「プロローグ10 思いがけぬ誕生日プレゼント」
あれからマサカズはウズミに育てられ数年が経ち、今日彼は10歳になった。
ウズミは彼の誕生日プレゼントを選ぶためにカガリと外出ており、アスハ邸にはマサカズを除いて誰も居ない。
当の本人は今日が自分の誕生日など知らず、本を読んでいた。
彼は今読んだ本を戻し、読んでいない本を探していたときである。
マサカズ:「む?この本はなんだろう?」
彼が見つけたのは明らかに古そうな一冊の本だった。
中を覗くとそこには少し厚い封筒が入っていた。
彼はまだ10歳(本人は9歳と思っているが)なので好奇心が強いのだ。
最も、この好奇心の強さはカガリの原因が高いのだが・・・。
マサカズは好奇心に身を任せ、封筒を開け、中に入っていた手紙を見るのであった。
そこに書かれていたことは彼にとって衝撃的な事であった。
自分は人工子宮から生まれたコーディネーターであり、失敗作であること。
失敗作と判子を押されたコーディネーターが大勢居ること。
そして、唯一の成功作はカガリの兄弟であること。
数時間後・・・
ウズミとカガリは帰宅した。
二人が選んだプレゼントはオーブに伝わる人形、通称オーブドールと言う物。
プレゼントを持ちながら、ウズミはカガリと一緒に彼の部屋へ行く。
彼の部屋へたどり着き、タイミングを計ろうと彼の部屋をそっと開ける。
ウズミの見る限りマサカズは本を読んでいた。
だが、ウズミは彼の読んでいる本をじっと見ることで始め気づく。
彼の読んでいた本はかつて???から渡された封筒付きの本なのである。
ウズミはカガリをキサカの部屋へ行くように指示し、自分はマサカズの部屋へ入るのであった。
*
マサカズは何度も封筒の手紙を見返していた。
今誰かに自分のことを聞きたい・・・
と思っていたら彼は気配を感じ、後ろを振り返る。
そして、ウズミが居たことを始めて気づく。
彼はどうするか迷った挙句に話を切り出す。
マサカズ:「ウズミ様・・・これはどういうことですか?」
ウズミはこうなる日が来ることはなんとなくだが予測していたが、まさか彼が10歳の時に来るとは全く考えていなかった。
だが、その日が来た時のために決めていたことがある。
それは彼が真実を知った時に自分からも知っている限りを話すこと。
ウズミ:「その手紙のことは事実だ。君は確かに普通のコーディネーターではない」
マサカズはウズミから手紙のことは確かだと言われ、自分はいったい何者なのか?と思う。
自分はなんのために生まれ、生きてきたのか?
マサカズの考えていることを知ってか知らずかウズミは話し続ける。
「そして・・・私の子供でないことはお前も知っての通りだ。しかし、いくら血が繋がっていないとはいえ、お前は私とオーブの子供だ!」
そうマサカズは養子である。
養子であり、ウズミと血が繋がっていないことは数年前に知った。
でも、彼は物心をついたときからウズミと一緒に居たため、養子と言われてもウズミを本当の父親にしか思えなかった。
だから余計に、手紙のことがショックなのである。
いくら養子であったとしても、ウズミの子供と言われても、この手紙を見ればそんな言葉ではマサカズに通用しない。
しかし、次のウズミの言葉でマサカズの気持ちを揺るがすことになる。
「お前の気持ちはよく分かる。誰だって真実を知れば、全てをすぐに受け入れることなんて出来やしない。だが、過ぎた時間にもしもはないのだ!過去は変えることが出来ないが、今後の自分は変えていける。だから、いくら時間をかけてもいい・・・事実を受け入れることはお前にだって出来るはずだ!」
この言葉にマサカズは気づく。
今どんなことをしても、過ぎ去ったことを変えられるわけではない。
でも、未来は・・・自分は変えられる。
例えどんな生まれ方をしたとしても、そのことを認めて生きていくしかないと。
そのことに気づかせてくれたウズミに感謝の気持ちが溢れ、一筋の涙が零れ落ちる。
「ウズミ様・・・いえ・・・お父さんありがとう」
マサカズはそう言って、涙が溢れながらウズミに抱きついた。
ウズミはまさか、始めてお父さんと呼ばれ、抱きつかれるとは思ってもみなかった。
