数か月前、戦争は停戦と言う形で終わった。
あれからラクスはキラと共に地球に降りてマルキオ導師の家で暮らしている。
バルトフェルドやマリューも一緒に住んでいる。
キラの様子に困惑するカリダへラクスやアスラン達が事情を伝える。
そのことでカリダはショックだったが、キラが生きて帰ってきたのが何より嬉しかった。
しかし、キラの傷跡はあまりにも、深かったのである・・・。



「優しき少年の傷跡」



夜中、キラは悪夢により起きてしまう。
一週間のうち5日は、悪夢で起きると言っても過言ではない。
そのことはラクス達も知っており、改善を試みているが、当の本人があの状態。
いつ自殺しようとしてもおかしくない彼なのだから、下手にはできないのだ。
ちなみにキラが見てしまう悪夢には、自分が殺してしまった人達の声が聞こえ、守れなかった人達の声も聞こえてしまう。
さらにそれだけではなく、赤い髪の女性・・・フレイの声までも・・・。

「何故、貴様が生きている!」 

「お前の手は血に染まっている!」

「何で守ってくれなかったのよ 大丈夫って言ったじゃない!?」

夢の中で色々なものがフラッシュバックされ、キラは目が覚める。
いつもは声なき悲鳴だが、今回はいつも以上に強烈だったらしく、声をあげる。

「うわぁぁぁぁぁ」


キラの悲鳴が聞こえる少し前。
カリダ、ラクス、マリュー、バルトフェルドら4人は会議をしていた。
議題はキラの事である。
あれから数ヶ月経つが彼の心は閉ざされたままだ。
どうしたら心をもう少し開いてくれるのか?
彼らはいつも会議している。

「どうしたら、キラは心を開くのでしょうか?」

「難しいな、今のあいつには」

「ええ、力リダさんにも心を開かないのでは」

ラクスの問いにバルトフェルドもマリューもそのように答えた。
キラの現状は、もうお手上げとも言える状況になりつつあったのだ。
そんな中カリダが発言した。

「私はラクスさんなら心を開くと思うわ」

「私もそう思うわ」

「ですが、わたくしには・・」

話の流れでラクスならば心を開くのではないか?
ということになった。
バルトフェルドはうんうん、と頷いているだけだ。
などと話していると、キラの悲鳴がこだました。

「うわぁぁぁぁぁ」

突然のキラの悲鳴。
4人は何事かと思ったが、すぐに予則できた。
悪夢にうなされたのだろうと。
彼が悲鳴をあげるとしたらその関係しか考えられないのだ

「キラ!」

「待て、ラクス」

ラクスはバルトフェルドの制止を振り切り、部屋に向かう。
残された3人は、自分達はどうするかを話し合う。

「バルトフェルドさん、ここは、ラクスさんに任せてあげた方が」

カリダが言った。
ここは2人に任せるべきだと思うからである。
しかし、バルトフェルドとマリューは自分達も行くべきだと考えていた。
何かあってからでは遅いからだ。

「わかっています。でもカリダさん、僕は追いかけた方がいいかと」

「力リダさん、私も追いかけた方がいいと思います」

「・・・ええ、そうね」

結局、彼らも部屋に行くことになった。
すぐさまラクスの後を追う。

「キラ!」

ラクスはすぐさま部屋に入った。
そして、キラを抱きしめる。

「ラ・・ク・ス?」

「はい、そうですわキラ 何があったのですか?」

ラクスはわかっていたが、一応尋ねた。
本人の口から聞かなければ、いけないと思ったからである。
とはいえ、ラクスの予想では何も言わず、彼は眠りにつくという考えが勝っていた。
しかし、キラは時間はかかりながらも答えた。

「夢だよ・・・」

キラの弱弱しい声は闇に紛れて消えそうなくらいだった。
それを聞いたラクスは内心驚きながらも、先程よりキラを強く抱きしめる。

「大丈夫ですわキラ わたくしが傍にいますわ」

キラとは対照的に強く言い放つ。
それはまるで子を抱きしめる母のようだった。
もちろん、相手がラクスだと言うのはキラ本人も分かっている。
でも、一瞬思ってしまったのだから仕方がない。

「歌を聞かせて・・・。そうしたら、眠れると思うから」

珍しいキラのリクエスト。
愛する人からのリクエストに心が躍るラクス。
彼女はすぐに歌い始めた。

「静かなこの夜に あなたを 待ってるの あの時 忘れた微笑み を取りに来て あれから 少しだけ 時間が過ぎて 思い出 優しくなったね  星の・・・」

「あら眠ってしまいましたか、おやすみなさいキラ」
  
部屋の前で盗み聞きしていた大人3人。
盗み聞きは喜ばれる事ではないが、2人の邪魔をするわけにも、開いていた扉を閉めるわけにもいかなかったので、この手しかなかったのである。
実際、それ以外にも手があるのだが、彼らは思いつかなかった。
最終的に、ここは2人に任せようという結論になった。

「僕達も寝ますか」

「そうね」

など会話をし、カリダ達は、それぞれの部屋へ向かった。
その後、翌日から少しずつだが、キラは子供達と遊んだりするようになった。



END



後書き
初めて作った作品・・・ではありません。
これは改装後に原型を修正+加筆したものです。
なので、携帯版より長めになっています。
この作品の原型は携帯版にて掲載していますので、よければそちらも。
出来るだけ、初期の頃を残していますから。
なお、携帯版であった続きはこちら




タイトル