「プロローグ16 駆け抜ける独立部隊、その名は・・・」
コズミック・イラ70年2月25日。
L4宙域。
この宙域は主にメンデルがあることで知られている。
が、メンデルは68年のバイオハザードの発生により、無人と化している。
何故、発生したかは不明だが現在はメンデルへ入っても、人体に害はない。
無害なのは事件後X線放射線が施されているためである。
とはいえ、メンデルへ行く者は少ない。
この事件はそんなメンデル内部で起きた事件である。
クットール:「ここがメンデル・・・」
その男の名はクットールと言った。
彼がメンデルを訪れた理由。
それはこの場所を破壊するため。
彼はこの場所に恨みがあるからだ。
クットール:「こんな場所・・・・消してやる!」
メンデルの研究施設へ銃口を向けた、その時である。
謎のMSに照準をロックされ、弾が飛んできたのだ。
何とか、かわしたと思ったクットール。
だが、レーダーではMSの反応すらなかった。
どこから弾が飛んできたかと、辺りを見回す。
しかし、見当たらない。
ならば自分の目で探すしかない。
そう考えた彼は負傷したジンで周辺を捜索する。
やがて1機のMSを見つけ出す。
クットール:「あれか!」
発見したMSに対し、クットールはジンの基本装備である重斬刀を腕に持ち替えて攻撃に向かう。
近づいても、何故か相手は動かない。
もう50メートルの幅もなくなり、クットールは勝利を確信した。
しかし、相手のMSは素早く動き、ジンの後ろに回る。
そして光の刃がジンの右腕を切り落とす。
一瞬の事で何が起こったか、全く理解できなかったが、数秒後やっと状況を理解する。
自分のジンには両足、頭部、胴体しか残っていないのだ。
死を覚悟したクットールにどこからか弾が襲ってくる。
これで死ねると思ったクットールは目をつぶる。
爆発は起きた。
しかし、自分は生きている。
何故か、死ななかったのだ。
よく見ると、先程まで交戦していたMSが盾を出していた。
まるで自分を庇うかのように。
潔く死ぬ事が出来なかったクットールは通信回線を開く。
クットール:「何故、俺を庇った!」
キルザム:「私はもう誰も死なせたくないだけだ!」
この言葉はさらにクットールを怒らせた。
死なせたたくないなら、先程の攻撃は可笑しい。
矛盾している。
クットールは再び通信回線を開こうとするが、現状を理解する。
今、レーダーを見るだけでもかなりの数のMSが確認できた。
このままだと危険だ。
まだ、自分はこの世界から消えるわけにはいかない。
潔く死ねなかったなら、なおさらだ。
クットールは撤退することにした。
この状態ではまともに戦闘が行えないのだ。
クットールはメンデルを離れていった・・・
*
先程、クットールと戦闘したMSのパイロットであるキルザムは彼がメンデルから離れるのを待っていた。
彼が居る間は、奴らが攻撃しないという勘があったからだ。
先程の攻撃は警告だと。
謎の部隊リーダー:「あれを渡してくれれば、攻撃はしないぞ?」
キルザム:「渡すわけないだろう?お前達を殲滅するために、私と仲間はここへ来た!」
キルザムがそう言うと、待機していた仲間のMSが出現する。
レーダーには全く反応すらなかったため、謎の部隊の面々は驚く。
ゼルムス:「我が名はゼルムス・ザンボルト!貴様らを切り裂く剣なり!」
その男が言った瞬間、謎の部隊MS少なくとも、5機は爆発していた。
ゼルムスのMSの手には巨大な剣が握られていた。
謎の部隊リーダーは何が起きたかを状況確認しようとしたが、またMSが現れる。
タカスケ:「俺に撃ち貫けないものはない!エクユリン、援護を!」
エクユリン:「了解!いつものことだもんね〜」
そう言い放つと二人は同時に動いた。
タカスケの乗るMSは敵に近づき、右手で刺して爆破。
その右手にはいわゆるパイルバンカーが付いていた。
エクユリンのMSは特殊な銃を長距離射撃モードに変更タカスケの周辺の敵に対し、撃ちまくる。
1分も経たないうちに謎の部隊はリーダーを残して、全滅した。
謎の部隊リーダー:「馬鹿な!?これが元ザ・・・」
ついに、謎の部隊のリーダーも爆発の中に消えた。
爆炎の中から現れたのは、桃色のMS。
