グレイブヤードに来て3日が過ぎた。
修行と刀づくりに明け暮れるロウ。
師匠であるノウとゼルムスに色々と学んでいた。
しかし、その厳しさは半端ではない。
休憩と言えば、トイレと寝るときくらいで、それ以外は全て剣術の修行などに当てられるのだ。
一方でリーアムとプロフェッサーがレッドフレームのOS調整を行っていた。
刀を使うとしても、いきなりでは関節やOSに問題が出るからだ。

ゼルムス:「なっとらん!そうではない!」

ノウ:「刀を腕で振り回すのではなく、体全体を使うのじゃ!」

二人の声が部屋に響いた。
素早く身につけるには体で覚えさせるしかないのである。
だが、素人に教えるのは教える側として大変なことであった。
もちろん、教えられる方も大変ではあるが。

ノウ:「体の軸がずれておる。重心を体の中心におくのじゃ」



「PHASE−13 最後の弟子 Bパート」





ロウ:「全く・・・とんでもねえスパルタ爺さんとその弟子だぜ」

彼も早く覚えようと努力はしており、上達は早かった。
その上達の早さはコーディネイターであるゼルムスも内心驚いていた。
だが、敵がいつ来るか分からない以上、ゆっくり教えている時間もない。
そう考えれば当然でもあった。

ノウ:「見ろ、この剣は重さで切るような剣とは本質的に違う。真剣とは最も薄い部分が刃になっている。この刃の部分を切る対象に対して垂直に当てなければ切ることはできん。だが、これを最も効率良く垂直に振り切れば力など関係なく、一刀両断出来る!」

ちなみに彼らが今使っているのは木刀である。
練習で本来の刀を使うわけにもいかないからだ。
話を聞けば少しは変わるだろうと思ったノウだが、そうではなかった。
彼は奥義を教えてくれなどと言いだしたのである。

ノウ:「馬鹿もんがっ!基本も出来とらん奴に何が“奥義”だ!基本の中に奥義があるとしれ!!」

その後、ロウに素振りを30分間するように指示をする。
指示をした後、ノウとゼルムスはリーアムのところに来ていた。
リーアムはレッドフレームのOSにノウの動きを中心に組み込んでいた。
動きはゼルムスも基本は同じなのだが、彼はコーディネイターであることを考慮すると、ロウと同じナチュラルであるノウの方がそれほど違和感もなく適任となったからだ。


傭兵1:「なるほど、これは高く売れそうだ。さすがはケネフ・ルキーニだな、いい仕事をしている」

ある場所で情報屋であるケナフは3人の傭兵と会っていた。
情報を提供するケナフは冷やしたポッキーを食べながら、画像を見せながら淡々と説明する。
その画像にはレッドフレームの姿があった。
さらにメンバーの性格などを記載した画像を見せる。
傭兵達は情報に対する金を支払って、グレイブヤードへと向かった。

ケナフ:「情報を制する者が世界を制する。しかし、その情報の意味を見抜けなければ踊らされる羽目になるだろうがね・・・」

自分の与えた情報でどのように事は進むのか。
彼は結末を見守るためにパソコンへと目を向ける。
そこには現状のロウ達の様子が確認できた。
彼はこのように世界各国やプラントを始めとするコロニーにカメラなどを仕掛けている。 Nジャマーの影響が完全になくなるわけではないが、それでも影響は少なく、何が起きたかを確認するには十分な画質だ。
これらのことからケナフは情報を手に入れるのが早く、腕の良い情報屋として知られているのだ。


ロウ:「よし、出来たぜ!」

彼は剣の修行と同時に刀造りもしていた。
何日もかけ、刀は完成したのである。
その切れ味はノウもゼルムスも認めるまでに戻っていた。
これから試し切りをしようとした時、キサトの叫び声が聞こえた。

傭兵1:「人質はすでにこちらの手の中だ。返して欲しければ、その赤いMSとの交換が条件だ」

ジンの頭部のとさかの部分にキサトは縛られていた。
見渡す限り、敵はどうやら3機居るようだった。
さらには見る限り無傷であるため、それは罠に一切かからずここへ来た事を意味しており、そのことにノウは驚いていた。
一方でゼルムスは敵の侵入に気づかなかった自分を恨んでいた。

キサト:「(このままじゃ足手まといになっちゃう!)ロウ、私の事はいいから、こいつらをやっつけて!」

傭兵1:「そんなお決まりのセリフを叫んだところで、無理なもんは無理だぜ」

すでにジンはレッドフレームを囲んでいた。
この状況を破るのは難しい。
彼女が人質に取られている以上、諦めるしかないのだろうか。
そのことを一人の男を除いて、リーアム達は考えていた。

ロウ:「キサト、お前の言い分は分かったぜ。少し待ってな!今すぐ助けてやるからな!」

傭兵1:「何ィ!?じゃあ、見せてもらおうじゃねえか!この状況で何が出来るのかを!」

言いきったロウに怒りを覚えた傭兵はレッドフレームに対し、ビーム砲を向ける。
そして、レッドフレームをロックオンするとすぐさま発射した。
その攻撃に対し、ロウはガーベラ・ストレートを構え、そして、斬りにかかった。
ビームを真っ二つに切断するその様は、見ている者の誰もが驚く光景だった。
一瞬でビームを斬ったかと思えば、続いてビームを放ったジンに対して斬りかかる。
とさかの部分を避けつつも、そのジンを真っ二つに斬り落とす。
ジンが斬れたことにより、落下するキサトをレッドフレームの手の平でキャッチするロウ。

傭兵2:「ちっ!?覚えてろ!」

その光景を見た2機のジンはその場を離れ去った。
しかし、彼らが逃げた先は罠エリア。
彼らは爆風の中へと消えていった。
それを見たノウは溜息を呟きながら言った。
お前達の持っていた情報は少し古かったようだな・・・と。

ロウ:「大丈夫か?キサト!」

コックピットから出たロウはキサトに向けて言った。
余程、怖かったのだろう。
少し涙を見せるキサト。
それを見たロウは話を続けた。

ロウ:「俺はお前の事を足手まといだなんて、思ってないぜ?お前が居ると色々あって面白いし、それにお前は俺達の仲間なんだから助けるのは当たり前だ」

彼の言葉に感動するキサト。
しかし、その時だった。
右肩の服が切れ、落ちたのである。

キサト:「もう、ギリギリじゃない!?もう少しずれていたら、私が死んでたかもしれないのよ!!」

ロウ:「助けてもらったんだから、そう怒るなって」

などといい雰囲気だったのだが、いつもの会話になってしまっている二人なのであった。
それを見たノウとゼルムスは改めて、ロウとキサトが若いことを悟った。
彼らの横ではリーアムがうんうん、と頷いていた。
その様子を見ていたケナフは呟く。

ケナフ:「この男は利用価値がありそうだな。もう少し、試してみるか・・・」






END
NEXT「PHASE−14 野望を秘めて Aパート」