「プロローグ4 目覚めた超人VSテロリスト」




爆音が鳴り響く中、セイは部屋から出られないでいた。
鍵は研究員が持っているのだから。
爆発の影響の火事により、煙が部屋へ入り込み、息苦しくなりながらもセイは助けを呼ぶ。
が、誰も助けに来るはずもない。
ドアを叩く中、再び爆音が鳴り響く。
その衝撃でセイの部屋の壁が崩壊し、廊下へ繋がる道が出来た。
セイはその通路を見た瞬間走り出す。
ただ、生き残る事を夢見て。
セイは爆音の中走った。
その最中一人の子供の声が聞こえた。

???:「その道を左に行け!」

無我夢中で走っていたセイはその言葉を聞きいれ、シャトルのある場所へ向かった。
最も、セイ自身はその先にシャトルがあるなど知るはずもなかったのだが。
セイは気づくとシャトルの置いてある場所に居た。
どこをどう走って、ここへ来たかは覚えていなかった。
声をかけられたことも、その声に従ったこともセイは全く覚えていなかった。
あの声をかけた人物がキワーであるということも、知るはずもない。
セイにとってここへどうやって来たか覚えていない事はどうでもよかった。
とにかく生きることが出来れば良いのだから。
セイはシャトルに乗り込んだ。
誰もが生き残る事に必死なのだからセイが居た事など気づくはずもなかった。
やがて、セイの乗ったシャトルはプラントに向けて出発した。
セイは部屋の片隅にいたが、精神は不安定ともいえる状態であった。



ガルグはテロリストと戦いながら、同胞を助けていた。
本人はテロリストを殺す事に専念しているため、同胞を助ける事は二の次にしていた。

ガルグ:「うおおおおおおぉぉ!!!」

メンデルという戦場で銃撃戦となってゆく。
その戦場のある場所では恐ろしいモノが目覚めようとしていた。

テロリスト1:「これは・・・・」

テロリストの一人はあるカプセルを見て、そう呟いた。
そのカプセルの中には一人の人間が裸で液体に居たうえで浮いているとも言うのだろうか?
さらに体にはケーブルなどが付いていた。

テロリスト2:「これはどう説明すればいいんだろうな?」

そのカプセルを観察しようと考えていると一人の子供がその部屋に乗り込んできた。

ガルグ:「てめぇら!殺す!」

その部屋に来たのはガルグであった。
動揺するテロリスト。
その隙を見てチャンスだと思ったガルグは銃を放とうとテロリストは銃を準備しようとしたとき、カプセルに異変が起きた。
カプセルに少し、ひびがはいったのだ。
3人は自分が戦闘中だということを忘れカプセルの方へ目を向けた。
するとカプセルの中に居た人間は瞳が開き、カプセルが完全に割れた。

???:「ここは・・・・・・・・・・・・・そうか・・・・・俺は・・・・・」

それだけ言うと、その男はテロリストの方へ歩き出した。
テロリストの二人は震えながら、来るな!来るな!と叫ぶ。
それでも近づく謎の男。
我慢できなくなったテロリストはついに相手の心臓に銃を放った。
しかし、この後の光景にテロリストとガルグは驚愕した。
謎の男の心臓の本来ある場所は打ち抜かれていて、血も出ていた。
だが、その男は生きている。
痛みが分からないかのように。

???:「無駄だ・・・・・・お前ら・・・消えろ!」

謎の男がそう言葉放った瞬間二人のテロリストは死んでいた。
ガルグには何が起きたかしばらく分からず、気づいたときにはその場に誰も居なかった。
ただ、テロリストの死体が転がっていただけ。
しかし、何故かテロリストの一人の遺体の服が無くなっていた。
急ぐガルグはこの部屋を後にする。
さっきのような奴とは戦いたくないが、自分が生きるには戦うしかない。
これはもう戦争なのだから。
ガルグは疲れているにもかかわらず駆けた。
メンデルの研究所をひたすら走り回る。
その際一人の子供を見る。
子供は泣きながら走っていた。
ガルグは何か放って置けない気がしたため、その子供に話しかけた。
話を聞くと彼の名前はカイトだと自己紹介した。
なんでも最初は部屋のみんなと一緒に走ったが、最終的に置いていかれたのだと言う。
追いつこうと走っている中、数多くの焼けた死体や足のせいで吐き気が起きたため、先程までうずくまっていたらしい。
ガルグは話を聞くと彼に出口を教え、急いで向かうように伝えた。
同時にこれからは人の力に甘えずに生きろと。
カイトは再び走りだして、シャトルの置いてある場所へ向かっていった。
見送ったガルグは再び走りだす。
ガルグにとって自分達の居場所を失わせ、数多くの同胞を殺したテロリストを許せるはずはないのだから。


