アークエンジェルを守るため、出撃したキラ。
敵と交戦するまで、まだ距離がある。
キラはパイロット待機室でのやり取りを思い出していた。
*
ムウ:「いいか、キラ。俺は前方の敵を撃つ。その間、お前は後方の敵から艦を守るんだ」
やる事はわかった。
しかし、その間敵からの攻撃を防がなければならない。
ヘリオポリスでの事を考えると、アスランが来るかもしれないのだ。
もし、彼が来てしまったら・・・。
そんな不安がよぎる。
ムウ:「お前の心配してることは分かる。だが、忘れるな。今、艦を守れるのは俺とお前だけだってことを」
*
キラ:「守れって言われたって・・・!」
レーダーが敵を感知する。
1機だ。
近づくにつれ、嫌な予感が頭をよぎる。
そして、その予感は的中した。
アスラン:「キラ・・・」
キラ:「あのMS・・・アスラン!?」
互いにコックピットで呟く。
それぞれにとって戦いたい相手ではないから。
「PHASE−7 フェイズシフトダウン Aパート」
キラの心情など知らないアークエンジェルでは対応に追われていた。
敵MSはイージスだけではない。
Xナンバーのデュエル、バスター、ブリッツが確認されたからだ。
まさか、奪われたGを全て投入するとは考えていなかったクルー達にも動揺が走る。
が、すぐにマリューは動揺を振り切り、CICへと指示を行った。
イザーク:「ディアッカとニコルは戦艦を!俺はアスランとMSをやる!」
彼の指示にニコルはアークエンジェルの方へとすぐ向かった。
一方でディアッカは不満を言い放つ。
でも、相手はイザーク。
自分とアスランは馬が合わない。
それはイザークとアスランもそうだが。
ディアッカは大人しく、イザークの指示に従い、アークエンジェルへと向かう。
アスラン:「キラ!止めろ!剣を引け!キラ!僕達は敵じゃない!そうだろ?何故、僕達が戦わなくちゃいけないんだ!?」
互いにビームサーベルを用意し、相手へと向かっていた。
しかし、イージスはストライクへ攻撃せずに通り過ぎる。
そこへアスランは通信を入れた。
キラ:「アスラン・・・」
アスラン:「同じコーディネーターのお前が、何故、僕達と戦わなくちゃならないんだ!?」
必死に叫ぶアスラン。
この説得で失敗したら次はない。
その時は自分がキラを撃たなければいけない。
親友であるキラを。
キラの方はアークエンジェルの事が気になっていた。
見る限り、2機のMSの迎撃に追われているようである。
アークエンジェルへと向かおうとするが、イージスが立ちはだかる。
何とか向かおうとしてもアスランが邪魔をする。
アスラン:「止めろ、キラ!コーディネーターのお前がどうして地球軍に居る!?何故、ナチュラルの味方をするんだ!?」
キラ:「僕は地球軍なんかじゃない!!けど、あの船には友達が乗ってるんだっ!!」
ストライクが身を引くが、イージスは追いかける。
特にどちらとも攻撃はしていない。
キラ:「君こそ・・・君こそなんでザフトになんか・・・・・・なんで、戦争をしたりするんだ!?戦争なんて嫌だって、君だって言ってたじゃないか!その君がどうしてヘリオポリスを・・・」
彼の言葉にアスランは覚悟を決める。
話したくないあの事を。
自分が軍に入った理由を。
アスラン:「キラ・・・ユニウスセブンを知っているか?」
突然の事だった。
何故、そんな話をするのか。
キラは戸惑っていた。
だが、キラの戸惑いも知らぬまま、アスランは“血のバレンタイン”について話し始める。
アスラン:「あそこは軍事施設など何もないただの農業プラントだった。穏やかで心安らぐ平和な土地だったんだ!なのに・・・なのに地球軍は・・・!24万3721名もの命が一瞬で失われた!たった一発の核ミサイルで!こんな事が許されていいはずがない!!!」
声を荒げるアスラン。
それでも、キラは何故アスランが戦っているか分からないらしい。
アスランは分かるように言い放った。
アスラン:「キラ・・・!ここまで言ってまだ分からないのか!?俺の母の職業がなんだったのか・・・忘れたのか!?」
キラ:「アスランのお母さんの職業・・・?えっと・・・・・・あっ!」
ついにキラは気づく事が出来た。
アスランの母親の職業。
それは農業を営んでいた事。
加えて、キャベツの品種改良について研究もしていた。
彼女の作ったキャベツに自分の母であるカリダが調理し、出来上がったロールキャベツはアスランの好物となるほど美味しかった。
アスラン:「あの時、俺の母もあそこに・・・ユニウスセブンに居たんだ!!!」
その言葉と同時にビームサーベルを振り下ろすイージス。
キラはシールドで防御する。
彼が戦っている理由は分かった。
しかし、ヘリオポリスを襲った事は納得できない。
キラ:「君がザフトに入った理由は分かった。でも・・・ヘリオポリスは血のバレンタインと関係がない!」
アスラン:「あそこはもう、中立じゃなかった!状況も分からぬナチュラルがこんなものを作るから・・・だから、俺達は・・・!」
キラ:「それでも・・・ヘリオポリスは中立だ!僕だって・・・なのに・・・!」
互いの思いを通信越しにぶつける二人。
そこへストライクにビームが襲い掛かる。
現れたのはデュエルだった。
イザーク:「何をモタモタやっている!?アスラン!?」
キラを説得する事にしか頭になかったアスランは驚く。
レーダーの音にも気づいていなかったらしい。
ビームの連射でキラを襲うイザーク。
それをシールドで防ぐストライク。
ただ、アスランはそれを見つめる事しか出来なかった。