ニコル:「システムオールグリーン!ニコル・アマルフィ、ブリッツ出ます!」

光波防御帯が解除されたのを確認すると、ニコルは出撃した。
次に、ニコルはブリッツのもう一つのシステムを使用する。
それはミラージュコロイド。
レーダーや肉眼では確認が不可能なまでに、周囲に紛れ込む。
ちなみにこのシステムを応用したものが、ビームサーベルである。
今回は練習なしの1発勝負。
さらに使える時間は80分と限られている。

ニコル:「でも・・・やるしかない!」

ここまで来たら引くわけにはいかない。
彼は単独でアルテミスへと向かった。
光波防御帯が消えているのだから、後は近づいて発生装置を破壊すればいいのだから。



「PHASE−10 消えるガンダム Bパート」





キラ:「OSのロックを外せばいいんですか?」

格納庫へと連れられたキラは、少し強きな口調で言った。
ガルシアはそうだと言い、さらに付け加える。
君にはもっと色々な事が出来るのではないか、と。
何をするつもりなのだろう?
そうキラが思っていると、ガルシアはストライクを見ながら話した。

ガルシア:「例えば、こいつの構造を解析し、同じものを作るとか。逆に、こういったMSに対して有効な兵器を作るとかね・・・」

どうやら、彼は全てのコーディネーターがそうできると思っているらしい。
コーディネーターは確かに全般的に能力は高いし、免疫力も高い。
だが、苦手なものも人によって異なり、存在する。
第一、自分は学生で軍人ではない。
だから、そんなことをしなければいけない理由はない、と答えるキラ。

ガルシア:「だが、君は裏切り者のコーディネーターだ」

キラ:「裏切り者!?」

動揺するキラ。
そう聞いて、頭の中で出てきたのはアスランだった。
親友同士だった彼。
しかし、今の彼は自分の敵。

ガルシア:「どんな理由でかは知らないが、どうせ同胞を裏切ったのだろう?ならば、色々と・・・」

キラ:「違う!僕は・・・!」

ガルシア:「地球軍側につくコーディネーターというのは貴重だよ。有名なのでジャン・キャリーというのが居るが・・・なに、心配する事はない。君は優遇されるさ」

この優遇とは明らかに別の意味だとキラは確信した。
事実、キラは知らないが、ジャン・キャリーのMSは白く塗装が施されている。
これは彼がコーディネーターであり、いつ裏切るか分からない。
監視の意味も含めて、白く塗装されているのだ。

キラ:「・・・・・・」

彼は黙々と、OSのロックを解除していく。
今の状況では、従わざるをえないからだ。
が、作業中に爆発音が聞こえた。
さらに揺れも起きる。
この事態により、アルテミスの管制室では、光波防御帯の発生準備が行われていた。

ニコル:「あれかっ!」

巣をつつけば出てくる。
ディアッカもよく言う言葉だが、この状況にはぴったりの言葉だろう。
これだけビームを放っていれば、敵は光波防御帯を使おうとする。
そうすれば、発生させる装置の中でも重要なものが露になるのだ。
ニコルは発生装置をビームサーベルで切り落とす。
これによって、アルテミスは光波防御帯を発生させる事が不可能となった。

ノイマン:「この警報は何だ!?」

食堂を見張っている兵士に聞く。
しかし、うろたえる兵士達。
これはどう考えても攻撃だ。
ノイマンはブリッジへと向かう。
彼を追おうとする兵士達はチャンドラ達取り押さえる。
その後、彼らもブリッジへと向かった。

ノイマン:「艦を起動させる!このままじゃ、ただの的だ!」

一方で、状況を悟ったムウ。
とっさの判断で、ある事を思いつく。
そして、それを実行する。

ムウ:「ちっ!やられたな・・・うわぁ!今の爆発で部屋に亀裂が入った!空気がァ!」

そう叫んだ後、二人に聞こえるくらいの声で言った。
叫べよ、ドアを開けさせるんだ。
彼の作戦にマリューはすぐに乗った。
ナタルは乗らなかったが。

マリュー:「キャァーーー!助けてぇ!死んじゃう!」

ムウ:「早く助けてくれェ!」

そう叫びながら、ムウは扉の周辺に待機。
すると、ドアが開き、兵士達が入ってくる。
ムウは最初に来た兵士へ首にチョップ、その次の兵士には腹へのパンチを喰らわし、部屋を後にする。
彼の行動に驚くナタル。

ムウ:「今は急ぐんでね!」

マリュー:「そうね。アルテミスでの心中はごめんね!」

3人は、アークエンジェルへと向かった。
港ではすでにブリッツとMAとが戦闘していた。
今しかない!
そう思ったキラは、コックピット周辺に居た人達を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばした後はコックピットを閉じて、ストライクを動かした。

キラ:「攻撃されてるんでしょう!?こんなことをしている場合ですか!」

装備をソードストライクに換装し、出撃する。
目の前にはすでにブリッツの姿があった。
攻撃してくるブリッツに対し、キラはシュゲルトゲーベルで格闘戦を挑む。
丁度、マリュー達はアークエンジェルのブリッジに戻ってきていた。
戻ってすぐに指示をする。

マリュー:「ここでは身動きが取れないわ!アークエンジェル発進します!」

キラ:「くそ・・・。僕達をもう放っておいてくれ!」

叫んだところで、通信していないから届くはずはない。
それでも、キラは叫ぶ。
先程の言葉を思い出すだけで胸が締め付けられるから・・・。

ガルシア:「何をしている!早く艦を出せ!このアルテミスがたった1席の艦に・・・うわぁ!!!!」

司令部で指示していたガルシア。
しかし、バスターの攻撃で被弾したメビウスが司令部を直撃したのだ。
そして司令部は爆風に包まれる。

マリュー:「ストライクを呼び戻して!反対側の港口より、アルテミスを離脱します!」

ミリアリア:「キラ、キラ、戻って!アークエンジェル、発進します!」

通信を聞いたキラはアークエンジェルの元へと向かう。
ブリッツのパイロットの叫びなど聞こえるはずがないのだから。

ニコル:「逃げるのかぁ!」

ストライクを追いかけるニコル。
しかし、爆風が邪魔をして先へはいけなかった。
その間にストライクはアークエンジェルに着艦する。
着艦したのを確認すると、マリューは最大千速で離脱するよう指示を行う。
そして、アークエンジェルは、ところどころで爆発が起こっているアルテミスから離脱した。
もう少し、遅かったらアウトだったかもしれない。
そのことを考えると安心するのが普通だろう。
ブリッジでは、みんなが安心していた。
もちろん、離脱したのはアークエンジェルだけではない。
ブリッツ、バスター、デュエルも離脱する事が出来たのだ。
ストライクから降りるとムウの言葉に答えず、キラは自室へと向かった。
精神的にも肉体的にも疲れ果てたキラ。
すぐに横になる。

トリィ:「とりぃ?」

アスランから送られたマイクロロボット「トリィ」がキラの肩に止まる。
しかし、今のキラに答える気力は残っていなかった。

キラ:「僕は・・・」

そう呟いた後、一筋の涙が零れる。
キラの精神はボロボロだった・・・。






END
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