マリュー:「これは!?」
アルテミスに入港したアークエンジェル。
だが、待っていたのは束縛。
瞬く間にブリッジ、食堂、格納庫を始め、艦の至る所が押さえられる。
マリューの恐れていた事態が起きてしまった。
この艦は識別コードを持たないのだ。
持たないということは、敵である可能性も否定できない。
たとえ、非常時だと言っても通じはしないだろう。
ナタルが必死に反論するが、効果はない。
彼女が黙ると、士官がブリッジから連れて行かれた。
この艦での士官はマリューとナタル、ムウを指している。
同じくムウも連れて行かれていた。
マードック:「何だってんだよ!」
格納庫に居た彼らは食堂に連れて行かれた。
しかし、ここは従うしかないと分かるほどの状況。
そのため、嫌でも従うしかなかった。
ガルシア:「大西洋連邦の極秘軍事計画・・・こんなところに来るとは・・・」
側近にそう話すこの男。
だが、内心ではアークエンジェルを我が物にしようという考えが思い浮かんでいた。
この男こそが、アルテミスの司令官ジェラード・ガルシアなのであった。
「PHASE−9 消えるガンダム Aパート」
ガルシア:「ようこそ、アルテミスへ」
マリュー、ナタル、ムウの3人はアルテミスの司令室へ来ていた。
自己紹介しないわけにもいかず、自己紹介をする3人。
名前を聞いたガルシアはIDをチェックし、彼らが大西洋連邦の者であると確認する。
それを終えると、今一度の確認を込めて一人ずつ名前を挙げた。
ムウ:「お手間を取らせて、申し訳ありません」
ガルシア:「いや、構わないさ。輝かしき、君の名は私も耳にしているよ。“エンデュミオンの鷹”殿。グリマルディ戦線には私も参加していた」
グリマルディ戦線。
コズミック・イラ70年5月〜6月の1ヶ月間に渡って繰り広げた戦いの事である。
この戦いでムウはラウ・ル・クルーゼと出会い、謎の声も聞いている。
最終的には地球軍が表ざたにしていないが、氷に混じったレアメタルを融解させるための装置であるサイクロプスを暴走させ、戦いを終わらせた。
ムウはこのサイクロプスからも逃れる事ができ、さらにジン5機を落としたとして“エンデュミオンの鷹”という通り名を得る事となった。
この戦いに参加していたガルシアもサイクロプスから、生き残ったというわけである。
ガルシア:「ところで、すぐに補給と言うのは難しくてね・・・」
マリュー:「お願いします!我々は一刻も早く、月基地へ向かわなければ行けません。ザフトにも追われていますし・・・」
そう聞くと、ガルシアは後ろのモニターを切り替えた。
移っているのは傘の外の映像だ。
ザフトのローラシア級の戦艦が1隻確認できる。
しかし、ガルシアの態度は変わらない。
ムウはアルテミスに危害を及ぼすわけにはいかないと、すぐに補給をするように言ったが、応じてはくれなかった。
ムウ:「アルテミスはそんなに安全ですかね」
ガルシア:「ああ。まるで母の腕の中のようにな」
一方でローラシア級の戦艦、ガモフのブリッジでは作戦会議が行われていた。
防御兵器としては優れているアルテミスの傘。
それを破る方法は今のところない。
特に重要な拠点でもないため、ザフト軍も今までここへは攻撃をしていない。
ニコル:「傘はいつも開いている訳ではありませんよね」
艦長であるゼルマンにたずねる。
もちろん、ずっと傘を開いている訳ではない。
しかし、敵が接近すると傘を開かれてしまう、とゼルマンは答えた。
そう聞いたニコルは、あのブリッツならやれるかもしれないと話す。
なんでもブリッツにはもう一つ変わったシステムがあるらしい。
それを聞いたゼルマンは艦の向きを変え、アルテミスから遠ざかる事にした。
作戦は光波防御帯が消えてから、始まるからだ。
ガルシア:「この艦に積んであるMSとパイロットの技術者はどこだね?」
彼は側近と共にアークエンジェルの食堂へ訪れていた。
アークエンジェルの方の捜査は順調だが、MSに解析不可能のロックがかけられている。
アルテミスの技術者が解析に全力を上げているが、すぐに出来るものではない。
だから、ガルシアはこの場へ訪れたのである。
それを聞き、立ち上がろうとするキラをマードックは抑えた。
ここでキラが言えば、大変な事になると思ったからだ。
彼らの言葉に不満を持ったノイマンは言い寄る。
ノイマン:「何故、我々に聞くんです!?」
側近がノイマンに掴みかかる。
彼らの会話の中でキラはムウの言っていた事を思い出した。
ストライクの起動プログラムにロックをしろ、と言っていた意味を。
マードックは聞きたい事があれば、フラガ大尉に聞けというも、戦闘映像は記録されている上にガンバレル付きのメビウスを扱える人物は非常に限られている。
それはないとガルシアは言いつつ、ミリアリアに近づき、彼女の腕を掴んだ。
これにキラは怒りを覚え、立とうとするが、マードックに抑えられる。
だが、怒りを覚えたのはキラだけではなく、トールもであった。
トール:「ミリアリア!」
立ち上がるが、それ以上は行動できないトール。
もし自分が下手に行動を起こせば、アルテミスから出る事は出来ない。
そう感じたからである。
だから、トールは自分の気持ちを必死に抑え、こらえた。
キラ:「やめてください!卑怯な!あれに乗っているのは僕ですよ!」
我慢できなくなったキラは自分から、言った。
これ以上、ミリアリアに危害を加えるのを耐えられなかったからだ。
ガルシア:「坊主、彼女を庇おうと言う心意気は買うが、あれは貴様のようなひよっこが扱える代物ではないだろう!ふざけた事をするな!」
彼はキラに殴りかかった。
しかし、すぐに投げ飛ばされる。
それに驚き、側近たちも駆けつける。
マードック:「キラ、止めろ!抵抗するな!」
それでも聞かないキラ。
ガルシアの側近を止めようと、サイが止めに入るが殴られる。
これを見たフレイはキラがパイロットだと言った挙句、コーディネーターであることも言ってしまう。
あちゃーと言わんばかりに顔をするマードック。
コーディネーターと聞いたガルシアはキラを食堂から連れて、格納庫へと向かった。
そして、キラが居なくなった食堂でトールは怒りをあらわにする。
トール:「なんであんな事言うんだよお前は。キラがどうなるかとか考えないわけ!?お前って!」
フレイ:「お前、お前って何よ!キラは仲間なんだし、ここは味方の基地なんでしょう?なら、いいじゃない!」
トール:「地球軍が何と戦っていると思ってるんだよ!」
食堂に気まずい雰囲気が流れる。
こんなやり取りが行われているなどキラは知らなかった。
もちろん、ガルシア達も。
そして、アルテミスの外で起こっている事も知るはずがなかった。