「プロローグ20 標的はヘリオポリスのMS」
それは情報が流れる数日前のこと。
ウズミの娘であるカガリはモルゲンレーテを訪れていた。
カガリ:「こんなモノを秘密で作っているなんて!!」
彼女自身驚いていた。
確かにオーブでMSを開発されていたことは、彼女でも知っていることだ。
しかし、ここまで完成しているとは思っていなかった。
何故、ここまで完成しているのか、と考えた時にある噂を思い出す。
カガリ:「ヘリオポリスでは連合のMSを作っているという噂は本当か!?
時折、この噂を彼女は聞いたことがあった。
アサギ、ジュリ、マユラの3人は気迫に押され、思わず頷く。
カガリ:「こうなったら自分の目で確かめてやる!!」
彼女は単身でヘリオポリスへと向かうのであった。
*
男はそこで建造されている恐るべき情報を手に入れた。
ケナフ:「今、話したとおりだ」
この話をしている者はケナフ・ルーキニ。
いわゆる情報屋の男。
情報を売って、生活をしている。
クルーゼ:「分かった。約束どおり、報酬は払おう」
情報を売ってもらったこの男の名はラウ・ル・クルーゼ。
過去の経歴不詳であり、仮面を付けている。
本当はナチュラルなのだが、その事実を知るものは数人しか居ない。
彼が聞いた情報はヘリオポリスで地球軍の新型MSが開発されているというもの。
証拠の写真はケナフから貰った。
ザフトにとってそれは、許されないこと。
もはや、中立ではない。
話を聞いたクルーゼは、評議会の決定を待たずに単独で襲うこと決めた。
これは戦争にも大きく関わることなのだから。
ケナフと別れた後、戦艦ヴェサリウスはヘリオポリスへと向かった。
ケナフはクルーゼが去った後、オーブへと情報を知らせた。
情報屋というのは報酬ために情報を売る。
知らせたのは、サハク家陣営である。
それはケナフ自身、アスハ家陣営を嫌っていたからだ。
第一、情報屋は色々なことを知らなければ、話にならない。
オーブの内部事情を彼はある程度理解していた。
アスハに話すとどうなるかを。
しかし、彼は知らなかった。
実はアスハ家陣営の一部はMS建造のことを知っていたことを。
*
エリカ:「え?ばれた!?」
突然のことでモルゲンレーテに居た3人は慌てふためく。
恐れていた事態が起きてしまったのだ。
ザフトにMSを作っていたことを。
だが、これはまだいい。
アストレイの存在がばれたら、それこそオーブは大変なことになる。
地球軍に知られれば、ザフト軍と合わせて両軍から敵対されることになるのだ。
エリカ:「それで、ロンド様は?」
話を聞くと、二人は宇宙に上がっていたらしく、準備に取り掛かったらしい。
サハク家陣営の多くはアストレイを処分することに決めた。
しかし、二人とサキートはその意見に反発。
アストレイを奪取することを勝手に決めて、ヘリオポリスへ向かったのである。
一番最初にコロニーへと向かったのはサキートらしい。
エリカ:「そう・・・・」
話を知らせたサハク家陣営の者はすぐさま去った。
彼女は自分の部屋へと入っていく。
レミフォン達は宇宙に居るマサカズ達に話を知らせた。
マサカズ:「な!?今、丁度フツノミタマはL3に近いところに居るから、俺がヘリオポリスへ行く。知らせてくれて、ありがとう」
そう言って通信を終える。
すぐさま、フツノミタマの艦長であるデオムにヘリオポリスへと急ぐよう指示する。
特殊部隊と言えど、リーダーはマサカズ。
その権限は艦長よりずっと上。
会話は階級を無視して行われるが、こういうときばかりは階級がものを言うのだ。
彼はメビウスをスピード重視にセッティングして、コックピットへ待機する。
アスハ家陣営が勝手にMSを作っていたことが知れたら、それこそ大変なことになる。
ウズミの失脚どころではない。
ある程度、ヘリオポリスへと近づくとメビウスは発進した。
フルブーストで。
そのおかげでザフトが襲撃する前にコロニーへとたどり着いた。
だが、彼は気づかなかった。
近辺にサキートのメビウスがあったことを。
