ノウ:「お前達は何者だ!?ここに何の用がある・・・・・・!?」
グレイブヤードへ入ったロウ達。
しかし、そこへ謎の通信が入る。
声から判断して相手は男、しかも年配の方だろう。
ロウ:「いやあ実は『剣』が欲しくてさ・・・・・・」
ノウ:「なるほど、奪略者というわけだな・・・?」
この声にヤバイと思うロウ達。
しかし、時はすでに遅かった。
通信は一方的に切られる。
そして、ロウは気づいた。
遠くの天井に居るMSの存在に。
ロウ:「なんだ?あの爺さんは!?」
「PHASE−13 最後の弟子 Aパート」
そこに居たのは、地上用MSバクゥの頭部に乗っている爺さん。
しかも、刀を持ったまま、ロウ達から見れば床ではなく、天井に居る訳だから奇妙な光景である。
だが、次の瞬間も彼らは驚くことになる。
一見すると、バクゥが走り去ったように見えるだけだった。
気づけばリーアムの搭乗しているキメラの腕が切られているのだ。
ある程度走り去ると、旋回し、再びロウ達の元へと近づいてくる。
ロウ:「俺達は略奪しにきたんじゃねぇ!この野郎、人の話を聞けよ!」
ビームサーベルを抜いたロウ。
その様子を見たノウは伝八(ノウの愛犬)にレバーを押さえておくように指示をする。
彼はバクゥから離れ、レッドフレームに向かいジャンプする。
驚異的なスピードであるものを切ると、ノウはバクゥの頭部へと戻っていた。
そして、ロウのビームサーベルに異変が起きる。
ビームサーベルを発生させる部分のみが切られているのだ。
この爺さん、ただ者じゃない。
そうロウ達に思わせるのだった。
これを見たリーアムは冷静分析し、レッドフレームはギリギリでも自分やキサトの機体では回避は無理と結論付ける。
すると、ロウはもう1個のビームサーベルを使い、床を切り裂き、下へ逃げる。
ロウ:「ちっきしょう!なんなんだ、あのジジイは」
リーアム:「我々が持っている情報が古すぎるのかもしれませんね。時間が経つと状況が変わるのも当然ですし」
そう話していると予想外の事が起こった。
レッドフレームの左足が爆風に見舞われたのだ。
彼らが侵入した場所はトラップエリア(罠区域)である。
どうやら、ロウの場合はワイヤーに引っかかったのが、直接の原因のようだ。
しかし、そう言っていると次はキサトが罠にかかる。
熱探知で反応する罠だったようだ。
これらはリーアム曰く、精巧に出来ているらしい。
彼らは数十分、このトラップエリアを彷徨うこととなった。
*
ロウ:「ふぅ。ひどいめにあったぜ」
何とかトラップエリアを脱出した。
目の前には墓と思われるものが限りなく広がっていた。
ここからはMSを降りて、先へ進むロウ。
墓の多さに圧倒されながらも、奥を目指す。
そして、奥ではロウが求めていたものがそこにはあった。
ガーベラ・ストレート。
彼らがそこへ着いてすぐに後ろから、見たなと言う声がする。
後ろを振り向くと、先程のバクゥに乗っていた人物が居た。
思わず身構えるロウにノウは言った。
ノウ:「身構えずともよい。刀は納めてある。お前達の行動はモニターしていた。しぶとく行動するお前達の目的は本当にあの刀のようだが、すでに朽ち果ててひび割れておる」
話を聞いたリーアムはノウに向かってグレイブヤードについてたずねた。
静かにノウは答える。
ノウ:「彼らはすべて何がしかの技を持った技術者達だ。古い時代から受け継がれた技術の最後の後継者達じゃった。しかし、時代の流れにより我々の技術は少しずつ必要とされなくなった」
話はまだ続けられた。
使われない技術は死んだと言っても同然だ。
我々はここで静かに余生を過ごすはずだった。
しかし、どこかでグレイブヤードのことを知った興味本位の連中が荒らしていく。
その略奪者達に対し、我らは幾度も戦いを挑んだ。
そして、半年前の戦いの際にガーベラ・ストレートはああなってしまった。
と、ノウは悲しそうに呟いた。
リーアム:「だから、私達を奪略者と・・・。あのトラップエリアもそのために」
ノウ:「わしらは死にゆく運命だとしても、わしらがここに生きた証だけは残しておきたかった。だから、この墓(記憶装置)に残したというわけじゃ」
しばし、沈黙が訪れた。
が、沈黙はゼルムスの登場によって破られた。
ゼルムス:「だから、お前達の求めたガーベラ・ストレートはもうない。だから、お前達は即刻ここから去れ」
突然声がし、ロウ達は周辺を見回す。
やがて、男がロウ達の前に姿を現す。
その姿を見て、リーアムは驚いたように言った。
リーアム:「あなたは確か、ゼルムス・ザンボルト」
知っているのか、とロウに聞かれる。
彼の事でリーアムは説明をする。
ゼルムスは以前、ザフト軍の特殊部隊に居た人物だ。
初期に開発されたプロトタイプのジンなどにも搭乗経験があり、彼らのモーションはザフト軍のMSにおけるOS全般に影響が渡っているほどだ。
ノウ:「ほう。よく知っているな。ゼルムスは私の弟子の一人だ」
そう言われると、ゼルムスは一礼する。
つられてキサトやリーアムもするのだった。
だが、しない男が一人。
ロウ:「ゼルムスと言ったな。それに爺さん。俺は帰らないね。壊れているからって放って帰るのは俺の性に合わねえ。要するにあの刀を直せばいいって話だろ?」
その言葉に驚きを隠せないゼルムスとノウ。
二人は一通りならば刀を造りだす技術を持っている。
しかし、ガーベラ・ストレートはその程度の技術で直せるものではない。
刀というのは厄介な物である。
造った本人が生きておらず、詳しい設計も分からない。
それなのに、他の者が無理に直しても以前のように造るのは難しい。
例え、治ったとしても元には戻らないだろう。
だから、ゼルムスもノウもあえて手を出さなかったのである。
ゼルムス:「あれを本気で直すつもりか。だが、あれを創った技術者はもう居ないぞ?」
ロウ:「技術ならここに残されている。だったら、俺が再現すればいいことだ。それに剣を操るのなら、あんたらに習えばいい」
創るのは無理だというゼルムス。
彼に対し、ロウは墓の上に手を乗せながら言った。
さらに言葉を付け加えて、こうも言った。
ここで朽ち果てるよりはいんじゃないのか、と。
彼の発言にゼルムスはノウの顔色をうかがう。
自分だけで判断するわけにはいかないからだ。
やがて、ノウは決断を下した。
ノウ:「お前相当のバカらしいな。いいだろう」
ロウ:「決まったな。それじゃあ、契約成立だ!」
親指を立てて、グッジョブとするロウ。
こうして彼の新たなる仕事は始まるのだった。