「プロローグ13 狼VS狩人」
ガルグはあれから宇宙を旅していた。
正確には荒らしまわっていたと言うべきだろうか。
そう、彼にとっての仲間をもう誰も居ない。
彼はホルクを撃った後、雄たけびを上げていた。
怒りと悲しみとどうしようもない気持ちの全てを入り混じった、雄たけびを。
その後メンデルを離れ、生活は散々だった。
なんとか毎日を生活する日々、盗みを働く日々も少なくなかった。
おまけに拠点は廃棄となったコロニー。
今の彼に人への思いやりなど存在しなかった。
あるのはブルーコスモスへの復讐という憎悪。
彼は今日も戦う。
生き抜くために、武器を集めるために。
武器をたくさん持つ事で、安心が出来るのだ。
ガルグにとって、それは大事な事であった。
ルビイル:「あれが、賞金首の狼か」
各地を暴れ回るガルグはハンター界の間では高い賞金がかけられていた。
そのため、ガルグの来そうなところにはハンターが待ち構えている。
ガルグを待ち構えていたところに居たハンターはルビイル。
ハンター界では有名人である。
彼のメビウスにはかなり改造を施されており、普通のメビウスとは性能が大きく違う。
とにかく、改造の好きな自己流ハンターとして、名が通っている。
ガルグ:『あの武装の多い奴は確か・・・ルビイルか!』
ガルグもルビイルの噂については聞いていた。
今どき時代遅れなバズーカ、鎖、銃、ナイフ等を持ち歩いているハンターが居る。
それがルビイルということを噂で知っていた。
ガルグ:「そこをどけ・・・・」
ガルグはルビイルを目の前にして、どくように命令口調で話す。
しかし、ガルグ自身もルビイルが引かない事を理解はしていた。
案の定、相手は1歩も引く気配はなかった。
ルビイル:「引くわけないだろう?お前とは賞金とか関係なしで一度手合わせしたいと思っていた。だから、引くわけにはいかん!」
ルビイルはガルグと戦いたかったのだ。
ハンターの血を騒がせるほどの腕を持つガルグと。
賞金首にされるということはつまり、強い相手ということになるからだ。
二人は目を閉じる。
しかし手は互いに銃を準備し、戦闘体制を整わせる。
ルビイル:「死んでも」
ガルグ:「恨みあうのはなしだ!」
戦いは始まった。
ほぼ同時に二人は銃を放つ。
当たり前だが、二人とも避ける。
ルビイルはナイフを右手に、ガルグは両腕の小手に仕込んでいたかぎ爪を出し、互いに近づく。
そして、ナイフとかぎ爪が交じり合う。
勿論、火花が飛び散るわけではない。
しかし、二人の迫力は凄かった。
二人は後方へ下がり、ルビイルは次の武器へチェンジする。
右手に鎖を持ち、左手に片手用バズーカを装備して、攻撃に移る。
ルビイルの作戦は鎖でガルグを捕まえ、バズーカで止めを刺すという作戦。
すぐに作戦を立てたルビイルは、行動に移る。
ルビイル:「捕まれ!」
彼の鎖はまるで蛇のようにガルグへ襲いにかかる。
だが、相手はガルグ。
狼と呼ばれる男。
驚異的なスピードで鎖をかわし、一気にルビイルに懐へ飛び込もうとする。
ルビイルはガルグの動きを先読みしながら、バズーカを放つも、当たらない。
武器をチェンジしようとしたときには、ガルグに追い込まれていた。
ガルグ:「勝負あったな!」
勝利を確信した彼は右手のかぎ爪をルビイルの顔に向ける。
ルビイル:「勝負はまだ、決まらんさ!」
ルビイルはそう叫び、密かに手に持っていた玉を出し、ガルグにぶつける。
ガルグにぶつけた後、玉は割れ、煙幕が出る。
俗に言う煙球である。
目の前で煙幕を出され、何も見えないガルグ。
彼は煙幕を払うため、近くの空をかぎ爪で斬る。
その様子に離れた場所から、見ていたルビイルは網を投げた。
まだ、まともに目が見えないガルグは網に捕まる。
そして、煙幕が晴れるころにはガルグは抜け出せない状態になっていた。
ガルグ:「こんな網などかぎ爪で切り裂いていやる!」
ルビイル:「もう、お前に勝ち目がない!」