タカスケ達の仲間であるミリーラであった。
ミリーラ:「司令が呼んでいるから、戻りましょう」
戦闘は終了。
彼らは母艦へと戻った。
母艦ミスティルティンへと。
ゼルムス達の部隊であるROIT(run own intention teamの略)は世界的に知られてはいない。
知られるとコズミック・イラを揺るがす事態に発展するからである。
彼らの使っているMSはジンではなく、独自で開発されたオリジナルMSの「リート」。
リートはそれぞれの使いやすい武器を装備、性能へ改造されている。
いわば現時点で、最高レベルの性能を誇る機体なのである。
例えばキルザムの「リート」は特にスピードを重点に改造され、ゼルムスの「リート」は巨大な剣を背負う事、使う事を前提にパワー関係が強化されていたりする。
独立部隊だが、資源はスイスのある会社から出ている。
それはゼルムスの部隊を束ねる司令に関係があった。
ゼルムス:「ダーキン、今戻ったぞ」
ダーキン:「ご苦労だった。ゼルムス」
ゼルムスと会話したこの男が部隊をまとめるリーダー。
ダーキン・ジャックルである。
どちらかと言えば母艦に居る事は少なく、スイスや地球各地、プラントへ行っていることが多い。
彼は医者なのだ。
しかし、医者でありながら無免許医師という、まるで某漫画のような男である。
それでも、各地で呼ばれるのは確かな腕があるからだ。
彼は各地へ行く際に病院または患者からの資金を使って、MSの素材や資源等の調達を行っていたりと、部隊にとって大事な役目を持つ。
手術の助手にピレンモが居る。
彼女はMSの開発も行う事ができ、新型の武器の開発なども担当している。
でも、ダーキンについていくことが多く、新型の開発以外は各自で行わせていたりする。
ダーキン:「ゼルムス、すまんが後の事はお前に任せる」
そう言って、彼はピレンモとプラントへ出て行くのであった。
ダークキングと言う異名を持って。
このようにゼルムスは一応のリーダー格の存在であるため、エクユリンからはボスと呼ばれている。
実際、戦闘の際の指揮を取るのはゼルムスが多いのだ。
任されたゼルムスはため息を吐きながらも、仕事をこなしていく。
ミリーラ:「この部隊はこのままでいいのかしら・・・」
彼女は宇宙を見ながら、思わず呟く。
表に出れば、それは世界を揺るがす自分達の部隊。
某新シリーズのように表へ出れない為、戦いや戦争を止めることが出来ないのだ。
全ては会議とダーキンによる最終決定により行動が決定される。
そもそも、この部隊が出来たのは数年前である。
ある日のプラントでのこと。
全くの偶然、いや偶然というには出来すぎていた。
全員が何らかの形で、軍に所属しており、さらに全員がメンデルの人工子宮から生まれたコーディネーターという共通点を持っていたのである。
タカスケ達を集めた二人の男女は何か超能力を持っていたかに思えた。
これには理由がある。
その二人はエクユリン達を集めた後、全員がメンデルに関係する者などの発言をしたのだ。
これだけなら調べれば何とかなるが、自分しか知らないことまで発言されては、信じない訳にはいかないのである。
その二人から彼らに与えられた命令はこうだった。
今後起きるかもしれない戦争を生き残りたければここで訓練しろというものだった。
抜け出せる状況でもなく、ましてや超能力を持っているかもしれない二人の教官。
彼らはしぶしぶ了承したのである。
ミリーラ達はその時からの同僚であり、仲間なのである。
その部隊はザフト軍でも、トップシークレットにされた。
全員がザフトで、最初に開発されたMSであるプロトジンに搭乗しており、軍でもランクが高かった。
やがて教官である二人の男女の言葉に従い、軍を脱退。
それから現在に至るのである。
キルザム:「いいんだ。今は・・・・」
過去の事を考えていたミリーラに言葉をかけたのはキルザムだった。
声をかけられたことにより、なんだか吹っ切れたミリーラは自分のリートの整備へ向かった。
これからの戦いを乗り切るために。
END
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