場所も変わって、テロリストのリーダーは相変わらずユーレンの遺体に攻撃していた。

ホルク:「死ね死ね!お前は消えろ!消えろ!失せろ!」

彼の名はホルク。
人工子宮から生まれたコーディネーターの一人。
勿論、失敗作だ。
理由は精神面の遺伝子が異常なまでに可笑しかったからである。
そのため、生まれてすぐに地球軍に渡された。
その後地球軍に戦闘用コーディネーターとして育てられ、兵器と化したかのように思えた。 地球軍からすれば。
ここで彼の失敗作の原因が役に立ち、人格を維持できた。
地球軍のマインドコントロールの内容はコーディネーターを抹殺する事だった。
しかし、ホルクにとって、自分をここに引き渡したユーレンをいつか殺す。
そのことしか、ホルクには考えられなかった。
いくら洗脳されそうになっても、ユーレンを殺す事をずっと考えたおかげでホルクは救われたのだ。
とは言え、人を殺す事には変わりないのだが。

ユーレンの遺体が殆ど残らなくなった時にはホルクは疲れきっていた。
手袋には血がたっぷりと付いていた。
後ろに気配を感じ、ホルクは後ろを振り返る。
そこにはテロリストの格好をした者が居た。
すぐに味方ではないと察知したホルクは叫ぶ。

ホルク:「お前は誰だ!」

ホルクの言葉からしばらく経ってからその男は答えた。

ドルグラム:「俺の名は・・・ドルグラム・・・・このメンデルに封印されていたミスト兄弟の兄だ」

ホルクは背中に寒気を感じた。
ミスト兄弟と言う聞きなれない単語に加え、メンデルに封印されていたなどの言葉も入っているからだ。
何気ない場所であればふざけているのだろうと思える。
しかし、この現状でふざけていられるはずもなく、ドルグラムの言っていることが事実に思えたからでもある。

ホルク:「もう一つ質問に答えろ!ミスト兄弟とは何だ?」

強気に言葉を発したホルクだが、心の中では震えていた。
ミスト兄弟とは何か?と心の奥深くで考える。
その時間は沈黙が続く。
ホルクにとってその時間は恐怖が増した。
相手を見る限り人間の姿をしているが、何かが人間ではないように思えたからだ。

???:「それはね・・・私達が超えてはならない壁を越えてしまったコーディネーターであり・・・・超人となった私達はミスト兄弟と呼ばれたのよ」

少し妙な言葉を言いながら、開いていたドアからもう一人の人間が現れる。
さらにホルクにとって恐怖が増した。
テロリストの格好をしており、声から予測すると女性なのだ。
顔などを見る限り二人はどこかが似ていた。

ドルグラム:「ほう・・・お前も目覚めたか・・・・・・ヴィレンツァール」

ヴィレンツァール:「テロリスト共のおかげよ」

この会話の間にホルクは逃げようと考えていた。
もう、自分の目的であるユーレンはこの手で殺した。
仲間の通信によればユーレンの妻であるヴィアも殺したと聞いている。
ならば、これ以上ここに居る必要はない。
後は帰ってブルーコスモスに報告するだけ。
しかし、ドルグラムとヴィレツァールには隙が見つからない。

ドルグラム:「そこのテロリストに聞きたいことがある・・・・お前達は戦闘用コーディネーターだな?」

ホルク:「何故それを!」

ヴィレツァール:「戦闘能力を見ていたら分かるわ・・・・中々強いけど私達には及ばないわね」

確かにメンデルへのテロは能力の高いコーディネーターで選出されている。
ブルーコスモスの作り上げた戦闘用コーディネーターの中では最強と思われる者ばかり。
そして、リーダーに選ばれたのがホルクと言う訳である。

ヴィレツァール:『誰かが10分前後にここへ来るわ・・・』

ドルグラム:「了解した・・・・・・そこのテロリストよ失せよ!」

そうドルグラムが言葉を放った瞬間ホルクは目に痛みを感じ、目を開けられなくなっていた。
まるで手で目潰しをされたように。
あまりの痛さに叫び声をあげるホルク。

ヴィレツァール:「大丈夫よ・・・10分で目は開けられるから・・その間にテロリストと戦う坊やが来なければいいけどね」

それだけ言うと二人の気配は消えていた。
ヴィレツァールの言った通り、ホルクは誰も来ない事を祈っていた。
やがて、9分を過ぎた頃、ヴィレツァールの言った通り、テロリストと戦う子供が現れたのだった。

ガルグ:「お前がテロリストのリーダーだな!お前のせいで・・・仲間達は・・・・お前は・・お前は・・許さない!」

ホルクは逃げようとしたが、目はまだ治らない。
これではまともに立てないのだから。
ガルグが言葉を発して数秒後、ホルクは撃たれた。
ためらわなかったガルグの手によって。

数日後、テレビでこのメンデル襲撃事件は報道された。
脱出した研究員を除いて、テロリストも含め、全員死亡したと。
そう、表的には・・・・・



END




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