「出会いと再会」



マサカズ:「さてと・・・この部屋か」

彼は今、議長室の前にいる。
シーゲル・クラインに渡すものがあるからだ。
意を決するとマサカズは扉を開けた。

シーゲル:「会うのは初めてだね。君の噂は聞いているよ。君がマサカズ・ライモート君かね?」

入ってすぐに、声をかけた男はシーゲル。
現プラント最高評議会議長である。
相手はプラントの大統領とでも呼ぶ存在。
さすがに緊張する。

マサカズ:「いえ、とんでもないです。今回はこれをウズミ代表から託されました」

そう言って彼が渡したものはウズミ・ナラ・アスハ直筆の手紙。
彼がここへ来たのはこの手紙を渡すためだ。
すぐさま、手紙を読み終え、返事を伝えるようにシーゲルは促した。
これでマサカズの予定は終わったはずだった。

ラクス:「失礼します」

現れたのはピンクの長い髪をした女性だ。
まだ、少女のあどけなさがわずかに残っている。
どうやら、お茶を入れてきたようだ。

シーゲル:「彼女は私の娘のラクスだ。ラクス、こちらはオーブのウズミ代表の使いであるマサカズ・ライモート君だ」

ラクスとマサカズは互いに自己紹介の言葉を交わす。
同年齢とはいえ、やはり緊張はするものだ。
今度こそ、マサカズが帰ろうとした時、帰れない事態が起きた。

アスラン:「失礼します」

突如、現れたのは軍服を着た青年だ。
赤い軍服を着ている。
それはザフト軍でも優秀な者という証だ。
その顔にマサカズは見覚えがあった。
まさか・・・とは思いつつ様子を見守る。
彼は言葉を詰まらせている。
というか、現状を驚いているようだ。
その様子に「大丈夫ですか?アスラン」とラクスがたずねる。
名前にまさかの予感が当たってしまったようだ。

アスラン:「クライン議長、彼は・・・」

どうやら、マサカズを見て驚いているらしい。
無理は無いか、と内心思いつつ発言はしなかった。
ここで、下手に言葉を使うと大変な事になりかねないのだ。
この場に最高評議会議長が居るのだから。

シーゲル:「ああ、彼はマサカズ・ライモート君だ。彼は優秀でね、この年で左官クラスの階級を持っているのだよ」

明らかにおかしい。
自分は何も話していない。
特に左官クラスの階級を持っているなど発言した覚えもない。
となれば、手紙の中に書いてあったのだろう。
マサカズは状況を整理し、混乱を防いだ。

アスラン:「じゃあ、君は本当にマサカズなのか?」

この発言にラクスとシーゲルは驚いている。
そして、すぐにマサカズの方へと顔を向ける。
答えないわけにはいかないので、とりあえずマサカズは答えた。

マサカズ:「ああ。正直・・・アスランが軍に入っているとは思わなかったが」

今の発言から二人は知り合いなのだろう。
ラクスとシーゲルはそう感じ取る。
だが、二人の接点が分からない。
その疑問を解決するべく、シーゲルが二人にたずねる。
すると、マサカズとアスランは顔を見合わせ、過去の話をしようと目で合図を送り、過去のことを話し始めた。
5分くらい話しただろうか?
どうしても、懐かしい話であるため話が弾む。
ある程度、話し終えるとシーゲルが話をした。

シーゲル:「そうか・・・二人はコペルニクスに居た時から、友人同士であったのか・・・。ところでアスラン、私やラクスと居る時は無理に議長と言わなくてもいいと言ったはずだが」

話が何か逸れ始めている。
いつの間にかアスランに対しての説教みたいな話なっていった。
彼は「いえ、礼儀ですから・・・」と答えるが、見逃してくれないようだ。
これでは、帰れない。
どうやって、帰ろうかと考えていると急に話を振られた。

シーゲル:「君もだよ、マサカズ・ライモート君。私やアスラン、ラクスと居る時だけは敬語でなくても構わんよ」

なんで、急に話を振る!?
話を振られるとは思ってなかったので、言葉に詰まる。
第一、相手が議長なのに敬語を使うなというのが難しい。
次に議長相手にタメ口は不味すぎる。
ならば、丁寧語を使えばよいのだろう。
さすがに今の状況で断る事は出来ない。
最悪の場合、これからの貿易などにも影響が出てくる。

マサカズ:「分かりました。えっと・・・」

どうしても、言葉に詰まってくる。
その様子にシーゲルは助け舟を出した。

シーゲル:「シーゲルさんでも構わんよ」

さん付けでいいのか?
と思わず、顔に出してしまう。
自分の経験のなさが出してしまった事だ。
顔に出してからでは、もう遅すぎる。
その時には答えるという選択肢しか残されていなかった。

マサカズ:「分かりました・・・・・・シーゲル・・・さん」

シーゲル:「それでよし。さてと・・・」

彼はアスランの方へと顔を向けた。
最後の問題は彼のようだ。
観念したのか、彼は言葉を発した。

アスラン:「はい、お養父さん・・・」

この発言には驚きを隠せなかった。
どうしてお父さんという言葉が出てくるのだろうか?
マサカズの様子を感じ取ったのか、ラクスが答える。

ラクス:「わたくしとアスランはいずれ結婚する仲なのですわ」

この発言にさらに混乱してしまう。
もう少し、まともな言葉が見つからなかったのか?
見かねたシーゲルが、フォローする。

シーゲル:「ラクスとアスランは婚約者であってな・・・む!?そろそろ時間か。すまん、3人とも、この部屋を出て行ってくれないか?これからこの部屋で次の仕事が入っているんでな。そうだ、マサカズ、良ければザフト軍の方を見てくれないか?君の目はすぐれていると評判だからな」

その後、3人は無理矢理部屋を追い出された。
頼まれたものがあるため、結局は帰れない。
まあ、時間に余裕はあるのだが。
あの様子だと、手紙に時間の余裕が書いてあると判断したマサカズはザフト軍の方へと見に行くことにした。
それまでは、ラクスとアスランとでも話をしようと思いながら、歩いていくのだった。



END