アークエンジェルがアルテミスへ入港した頃、ヘリオポリス宙域でも動きがあった。
ジャンク屋のロウ達はいまだ留まっていた。
理由は勿論、宝を探すためである。
一方でオーブ軍特殊01部隊この宙域から離れようとしていた。
出来るだけの救命ポッドを回収し、その中に、自分達のターゲットが含まれていた。
回収できるポッドにも限界があるため、後は救助隊に任せるのである。

カガリ:「マサカズ、あれはどういうことだ!?お父様は何故、あのようなMSを!」

マサカズ:「あれは・・・ウズミ様は何も知らなかった。・・・とはいえ、知らなかったでは、済まされないだろう。おそらく、代表の座を降りなければいけなかっただろうな」

そう言った瞬間、パチンという音がブリッジに響いた。
カガリがマサカズの頬をビンタした音だった。
彼女がビンタした理由。
それは・・・。

カガリ:「・・・お前、まさか知っていて隠していたのか?」

彼は頷く。
サハク家の目的を知りつつ、あえて黙秘した。
そうすることで、自分達にもMSを得る事が出来た。
結局、こちらで回収することが出来たのは自分のも合わせ、計2機。
それだけでも十分だった。

カガリ:「何のために!?お前はお父様が嫌いなのか!」

次はマサカズからビンタが飛んだ。
本当は殴りたかったが、そればっかりは出来なかった。
彼女の立場を理解しているからである。
マサカズ:「違う!!オーブを守るためにどうしても力が必要だった!確かにアストレイの量産が進んでいる今、そんな力は必要ないのかもしれない。それでも、力なくして物事を成し得る事は出来ない!だから、俺はあえてロンド兄弟達の事を見逃したんだ!それより・・・お前が今、すべき事はウズミ様の元へ戻る事だ!」






「PHASE−8 ジャンク屋VS宇宙海賊 Aパート」



カガリは黙っていた。
彼の言っている事が分からないわけではない。
でも、それを認めるわけにはいかなかった。

マサカズ:「カガリ・・・ウズミ様は心配している。お前はウズミ様の大切な娘なんだ。だから、これ以上、ウズミ様を・・・父上を心配させるな」

彼はそう言ってカガリを抱きしめた。
恋人だから、抱きしめたわけではない。
二人は義理であっても兄妹なのだ。
義理と言えど、絆は強い。
その場に居た一人の女性を嫉妬させるほどに。


デオム:「姫君と守り人はオーブへ向かったか・・・。お前でも、あんな言葉が言えるとは・・・格好つけたか?」

マサカズ:「違うけど、兄として言う時は言わないと、な」

二人の関係はややこしかった。
産まれはマサカズの方が早いのだが、ウズミに引き取られた順ではカガリの方が先なのだ。
今のところ、とりあえずの処置としてマサカズが兄となっている。

サユリ:「だからって抱きしめることはないんじゃないの?」

マサカズ:「あれは・・・兄としてだな・・・・・!?デオム、俺はそろそろプラントに向かう。後は任せるぞ」

彼にとってラッキーでもあり、アンラッキーなタイミングだった。
とはいえ、次に会ったときの彼女の反応が怖い。
彼はブリッジから出て行った。

キール:「あ〜あ。サユリさん、今度、倍返ししちゃえば?」

サユリ:「そうね♪」

ブリッジではそんなやり取りが行われていた。
その頃、マサカズは格納庫に居た。
これからプラントへ行くからである。
プラントへ行かなければならない理由はヘリオポリス崩壊の件だ。
あそこまでの被害を出したのは地球連合軍、ザフト軍の両軍に責任がある。
しかし、元々はザフトの攻撃がきっかけで崩壊したのだ。
そのことを言わずに居られない。
マサカズはプラントへと単独で向かった。
勿論、MSを駆って。


劾:「戦いを挑むなら相手を選ぶべきだったな。イライジャ、艦へ帰るぞ」

ロウから離れてすぐのことだった。
二人に襲う海賊の姿が会ったのである。
これだけの崩壊ともなれば、先程の様なジャンク屋もいれば海賊もいるのである。
彼らは海賊の艦のエンジンを撃った後、仲間の待つところへ向かっていった。

ポーシャ:「このままじゃボスと合流できないわね・・・。仕方ないわね。“救難信号”を打って」

彼女はこの艦の代表である。
珍しいMSを見たため、敵へと攻撃。
最終的にエンジンを被弾され戦闘は終了した。
彼女は珍しいMSとは別のジンに付いていた“サーペントテール”のマークに気づかなかったのである。
やがて、救難信号をキャッチしたジャンク屋達が彼女の前に現われた。
そして、素早く修理の作業に取り掛かる。
手際が良く、それほど時間が掛からず、修理は完了した。

ポーシャ:「ありがとうございました。私は艦の代表のポーシャといいます。いやぁ、『海賊に襲われた』と通信したので、誰も助けてくれないんじゃないかって心配しましたよ」

彼女はジャンク屋の船に来ていた。
海賊と言えど、ここらの礼儀はしっかりしているのである。

ロウ:「なぁに海賊なんぞ、出てきても俺のMSで蹴散らしてやるぜっ!」

MSを持っていることを自慢するロウ。
まさか、MSを持っているとは思っていなかったポーシャは目の色を変えた。
彼女はMSを見せて!と頼む。
気分がいいロウはあっさり、「いいぜ!グ〜!」などと言って、ポーシャを格納庫へ連れて行く。
数分後。
MSを見た彼女は艦に戻っていた。
艦に戻って最初にした事はボスへの連絡だった。
最高の獲物を見つけた、と。
それから、さらに数分後。

ロウ:「うわっっ!!?」

突然、ホームが揺れた。
どうやら、ミサイルを撃ち込まれたらしい。
すぐに敵から通信が入った。

ボス:「ジャンク屋に要求する!!!受け入れなければ、再度攻撃を行う。お前達の所持している赤いMSを我々に渡すのだ!!!そうすれば命だけは助けてやるぞ!」

これにロウ達は典型的な海賊と判断。
しかし、疑問は残る。
何故、彼らが赤いMSの事を知っているかと言う事。

リーアム:「答えは一つしかありませんね」

彼がそういうと、全員がロウを見つめる。
じ〜〜〜〜〜っ。
彼に視線が降り注ぐ。
あまりにも見つめられたせいか、原因がようやく分かった。

ロウ:「あっ!!あの女かっっっっ!!最っっ初から怪しいとは思ってたんだよな〜〜〜〜〜!」

言い訳をしたロウ。
だが、3人はロウの言葉などまるで聞いておらず、作戦会議に入っていた。
リーアムが冷静に状況を分析する。
通常の場合、対艦戦ならMSが有利だ。
しかし、敵はこちらにMSが1機しかないことを知っている上に、この状況では敵に近づくのも難しい。
そう判断するリーアムにロウは反論する。

ロウ:「だったら、近づけば言いのさ。俺達はジャンク屋だろ?ジャンク屋ならジャンク屋らしく、突貫作業でやってやろうっていうのさ!!」

彼の目には自信が溢れていた。
結局は彼に賛同するプロフェサー達。
すぐにロウの言うとおりに準備をしていく。
やがて、彼らの反撃は始まった。
ジャンク屋らしい反撃が。



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