「助けてしまった彼女」



サキート:「こんなところを襲撃とは・・・。ここに何があるんだ?」

彼はカナダの地球軍基地に居る。
理由はギナに頼まれたからだ。
だが、サキート自身にはどうしてこんなことを頼まれるのか、分からなかった。
ギナやミナ、というよりサハク家であれば、ブルーコスモスとも仲がいい方である。
とはいえ、完全に仲がいいというわけではないようだ。
その関係もあるのだろう。
そう割り切って、サキートは行動した。

サキート:「邪魔だっ!」

地球軍兵士:「うああああ!!!!!」

出てきたMAメビウスをマシンガンで落としていく。
近づく、メビウスにはサーベルで切る。
いたって普通の戦法だが、地球軍ではなすすべがない。

サキート:「雑魚どもが!俺のジン相手に生き残れると思ったら、大間違いだ」

彼のジンは特殊改造したもの。
拠点の制圧など、たやすい。
それ以前に、MSが来たという時点で、地球軍の者は諦めるのが多かった。
MSとはそれほどの戦力を持っているというわけである。

サキート:「大事なデータを取るには・・・あの場所を破壊しなければいいか・・・」

素早く、任務を片付ける。
余計な事には関わりたくないサキートがいつもやることだ。
彼は、適当に攻撃をした後、MSから降りた。
もしも、MSを取られたとしても、ナチュラルには扱えない。
さらに軍事施設はほぼ壊滅状態であり、出てきたMAは全て撃墜した。
サキートはほぼ安全性を高めてから、ジンから降りたというわけである。

ルイ:『私も死ぬのかな?』

デンフ:「おい!さっさと歩け!」

連れられている彼女の名前はルイ・ナ・スティール。
メンデル出身のコーディネーターだ。
彼女は、自分の生まれを捕まってから知った。
どうやって、生きればいいの?
地球軍に捕まってから、そんなことばかりを考えていた。
いっその事、死にたいと思うほど彼女は追い詰められていたのである。

サキート:「・・・殺す!」

デンフ:「なんだよ、貴様は!この女を助けに来たのか?」

急にルイの目の前に現れたサキート。
自分を含めて殺すの?
そんな思いが頭から離れない。

デンフ:「この女はな、メンデル出身なんだぜ!こいつは実験体となるんだ!だから、お前なんぞに渡すものかァ!」

サキート:「メンデル出身か・・・だったら、なおさら見逃すわけには行かないな!」

ルイは目をつぶる。
やっと死ねるんだ、と思いながら。

デンフ:「う・・・馬鹿な!」

聞こえてきたのは、ルイを監視していた男の声。
そう、デンフだけが倒れている。
頭を撃たれて、即死だ。
どうして、自分だけが生きているの?という思いが頭を駆ける。

ルイ:「どうしてよ!どうして私を殺さないの?だって、私は・・・」

サキート:「人から産まれたんじゃない。機械から産まれた化け物だ・・・とでも、言う気か?」

彼、サキートの言ったことは当たっていた。
そういった後、サキートは呟くような小さい声で、図星か、と言い放つ。
先程からの話から察するに、ルイはこの人もメンデルに関係する人なのだろう。
そう、考えた。

サキート:「お前は俺と同じだ。自分のことを知り、絶望している。だが、俺はすぐにそれを乗り越えた。教えてくれた奴が俺に居場所を与えてくれたからだ」

奴は確かに父親を殺した。
しかし、あの頃の自分が欲しかったのは居場所だ。
本当の意味での。

ルイ:「じゃあ、聞くけど、私はどうしたらいいの?私にはあなたのような居場所は無いわ」

サキート:「ならば、俺の傍にいろ。お前の居場所は俺が作ってやる!」

自分自身、何を言っているのだろうかと思う。
頭ではなく、口が先に動いてしまった。
これでは、まるで告白だ。
初めて会ったばかりの女に。
名前も知らぬ女にだ。
ただ、放っておけない。
同情の気持ち。
いや、それ以上の感情がサキートの口を動かせたのだ。
そんなサキートの気持ちが、今の言葉を作り上げて言っているのである。
彼女は頷いた。
たとえ、嘘でも言ってくれる人が居るだけで、こんなにありがたいことはない。

地球軍兵士:「いたぞぉー!」

サキート:「ちっ!?頷いた以上は、協力してもらうぞ、来い!」

ルイはサキートの言うとおり、一緒に逃げた。
だが、基地から逃げては居ない
あくまで、その場から逃げただけだ。
ルイの手助けもあり、すぐにサキートの目的の場所へとたどりついた。
そして、データの取り出しも終了し、後はMSのところへ行くだけ。

サキート:「一応、これを持っていろ。俺はナイフで十分だ」

彼女に渡したのは唯一の銃。
あえて、ルイに渡した。
理由は死なせたくないからだ。
自分の身を守れるのは、最終的に自分しかいないのだから。
準備が整い、二人は走った。

サキート:「ふんっ!」

ルイ:「はぁ!」

切って、撃って、走って・・・。
そして、MSのところへと来れた。
サキートのジンは無事だった。
やはりナチュラルには操縦が出来ないようだ。
サキートも乗った後、ルイもMSに乗る。
OSを立ち上げ、すぐにその場所を離れた。
長居をする必要は無いのだ。
これが、サキートとルイの出会いである。



END