「プロローグ15 血のバレンタイン」




コズミック・イラ70年2月14日。
地球軍内部では大変な事が起きていた。

地球軍兵:「ルーズベルトが動いている?応答しろルーズベルト!」

ルーズベルトとは母艦の名前である。
アガメムノン級宇宙戦艦の大きさを誇る。
兵士の通信の呼びかけにも、答えずルーズベルトは発進した。
その兵士は追手を出さずに、勝手に偵察へ行ったんだろうと思い込んだ。
戦艦が核を積んでいることなど知らずに・・・



そのことから数時間後。
偶然にもプラント周辺で偵察していたハンターのロイラートに通信が入る。

ロイラート:「こちらロイラートだ」

ルビイル:「ロイラート!大変だ!」

通信の相手はルビイルだった。
二人はよくコンビを組んでおり、ハンター界でも有名である。

ルビイル:「さっき、地球軍から依頼が入った!アガメムノン級宇宙戦艦ルーズベルトに積まれている核を破壊する事だ」

ゼルギス:「核だと?」

通信をしているルビイル自身信じられなかった。
核なのだ。
禁断の兵器である。
この核が使われたのは歴史でも、コズミック・イラ初期の頃、あるいはそれ以前の話なのである。
そんな時代を知るはずもない、ロイラートが信じられるはずはなかった。
しかし、ハンターをまとめるクランに依頼が来たのは事実。

ルビイル:「だから、プラントの近くに居るお前にルーズベルトを破壊して欲しい。最低でも核兵器を。そのためならある程度までの手段を選ばなくても良いそうだ」

ゼルギス:「簡単に言うな!メビウスで核を落とせだと?」

依頼が来た以上やるしかない。
それがハンターの掟。
それに誰かがやらねば止められない。
ロイラートは口で言っていても、そう感じていた。
ルビイルが自分に通信をしていると言う事は余程の事態と見るべきだろう。
彼は嘘の話をするはずもない相手なのだから。

ロイラート:「分かった。今すぐ、向かう!」

そう言って、ロイラートは通信を切った。
核という禁断の兵器が使われるのを黙ってみるわけには行かないのだから。
ロイラートはメビウスのブーストを使って、戦艦ルーズベルトへ向かった。

ルーズベルト艦長:「よし、メビウスを出せ!」

その頃ルーズベルトはユニウスセブン宙域に指しかかろうとしていた。
艦長には何ためらいもなかった。
ブルーコスモスの一派なのだから。
しかし、今回の事はブルーコスモスから何も言われていない。
この艦長の独断で決めたことなのだから。

オペレーター:「MA接近!」

ルーズベルト艦長:「何?」

オペレーター:「データ照合・・・クランで特別支給されているメビウスタイプです」

ハンターをまとめるクランで支給されているメビウスは、普通のメビウスと性能が違う。 クランで支給されるメビウスは戦闘行う事を前提に考えられているため、セレブの持つメビウスとはスピード等が全然違うのである。

ルーズベルト艦長:「奴らはクランに依頼しおったか!核を持ったメビウスを出すのは中止だ!メビウス4機を出し、戦闘の混乱に乗じて核を持ったメビウスを出撃させる!」

男は指示すると、第1戦闘配備に移る。
やがて、メビウス4機が出撃した。
その様子を見た、ロイラートは当たり前といえば、当たり前かと呟く。
まずは、目の前の敵を排除する事に専念する。
ロイラートはそう決意した。

ロイラート:「いくら俺でも4機同時に相手と言うのは・・・泣き言を言っている場合ではないか!」

相手のメビウス4機はフォーメーションを組んで、向かってきた。

テロリスト:「奴を追い込みながら、母艦から遠ざける!俺達は時間を稼ぐんだ!」

あくまで、目的は核をユニウスセブンに撃ち込む事。
ならば、少しでも成功率を上げなければならない。
メビウスの4機には、核を撃つまでの時間稼ぎをするように艦長から指示されていた。
部隊のリーダーがそう指示すると4機で、母艦から離れるように動く。
本来なら誰でも、気づく簡単な戦法。
しかし、ロイラートは目の前の敵を討つことに集中してたため、この戦法の罠にあっさり掛かったである。

