ガルシア:「ついに手に入れたぞ!連合の最新型MSを!」

レッドフレームを手に入れて喜ぶガルシア。
彼に便乗し、他の兵士達からも歓喜に似たような叫びがあがる。
それを見たダーキンは突入を試みた。
人質を救うために。
しかし、予想外のことが起きる。

ロウ:「てぇい!」

劾:「何っ!?」

ロウ:「ハチ!ブルーフレームを解析した時のデータが残っているはずだ!そのデータでコイツを使えるようにしろ!」

突如、ロウはブルーフレームのサーベルを抜き取った。
もちろん、これだけではブルーフレームのビームサーベルを使うことは不可能である。
だが、ハチを解することにより、それは可能となる。
サーベルが使えるようになり、わずかなエネルギーから短いビームサーベルが創り出された。
これにより攻撃されると考えた劾はシールドを構える。

ロウ:「アンタ言ったよな?相手はこっちだってよ!」

そう言い放ったロウは、ビームサーベルを司令部へと突き刺した。
刀身が短いため、ガラスの破片と衝撃が襲う程度で済んでいる。
もしも、これが普通のビームサーベルだったら、人質もろとも死んでいただろう。
そう考えながら、ダーキンは司令部へと突入する。
彼が入った時には、ほとんどの兵士が衝撃で気を失っていた。

ダーキン:「今しかないな!」






「PHASE−12 剣豪の集う居住衛星 Aパート」



ガルシア:「何っ!?ダーキン、貴様ぁ!」

銃を向けるガルシアだが、相手はかつてザフトの特殊部隊に居たダーキン。
当然のようにナチュラルではなく、コーディネーター。
彼は護身用に所持していた銃をガルシアに向けて発砲した。
頭や心臓を狙わず、ガルシアの持っていた銃へ当て、銃を撃ち落とす。
そして、一発蹴りを腹へと入れる。
強烈な一撃だったらしく、ガルシアは失神していた。

ダーキン:「やっと、お前達を助けられるな」

ピレンモ達に向けて、そう言った。
ガルシアの失神により、意識があった兵士達はもうすでに戦意を失っており、ピレンモ達を助けることは容易だった。

劾:「すまなかったな、ジャンク屋のロウ。また借りができてしまったな。大した奴だ、お前は」

通信を入れる、劾。
ところがロウはそれどころではない。
生命維持装置がオフになっており、コックピット内の酸素が大変な事になっているのだから、当然だ。
その後、ダーキンにより、処置が施される。
処置が終えたロウは劾達に事情を聞いた。
イライジャ達が人質にされていて、下手に逆らうことが出来なかったことをはじめ、色々と聞かされる。

ロウ:「へぇ、まあ、そういうことなら、許してやってもいいぜ。それにしても噂のダークキングに会えるとはな」

医者であるダーキンは通称ダークキングと呼ばれている。
かつて旧世紀に居たとされる医者の人物の再来として、そう呼ばれている。
彼自身は気づいていないが、その医者と似たようなことをやっていることも呼ばれている理由の一つだ。
例えば、驚愕するほどの報酬で手術をするという事などである。

ダーキン:「そうか。今回はお前に助けられたな。これが俺の連絡先だ。何かあった時、俺を呼んでくれれば、無料で手術してやる。いくぞ、ピレンモ」

ピレンモ:「みんな、またどこかで会えること、楽しみにしてるね!あ、待ってよ」

そう言って、二人は去って行った。
やることがあるのだろう。
しばらくして、ロウ達もアルテミスから離れる。
それぞれすることがあるのだから。

ダーキン:「ただいま」

キルザム:「予定より、遅れたな二人とも」

戦艦ミスティルティンに帰って来たダーキンとピレンモ。
彼らを出迎えたのはキルザムという男だった。
ここでのダーキンは艦長という立場についている。
しかし、ほとんど艦には居ないため、ゼルムスが艦長代理をしていることが多い。
彼が見当たらないため、ブリッジへ行く中、ダーキンはキルザムへたずねた。

ダーキン:「ゼルムスはどうした?」

キルザム:「あいつなら、グレイブヤードへ向かった」

グレイブヤード。
デブリ帯に紛れる居住衛星のことだ。
そこにはゼルムスの師匠に当たる人物が居る。
彼ゼルムスは数か月に1回のペースで、グレイブヤードに向かっている。

ダーキン:「そうか・・・。では、俺が居なかった間の状況報告を頼む」


ゼルムス:「ん?お前が来るとは、珍しいな。パルキ」

グレイブヤードを進んでいくゼルムス。
そんな彼はパルキという人物に遭遇する。
と言っても、遭遇したのは人ではなく、MSではあるが。

パルキ:「仕方あるまい。あの爺さんに聞きたいことがあるのでな」

彼は通信でそう言った。
ちなみにパルキの搭乗機はディン。
ただし、彼なりの改造が施されている。
二人はその後、奥へと向かった。

ノウ:「ほう。ゼルムスはともかく、貴様はどの面下げて来たのだ?」

グレイブヤードの奥で待っていたのはウン・ノウと言う人物だった。
彼こそが、ゼルムスの師匠に当たる人物である。
全てと言ってもいいほど、剣術をマスターしている人だ。
それはもちろん、常人に出来ることではない。

パルキ:「あの大会に出たのは悪かったと思っている。だけど、俺は試してみたかったんだ!自分がどこまで通用するのか」

あの大会とはSOC(ソード・オブ・コンテスト)のことである。
これは世界一の剣豪を決める大会であり、5年に一度の周期で行われている。
ちなみに戦争などとは関係なため、ナチュラル、コーディネーターともに参加可能。
この大会においてパルキは優勝している。
そのため、現在では剣を扱う者達の間では有名人となっている。

ノウ:「違う。そんなことを言っているのではない。何故、偽名を使わなかったのかと聞いているのだ!?」

彼がここまで言うのは訳がある。
パルキは本名で大会に出場、優勝している。
普通の名前であれば良かったのだが、ノウはパルキのファミリーネームが普通ではないことを知っていた。
彼の名はパルキ・グロード。
一般には知られていないが、一部にはグロードと言う名は有名だ。
何故なら、このグロードという名は、オーブ五大氏族のグロード家を指しているからである。
基本的にオーブという国で知られている一族は政治を中心のアスハ家、外交が中心のキオウ家だ。
一般には、この2つの一族がオーブを支えていると思われていることが多い。
しかし、その裏でオーブを支えているのが、ホクハ家、サハク家、そしてグロード家である。

ノウ:「・・・お前の活躍は聞いておる。しかし、グロード家の名前さえ、出さなければ、素直に喜べたんだがな」

彼ノウもまたオーブ五大氏族のグロード家との関わりがある。
しかも、先祖代々続いている。
それはグロード家とノウの一族は親戚にあたり、交流があるからだ。
実際、数年前までは彼はオーブに在籍していたのである。

パルキ:「爺さんが言いたいことは分かっている。だけど、俺は悔しかったんだ。いつも表で輝いているあいつらが!」

ノウはグロード家のことを考えて先程から怒っていた。
グロードはあくまでオーブを支える陰の存在。
それを明るみにしてはならないのだ。
グロード家の当主はその考えをノウに以前話をしていたのである。
もちろん、パルキの言い分は痛いほどウン・ノウにも分かっていた。
彼は目立ちたがり屋で、パルキが子供の頃からそのことを知っていたから。
表で輝くのは確かに彼ではない。
アスハ家関係者だ。
だからこそ、ノウはパルキに言った。

ノウ:「パルキ、陰は陰でやる仕事があるのだ。縁の下の力持ちという言葉があるようにな」



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