから取りました。
昔の友人たちが見ろ、見ろと言いますが起きれないんですね。
若さが欲しい・・・。
と、まあ後編へどうぞ。
後編はこちら


タイトル