「対の遺伝子を持つ二人の出会い」
プラントでは結婚するには条件があった。
それは対になる遺伝子の持ち主同士であるということである。
これは子供を産みやすくするという目的の元に決められた。
ただでさえでも、出生率が低下しているコーディネーター。
そのことを考えるとなおさらであった。
だが対の遺伝子の持ち主を探すのは至難の業。
たとえ、今までの者が行ってきた事とはいえ、特定するのは難しい。
しかし偶然は起きるもの。
その偶然が起きた彼の名はアスラン・ザラであった。
パトリック:「アスラン、紳士にな」
急に連れ出されたアスランにとって、父の行動が分からなかった。
いつものようにマイクロロボを作っていたら、父であるパトリックから正装を着るようにと言われた。
着替えた後に、あっという間に車へ乗せられた。
どこへ行くのかも知らないまま。
アスラン:「父上!せめて目的地くらいは教えてください!」
14歳と言えば、反抗期真っ盛りの時期。
アスランも例外ではなく、怒り心頭であった。
相手が父親だから、本気になれないでいたが。
パトリック:「クライン邸だ」
アスランは一気に怒りの気持ちがなくなった。
クラインと言えば、父親とよく話し合っているシーゲル・クラインであり、クライン邸ということは、その人の家に行くということである。
だが、疑問は残る。
何故、クライン邸に行くのかアスランにとって理解できなかった。
パトリックはアスランの気持ちを理解したのか、答えを出した。
パトリック:「シーゲルの娘であるラクス嬢とお見合いだ」
お見合いと言う言葉を聞いたアスランは顔を真っ赤にする。
自分はまだ14歳。
確かにコーディネーターの成人扱い(軍に入れる年齢)は15歳だが、早すぎる。
ドッキリにも程があると考えたアスランは抵抗する。
アスラン:「父上!冗談にも程があります!第一プラントの結婚制度は・・・」
とにかく、お見合いに行きたくない。
その気持ちを前面に押し出すアスラン。
これなら、行けないだろうと思ったが、甘かった。
パトリック:「ラクス嬢はお前の対の遺伝子を持っている。それにこの見合いはシーゲルとずっと前から決めていた事だ」
親が勝手に決めた事実にアスランは頭を抱えた。
この逃げられない状況から逃げる方法を必死に考えるアスラン。
彼は閃いた。
先程の言葉から、相手のラクス嬢も突然知ったはず、と考えたアスランはすぐさま抵抗する。
アスラン:「ラクス嬢は今日の事を知らないはずです!でしたら、私を断るのでは?」
勝った!と思ったアスラン。
しかし、あっけなく敗北に突き落とされるのであった。
パトリック:「シーゲルから聞く限りは今日の日を楽しみにしているそうだ」
アスランは愕然した。
と言う事は知らなかったのは自分だけと言う事になる。
これでは、もう逃げられないと覚悟を決めた。
何でも来い!とやけくそとも言える状態になっていたアスランだが、ラクス嬢に会って驚愕した。
ラクス:「こんばんは、ラクス・クラインです」
アスラン:「ここ・・・こんばんは、アスラン・ザラです」
ラクスはゆったりとした口調で答えた。
ピンクの髪で優しそうな表情をしていた。
とはいえ、アスランは緊張している。
相手はシーゲル・クラインの娘なのだから、無理もない。
ラクス:「そこまで、緊張しなくてよろしいですわ」
さすがに緊張しているのが理解できたのだろう。
ラクスは優しく声をかける。
さらに彼女は椅子に腰をかけるように言った。
アスランは言われるままに椅子に腰をかける。
やがて、ラクスはお茶を持ってきた。
ラクス:「紅茶はお嫌いですか?」
アスラン:「いえ、大丈夫です」
別に紅茶が嫌いでなかったアスランはそう答えた。
ラクスもテーブルへ座り、二人は色々と話し始めた。
内容は今まで、どんな生活をしていたのか等だ。
緊張も解け始め、和んできたアスランに再び衝撃が襲う。
ラクス:「アスラン様とわたくしが結婚して子供が生まれたら、どんな髪の色になるのでしょうか?やはり紫でしょうか?」
紅茶を飲んでいたアスランは思わぬ質問に紅茶を吹き出す。
先程までの会話から急に子供の髪の色の話になったのだから、吹き出すのも仕方ないのだが。
ラクスは紅茶を吹いたアスランを気遣い、大丈夫ですか?と声をかける。
アスランは大丈夫ですと答えた。
落ち着いたアスランは質問した理由を彼女に聞いた。
ラクス:「わたくし達は結婚をもうすでに決められたと、お父様からお聞きしたので」
は!?
内心アスランはそう思ったが、声には出せないでいた。
今すぐにでも父親に言いたかったが、現状況ではどうしようもないため、諦める。
諦めたかわりに、父親の言葉を思い出す。
対の遺伝子。
この条件を満たしたら結婚できる運命の相手。
そう、アスランは今になって対の遺伝子についての意味に気づく。
しかし気づいたときには、もうラクスと出会ってしまっているのだ。
どうしようも出来ない現実に加え、ラクスはもうその気でいる。
アスラン:「そ・・そうですよね!あ、もう時間です。ラクス様それでは」
彼の取った行動は、逃げる事だった。
とにかく、逃げたかったのだ。
ラクス:「分かりました。それでは、またお会いしましょう」
彼の言葉の真意を知るはずのないラクスはまた会おうと返した。
すぐさまアスランは、父のパトリックの元へ行き、帰るように言った。
そして帰りの車では・・・
アスラン:「父上!どういうことですか!」
彼の叫びは車の中で響く。
アスランの叫びにパトリックは答える。
パトリック:「気づいているだろう?お前とラクス嬢は結婚し、その子供がプラントを支える事を!この結婚はもうすでに決まったことなのだ!」
結婚は決まった事。
そう言われたものの納得できるはずはないアスラン。
しかし、ラクスと結婚する事は不思議と嫌ではなかった。
アスランは思う。
ラクスを婚約者として見れるようにしようと。
そんなことを思っていたら、いつの間にか家についていたのだった。
END