ルビイルがそう放った後、鎖がガルグの腕へ手錠のように、同時に体へと絡まる。
彼の鎖は簡易ラジコンの感覚でスイッチを押す事で自動的に動くのである。
勿論、スイッチを使わずとも、中々の性能を持っているが。
ガルグ:「汚ねえぞ!コズミック・イラの世界で非現実的な事をしおって!」
ルビイル:「俺はハンターだ。戦い方に文句を言われる筋合いはない。それにマスターほどではない!」
分かりやすく言葉を変えると、ルビイルはあくまで東方で不敗だった者よりは、現実的だと言っている。
しばらく、彼らは子供の口喧嘩のように言い合っていた。
挙句の果てには・・・
ガルグ:「どうせこの戦いも黒歴史になるんだよ!」
ルビイル:「黒歴史って他のシリーズの言葉を使うな!」
ガルグ:「黙れ!これは闇にされる戦いという意味で言っているだけだ!」
なんにしてもそれほどの意味はない。
これは本当の子供の口喧嘩だ。
喧嘩のせいでルビイルは近づく影に全く気づいていなかった。
気づいたときには背後を突かれていた。
???:「大人しく、彼を離したまえ」
相手は男。
ルビイルは頭に銃を向けられた状態だ。
さすがに、一流ハンターのルビイルでもこの状況を何とかする事は不可能。
ここは仕方なく、男の指示に従う。
ガルグに掛かった網と鎖はリモコンにより解除される。
ルビイル:「従ったぞ、これで!」
抜け出すチャンスだと思った、ルビイルは反撃を試みる。
しかし、ガルグに後ろを突かれる。
ルビイル:「な!?」
ガルグ:「俺でもこれくらいの武器は所持している!」
ガルグは話すと同時に持っていた、スプレーらしき物をルビイルに向けて発射する。
そのスプレーは勢いよく、ルビイルの目に大ダメージを負わせる。
ルビイル:「目が!目が!!」
ガルグ:「この戦いは色々な意味で危ない気がするが・・・お前との戦いは楽しかった。てめぇはいつかぶっ殺す!」
???:「ついて来い!」
謎の男とガルグはその場を去った。
ルビイルの目が見えるようになったのは5分くらい過ぎてからだった。
気づいた後、ルビイルはガルグを逃がした事より、別のことを後悔していた。
ルビイル:「俺は何で、あんなどっかの特務大佐みたいな言葉を言ってしまったんだろうか・・・」
時間が経つにつれて色々な事を後悔し始めた。
ガルグと口喧嘩により、謎の男の接近を許した事。
スプレーを持っていることに全く、気づかなかった事。
そして、名前を聞かなかったこと。
ルビイルはガルグではなく、狼というコードネームしか知らない。
ルビイルはただ、後悔するだけであった。
*
ガルグ:「何故、俺を助けた?」
先程の戦場から少し、離れたところでガルグは口を開く。
相手を見る限り、全く知らない男なのだ。
クルーゼ:「私の名はラウ。聞いた事はあるのではないかね?ガルグ」
ガルグの質問を無視し、名乗ったこの男。
その男の言ったとおり、ガルグには聞き覚えがあった。
ラウの名前はメンデルで始めて生まれたクローンだと聴いている。
勿論、得意の盗み聞きで。
ガルグ:「ああ、確かに聞き覚えがある。俺を助けたのは目的を知って・・・いや理解したからか?」
ガルグの目的。
それを理解するにはメンデルで居た者ならば、いや、メンデルで産まれた者ならば理解できる目的だ。
たとえ、あの場の惨劇を目の当たりにしていなくても。
クルーゼ:「そうだと、言っておこう」
ラウは世界に対して恨みを持っている。
恐ろしいくらいの憎悪を。
ガルグ:「同じ目的だから助けた。だから、お前とともに協力し、目的を達成しようと言うのか?」
クルーゼ:「そういうことだな」
二人はこの時から仲間となった。
目的が同じなら、色々と互いにとって便利だからだ。
そして、彼らは考え方が似ているということである。
彼らの望んだ事かは分からないが、世界はゆっくりと動き始めていた。
ゆっくりと。
END
「コペルニクスの出会いと別れ、そして・・・悲劇」