ロイラート:「くっ!」

彼は相手を堕とすどころか、回避に徹するのに精一杯だった。
いくら改造されているメビウスとはいえ、攻撃が当たれば落とされる。
このことには変わりなかった。

ロイラート:「MSだったらまだ、何とかなったのに!」

ザフトではMSが68年頃から作られていた。
地球軍へは謎の兵器として情報が渡り、メビウスが作られた。
ザフトのMSはクランでも支給されておらず、極秘にオーブへの友好関係などにより、数機が送られた程度。
そのMSの存在もオーブ内では極秘となっており、本当にごく一部しか知られていない。 しかし、有りはしないMSに期待しても仕方ない。

ルーズベルト艦長:「よし、核を持ったメビウスを発信させろ!」

???:「出るぞ!」

ついに核を持ったメビウスはルーズベルトから飛び立った。
ユニウスセブンへ向けて。
攻撃をかわしていた、ロイラートもレーダーの反応に気づく。

ロイラート:「またメビウスか!この進路は・・・ユニウスセブン?じゃあ、こいつらは・・・」

気づいたときにはルーズベルトからかなり遠ざけられていた。
ロイラートはこいつらの相手をしている場合でないと、感じ、ブーストを使ってその場を離脱する。
改造されているロイラートのメビウスのスピードは速く、数分後には核を持ったメビウスに早くも追いつこうとしていた。
だが、ここで予想だにしない事態が起きた。
急にロイラートのメビウスのスピードが減速したのだ。


ロイラート:「どういうことなんだ!」

彼は原因が分からず驚く。
それは無理もなかった。
この宙域へ来る時に彼はブーストをフル稼働で使っていた。
先程の戦闘も今も。
そのダメージが今になって、襲ってきたのだ。

???:「新たなる悲劇よ生まれるがいい!」

そのメビウスから核は発射された。 核が発射されてから、ロイラートには時間がゆっくり感じられた。
減速するメビウスではどうしようもなく、彼はコックピットの中でただ叫ぶ。
そして、核はユニウスセブンを直撃した。
減速していたとはいえ、比較的近くに居たロイラートのメビウスは爆風で吹き飛ばされた。 その後、ロイラートは行方不明となった。
一方の核を放ったメビウスも母艦に戻らず、ルーズベルト、メビウス4機も行方不明となったのである。
ユニウスセブンでの犠牲者は24万3721人。
このコロニーに居た人々は全て亡くなった。
アスラン・ザラの母親であるレノア・ザラを始め、子供も全て。
結果的にプラントはこの事を期に戦争をすることを決意。
この一方的な核攻撃を許せないと思った、プラント市民は数知れず、多くの者が軍に入った。
この衝撃は全ての居住区コロニーを混乱に陥れたのだった。

オーブ、プラントを始めとする多くの一般市民は、この事件が戦争勃発の引き金となったと考える人が多かった。
実際は地球連合軍の宣戦布告は3日前である2月11日に正式になされていたのだ。
この地球連合の宣告後、地球連合は月のプレイマオス基地の攻撃を開始した。
プラント側も事実を知っていたらしく、別の場所の防衛に当たっていたようである。
ただユニウスセブン宙域はザフト軍はおらず、偶然別の依頼を受けていたロイラート彼一人で、防衛任務についていた。
これはプラント側がユニウスセブンは襲わないだろうと言う考えと、クランの依頼が地球郡から来たということもあり、クラン側はプラントに伝える事が出来なかった。
なおさら、核。
まともに取り合うはずもないと考えたクラン責任者は、ハンターに任せる事しか考えなかった。
つまり、このユニウスセブンの悲劇はクランとプラントが、協力していれば防げた事態なのである。

事件後、自分の事しか考えていなかったクラン責任者は辞意を表明。
地球連合はこの事件はプラントの自作自演の自爆作戦と批判。
このことに加え、タブーである核を使用した事、自作自演と言葉を出した等により、プラント市民の怒りを買った。
さらにユニウスセブンは食糧生産コロニー。
つまり、プラントの食料自給率が大幅に低下したのだ。
これでは、怒りを買うのは無理もない。
しかし、地球連合も自作自演と言ったことには訳がある。
確かに宣戦布告したとはいえ、当初核を使うつもりではなかった。
そのための隠ぺい工作である。
核が地球連合や国民にとっても公然のタブーであったため以降さまざまな問題を地球連合は抱えることになる。
この悲劇はバレンタインの日に起こったため、『血のバレンタイン』と呼ばれことになる。
2月18日シーゲル・クライン議長は弔う国葬の際に独立宣言と地球連合との徹底抗戦を唱え、この日は黒衣の独立宣言と呼ばれる事になった。
こうして本格的武力衝突、つまり戦争に発展していくのであった。







END




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