「プロローグ7 メンデル襲撃後の地球」




メンデル襲撃後地球各地では互いにコーディネーター派とブルーコスモス派の部隊で戦闘をしていた。
その中にメンデル襲撃事件を逃れる事のできたオッディスの姿があった。
彼の乗り込んだシャトルは地球へたどり着いた。
しかし、滑走路にたどり着く前にシャトルに異常が発生。
燃料がなかったのである。
その後シャトルは比較的海岸に近い海に着陸したのだった。
着陸した場所は北アメリカ海岸部。
シャトルは何とか爆発しなかったため、オッディスは難を逃れる事が出来たのである。 外へ出て青く広がる海と空を見ていたオッディス。
何かを決意すると歩き出す。
自分は失敗作でないことを証明してみせると。
1時間ほど歩いただろうか?
彼はある集落へたどり着く。
その集落ではテントが数多く張られていた。
誰か居ないかと集落を散策するオッディス。
歩いていると何かがオッディスに飛んできた。
彼は持ち前の運動能力で回避する。

ルースゴン:「お前のような子供がこの集落に何のようだ?」

オッディスは事情を説明する。
自分はメンデルから逃れてきた事。
シャトルの事。
すると相手も一応、教えてくれた。
彼の名前はルースゴン・フト。
反ブルーコスモス勢力の一つを束ねるリーダー。
年齢は自分でも知らないらしく、とりあえずコズミック・イラ55年で17歳ということにしているのだと言う。
話を聞いたオッディスはゲリラ部隊に入りたいと志願する。
が、オッディスはどう見ても8歳の子供。
いくらコーディネーターだからと言っても10歳にも満たない子供では遊びで入りたい言っていると思うのが普通だ。

ルースゴン:「オッディス、お前本当に入りたいのか?これは遊びじゃないんだぞ?」

オッディスは分かっていると言わんばかりに頷く。
しかし、まだ完全に信用できなかったルースゴンは彼に試練を与える事を決める。
試練の内容とは投げてくる石を全て避けると言う事。
さすがに子供相手に銃や弓を使うわけにはいかないからである。
1回でも石に当たると即失格し、ゲリラ部隊に入る事は叶わない。
石を投げる人数は10人。
10人が左右に分かれて5人ずつ並び、石を投げる。
これはオッディスを円のように囲んで、石を投げるとさすがにかわしきれないだろうと考えたルースゴンの案である。
勿論、囲まないのは子供だからと言う甘さから。
1人に与えられし、石は10個。
合計100個の石が飛んでくるのである。

ルースゴン:「準備はいいな?よし!始め!」

ルースゴンの言葉と同時に石が一斉に投げられる。
オッディスというターゲット目掛けて。
彼はどんどん石を避けていく。
一瞬でも隙を見つけるとオッディスは落ちていた石を拾い、飛んでくる石に向かって投げ、石を相殺していく。
投げるのに必死である10人はそのことに気づいていない。
唯一気がついたのはルースゴンのみである。
彼は運動神経が恐ろしく抜群なのだ。
とても8歳とは思えないほどの動きを見せていく。
しかし、ルースゴンは気づかなかった。
彼の背負ったハンデがあることを。

ルースゴン:「オッディス、君は合格だ。でも、本当にいいのか?普通の生活をすることも出来るんだぞ?」

オッディス:「俺には親が居ない。だとしても、普通の生活をしようとも思わないし、親が居たところで大して思わない。俺はこの道を選ぶ。俺を失敗作と呼んだ奴らに見返すために!」

その夜、オッディスはルースゴンを始めとする多くの者達から歓迎された。
料理も豪華な物ばかりであった。
少数の料理を除いて。
しかし、オッディスは何も気にせず食べていく。
パニという料理や激辛でカレーであることも気づかずに。
彼はなんと笑いながら食べているのだ。
この行動は激辛カレーを笑いながら食べるとは変わり者か?と変なイメージをゲリラ部隊の幹部に植えつけてしまうのだった。
彼はメンデルで生まれたコーディネーターであるが、失敗作と言われていた。
目の色が予定と違う事、味覚と神経系に異常が見られたことである。
味覚障害と言う事もあり、激辛のカレーであっても、苦しい表情はしないのである。
そのことを知るはずの無いゲリラ部隊の面々は驚かされていた。
こうして、宴の夜は更けていくのであった。



