クリスマスが終わった翌日の26日。
みんなが寝静まった頃。
俺は行動を開始した。
あのラクスサンタの謎を解き明かすために。
他の子供達を先導したのは俺なのだから、少しくらいは知る権利があるのではないだろうか。
そう考えた俺はリビングへと向かった。
「シンドウ、まだ起きてたの?」
「とある日のプレゼント(特別編)」
「うん。キラ兄ちゃん、昨日の事を教えてくれない?だって俺が居なかったら、昨日のあれは海岸で出来なかったわけだし・・・」
リビングにはまだキラ兄ちゃん達が居た。
俺は真っ先にたずねた。
好奇心というのはいいことなのか、悪いことなのか・・・。
こればっかりは自分でもそう考えてしまうものだ。
「分かりました。ですが、これから言う事はあなた心だけに閉まって置いてください」
俺の問いに答えてくれたのはラクス姉ちゃんだった。
頷いた俺はイスに座り、昨日のことを聞き始めた。
*
「え?ラクス、本気なの?」
僕はその話を聞いた時、びっくりした。
いつも彼女の考えには驚かされるけど、今回も驚いてしまったのだ。
今回のラクスの考えというのは、子供達を海岸へ集めたのち、空からサンタが来るように見せかけ、自分が別の場所から登場し、プレゼントを配った後、再び空へと戻るようにするという無茶苦茶な考えだった。
「はい、本気ですわ」
「気持ちは分かるけど、それはどうやってするのさ?」
とても一人じゃできはしない。
こればっかりはラクスも分かっていたのだろう。
次の瞬間、彼女はこう口にした。
「アスランとMSを使いますわ」
「はい!?」
あまりの予想外の答えに僕は裏声で返事をしてしまった。
わざわざ、クリスマスのためにMSを使うの?
さらにアスランまで。
しかも、カガリが居るのに・・・。
「さすがにクリスマスだけでMSを使うのは・・・大体、カガリにはなんて言うの?」
「カガリさんにはもうすでに了承をもらってますわ。それにMSの1機や2機くらい、大丈夫らしいですし」
ラクス、君って・・・。
僕は思ったことを伝えることができなかった。
ここまでしているということは、すでに決まったことであり、反論はないのだろうからだ。
要するに僕がたかがクリスマスと思っても、彼女にとってはされどクリスマスというわけなのである。
だが、カガリは何をしているのだろう。
クリスマスとはいえ、クリスマス程度でMSを動かすということを許可するなど、彼女は一体何を考えているのだろうか。
「うん、分かったけど・・・僕は何をすればいいの?」
「あなたにはホログラムのような物を作っていただきます」
彼女が言う当日のサプライズとはもう一度振り返ると、以下のようなことらしい。
まず、子供達を海岸へおびき出す。
次に夜空からトナカイ、ソリ、ソリの上に乗ったサンタの格好をしたラクスが現れるようなホログラムの物を写し、森へと入って行くように見せかける。
その後、森とは違うところからサンタの格好をした本当のラクスが搭乗し、プレゼントを配る。
最終的にラクスが森に消え、ホログラムの方のラクスが夜空へ去っていくということだ。
僕は話を聞いた時、あまりに無茶苦茶な計画だと思った。
たぶん、他の人が聞いてもそう思うのではないだろうか。
どうやら、MSはこのホログラムなどのために使われるらしい。
「それはつまり、アスランがMSを動かすんだよね?」
「もちろんですわ。あなたに乗せる訳はありません。ですが、もしもの場合もありますので、バルトフェルド隊長にも別機で乗っていただきます」
アスラン・・・。
僕は彼が可哀想に思えた。
ヤキンの戦いを一緒に潜り抜けたほどの優秀なパイロットなのに信用されていないのだから。
「分かったけど、そのホログラムはいつまでに作ればいいの?」
「そんなの決まってますわ。24日の夕方までですわ」
「ちょっと待った!時間がなさすぎ・・・」
「何か言いましたか、キラ♪」
卑怯だと思った。
でも、反論は許されそうにない。
僕は従うしかなかった。
*
「え?じゃあ、あれはリハーサルなしの本番だったの!?」
「うん。僕だけじゃ、もしもってことがありえるから、マリューさんとわざわざマードックさんていう人を呼んで、ああいうことが出来たんだ」
俺は話を聞いてて、ラクス姉ちゃんは凄い人だと改めて思った。
そこまでクリスマスで、できるのだろうか?
いや、普通の人にはできはしない。
ラクス姉ちゃんだからこそ、出来たのだろう。
「でさ、あれはどういう原理でやってたの?」
「たぶん、シンドウが聞いても理解できませんわ。それにもうこんな時間です。早く寝た方がいいのではないですか?」
俺は部屋から追い出された。
これではもう話は聞けないだろう。
俺は大人しく部屋へいくことにした。
時間も時間だし、話を聞くだけでも正直疲れたからだ。
だから、今日はもう寝よう。
そう思い、自分の部屋へと俺は急いで向かった。
END
後書き
これは特別編です。
ある程度のタネ明かし。
今回の話で、おそらく初めてシンドウ(当サイトオリジナルキャラ)の視点になったのではないでしょうか。
いつもならキラ、ラクス、アスラン、カガリのいずれかの視点が多いのですが。
さて、タネ明かしですが、全てをやろうとすると、私の文章力では来年になる可能性があったので、この辺りで辞めさせてもらいました。
それにしても、ラクスよ。
クリスマスでMSとアスランは動かしちゃ駄目だよ。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。