*
サハク家陣営はヘリオポリスでアストレイを知る者に消去命令を行った。
しかし、本当にやっているのか不安が残こる。
そう考えた、ある老人は傭兵へ依頼した。
ヘリオポリスでは地球連合のMSが開発されていた。
だが、もっと恐ろしいものがそのコロニーでは隠されている。
それは地球連合の技術を無断転用した自国を守るためのMSを極秘開発していた。
コードネーム・ASTRAY。
道を外れたという意味を持つMS。
老人が言うには、オーブの人間は信用できないらしい。
わざわざ、自分達で作ったMSを破壊する者は中々居ない。
勝手に持ち出そうとして、ザフト軍に発見されれば、最悪のシナリオは完成するのだ。
傭兵に依頼した内容は今、語られる。
マックル:「ASTRAY本体、あるいはデータが残っていた場合、完全消去をお願いしたいのです。この目撃者も」
それは真の意味での完全消去。
傭兵は静かに口を開く。
劾:「質問がある。ザフト軍に情報が流れたことをどうして知った?」
話を聞いている傭兵の名は叢雲劾。
サーペントテールのリーダーである。
実は地球へ降りる前にザフトの補給基地を落とす任務を受けていた。
しかも、その戦いで自分のジンは大破。
原因を作ったのはクルーゼ隊所属のミゲル・アイマン。
だが、そんなことは劾にとって今は関係なかった。
マックル:「名前は出せませんが、以前から付き合いのあった情報屋から聞いたもので・・・・」
老人は静かに答えた。
劾は話を聞いて、その情報屋の考えそうなことを口にする。
劾:「おそらくその情報屋はザフト軍に情報を売った上で、あんたに情報を売ったのさ」
老人は慌てふためく。
しかし、老人がどう思おうと利用されたことは事実だった。
ケナフ・ルーキニとはそういう男なのである。
老人はこれ以上、傭兵なんぞに不愉快な事実を見つけられないように交渉のまとめに入る。
マックル:「仕事を引き受けていただけるのでしょうか?このことは我が国の人間全ての命が掛かっているといっても過言ではないのです」
我が国。
その中にヘリオポリスの人間は入っていない。
劾は自分が皮肉屋になっていることに気づいた。
どうも、この仕事は乗り気でないらしい。
断ることも出来る。
だが、ここで断れば、ヘリオポリスの人間を見捨てることになる。
その考えが、頭から離れなかった。
劾:「いいだろう。引き受けさせてもらおう」
マックル:「ありがとうございます。あなたは我が国にとって救世主です」
皮肉を言われたかのように劾は感じた。
しかし、やせ細った老人の目は大いに輝いていた。
本当に自分を救世主と見るように。
劾はオーブから離れる際に、仲間に声をかけた。
一人では無理のある仕事であるからだ。
今回、依頼者からメビウスを借りた。
一応自分のメビウスもあるのだが。
話を聞いた仲間はすぐさま行動を起こし、小型艦でヘリオポリスへと向かった。
*
エリカは知り合いのジャンク屋であるプロフェッサーにこっそり伝えていた。
部屋に入ったのはそのため。
彼女達ならこっそり、何とかしてくれるだろうと考えたからである。
自分、いや、建造者として壊されたくないのだ。
そのことを聞いたプロフェッサーは動き出す。
プロフェッサー:「みんな仕事よ。進路はヘリオポリス、“お宝”探しよ」
ロウ:「おっしゃ!」
こうして、MSの情報は流れた。
勿論、上記に上げられた者達だけが知ったわけではない。
他にも、知った者は居る。
全ては“ヘリオポリス”で始まろうとしていた。
ロウ:『わくわくするぜぇ!』
劾:『仕事がなければいいが・・・』
マサカズ:『確か、あいつらから貰った地図では・・・』
サキート:『あいつは・・・ここに居ると言うことは・・・』
アスラン:『キラ・・・どこへ居るんだ?お前は』
キラ:『アスラン・・・』
中立のコロニーあるヘリオポリス。
コズミック・イラ70、1月25日。
今後を揺るがす、事件は始まろうとしていた。
プロローグ編 完結
NEXT「偽りの平和 Aパート」