オッディスが部隊に入隊し、数ヶ月が過ぎ去っていた。
今、オッディスは自分を訓練するために的に向かって銃の引き金を引いていた。
当の本人は無心で引いている。
あれから本格的訓練を受けた彼は8歳にして一介の戦士と扱われ、幹部となっていた。
一通り銃弾を撃ちつくすと、息を吐いて銃を置く。
彼はこの現状にとても満足していた。
ここでは自分の力を最大限に引き出せる事ができ、自分の思うとおりに物事が進んでいくからだ。
作戦で成功し、成果を挙げれば仲間から褒められ、尊敬される。
メンデルでは味わう事のできない快感なのだ。
彼は自分に酔っていた。
ここまで活躍できるのならば、自分は失敗作であるはずがない。
彼はそう信じて、疑わなかった。
事実、成果を挙げているのだから。

同じ集落の別室にはメンデルで生まれたホドスの姿もそこにはあった。
コンピューターが煩雑に置かれた部屋で彼は彼なりの戦いに望んでいた。
モニターと睨めっこしながら。
彼の背負ったハンデはオッディス以上に厄介なものだった。
左半身が満足に動かせる事が出来ないのだ。
オッディスはまだ、体を満足に動かせる事が出来る。
そのことにホドスは嫉妬していた。
自分をこんな体にしてしまった存在であるキラはもう居ないのだから。
彼はある人物に助けられ、シャトルに乗る事が出来た。
助けられなければ、自分は間違いなくあの場で死んでいたはずなのだから。
その後オッディスより何日か後に集落にたどり着き、その知性の高さを買われたのである。
さらに難易度の高い、コンピュータープログラムやネットワークに関する教育を受けた。
支援プログラムの開発やハッキングを行い、攻撃する部隊や街の状況などを見るのが主な仕事だ。
コンピューター関係を教育するように指示したのはルースゴンである。
ちなみにオッディスとは部屋が同じではなかったため、互いに存在を知らなかった。
この集落に来るまでは。

ホドス:『なんで、俺と同じメンデル出身であるオッディスと扱いが違うんだ?』

だが、彼はオッディスと自分の扱いに苛立っていた。
比べると、扱いがあまりに異なりすぎるのである。
左半身に障害のあるホドスは戦闘に参加する事が出来ないのだ。
しかも、組織の力関係は、戦闘で成果を挙げた戦闘能力の高い者が強かったのである。
そして、戦闘に参加できないホドスは立場も発言力も弱く、命じられるまま仕事を行っていた。
ホドスにとって、このことは屈辱以外の何にでもなかった。
彼は周囲を見返すために、あるプログラムの開発を隙を見ては作っていた。
それは自分の手足の代わりとなって動く装置である。
1歩間違えれば、アンドロイドのような人造人間が生まれてしまいそうであった。
彼はそれだけの知性をもっていたのだから。
まさか、この行動が後のAPSシステムに繋がる事など本人でさえも知るはずがなかった。



殆どのシャトルは港に行くのが普通であったはずだった。
しかし、一つのシャトルは着いてはならない所にたどり着いた。
ユーレシア連邦に着いてしまったのである。
この地域では主に戦闘用コーディネーターの開発を行っていた。
メンデルから来たシャトル、救難信号という条件が揃い、こちらへ着くように言えば、後は簡単。
メンデルで生き残った子供のみ捕らえ、他の者は殺せば済むのだから。
ユーレシア連邦の上の者が求めていたものは子供であった。
10歳未満の子供達を。
その年齢以下であれば、マインドコントロールを行うと非常に強力らしいのだ。

ゼルヴィ:「ヒィッッヒ!捕獲した奴らをジパングスクールへ連行しろ!」

この奇妙な笑い方を発するのはセルヴィ・ドールマン。
いわゆる科学者の男。
自称マインドコントロールの専門医。
とはいえ、無免許であるが。
また、知能が高いナチュラルであり、有名大学出身。
ジパングスクールとは彼らが呼んでいるスクールの一つである。
スクールの意味を普通に翻訳すれば学校となるが、彼らの言うスクールは別の学校の意味を指す。
それはマインドコントロールを行われる子供を中心に集め、戦闘用の人間を作り出していく学校。
簡単に言えば強化人間を作る学校である。
ジパングとは日本の別名。
かつて日本はジパングと言われていたことから、今でも一部の者が使う言葉のようだ。
世界的にはジャパンや日本で知られているが、彼らはジパングと呼ぶ。
日本は東アジア共和国に加盟しており、反コーディネーターが多い国の一つである。
故にスクールとしての機能も働く場所であるため、絶好の場所となっている。

ゼルヴィ:「兄さん、そろそろ時間だよ」

セルヴィ:「ああ、分かった。今からそっちへ向かう」

二人の兄弟は動き出す。
コーディネーターを滅ぼし、ナチュラルのみの世界を作り出すために。
彼らは来る引き日のために準備をしていくのだった。
最も、彼らが本格的に動きだすのは今から数十年も先の話だが。



END




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