自分を拒絶し、さらにはマサカズ自身を拒絶するのではないかと考えていたからだ。
彼の予想外の行動にウズミは彼を優しく手を回し抱く。
その光景はまるで二人が本当の親子のように抱き合っていた。
それからマサカズはウズミをお父さんと呼ぶことはなかった。
未来に訪れるオーブ爆破の日が来るまで・・・
*
マサカズ:「ここがコペルニクスか・・・」
あの出来事から1年が過ぎ、彼は11歳になっていた。
マサカズはあれから程なくして自らの意思で軍隊に入り、キサカ達の特別訓練を受けてオーブ軍特殊部隊の一人となっていた。
勿論この年齢で特殊部隊に入れるはずもなければ、本来軍隊に居てはならない年齢なのだが、彼の熱い思いを感じたウズミは特別条件を課すことで特例を認めるのであった。
その特別条件とはキラ及びカガリ、この姉弟に関係する人物を優しく見守り、困っている時は助言を与え、時に試練を与え、彼らを何があっても守り抜くこと。
マサカズから言えば、二人を守る理由は分かるが何故、二人に関係する人物も加えて助言や試練を与える必要があるのかとウズミに聞くとウズミはこう言い返した。
いずれは来る時であり、いつかは私の言葉を理解できるだろうと。
ウズミの言葉はこの時深く考えず、訓練に集中した。
その結果彼は軍の卒業生の中でも優秀なレベルで卒業し、特例中の特例である極秘のオーブ軍特殊部隊に所属することになった。
例え、失敗作であろうと普通のコーディネーターと比べ物にならない知識、能力の上達を身に付けているのである。
そして、彼が最初にウズミから与えられた命令が1年間ヘリオポリスへ出向き、キラやその家族の様子を見て来いというもの。
至って簡単な任務だがマサカズの気持ちは複雑だった。
ウズミと離れるからだ。
しかし、やはり彼はまだ少年であるため、キラに会いたい気持ちを抑えられないでいたので、丁度いい機会だったのでどちらかといえば喜んだ。
比率でいえば、7:3と言ったところである。
マサカズ:『キラが通っている幼年学校とはここでいいのかな?』
戸惑いながらも彼は幼年学校へ入る。
転入手続き(ウズミからの偽の紹介状)を渡し、嘘の事情を話すためである。
普通の転入手続きと言っても、色々と説明が難しいためにこういうことにした。
マサカズは学校へ入ったのはいいものの、先生達の居る所が分からなかった。
どうしたものかと考えていると、一人の男の子を目にする。
藍色と言うのだろうか?そんな髪の色をしていた。
仕方ないので聞くことにした。
マサカズ:「君!」
名前が分からなかったからそう呼んだ。
まぁ、無理もないのだが・・・
藍色の髪をした少年は呼びかけに足を止め振り向き、答える。
アスラン:「何かな?」
藍色の髪をした少年が答えてくれことにマサカズは安心する。
しかし、見る限り自分と同年代の少年である。
マサカズはあまり同年代の子供と話したことがない。
あったとしてもカガリである。
どう話せばいいか迷ったがとりあえず敬語や丁寧語を使わず話すことにした。
マサカズ:「先生達が居る所はどこにあるんだ?」
マサカズ自身失敗したと思った。
この少年は聞きたいことが分かったので一応答えた。
アスラン:「向こうの廊下から左へ曲がると職員室って書いているから」
マサカズは礼の言葉を言おうとしたが、少年はもうどこかへ行ったようで周辺には見当たらなかった。
今度会ったらお礼を言おうと思いながら、職員室へ向かった。
そして、職員室へ入り学校長に手紙を渡し、事情を説明する。
マサカズ:「手紙を見ての通り私はここ最近のテロ活動の活発化により、1年間オーブから派遣された者です。1年間と言いましても、私も仕事があるので学校に毎日来るわけではありません。ちなみに私は子供ですが、戦闘訓練はウズミ様の特例で受けているのでご安心を」
学校長もただ驚くだけであった。
いくらオーブ代表の友人の子供が居るからとはいえ、どう考えてもこの状況は可笑しい。
テロ活動とウズミの学校時代の友人のお子さんが居るからとはいえ子供を送り込んでくる事が信じられないのだ。
しかし、有名な中立国のオーブ、手紙を見る限り本物であるため信じることにした。
学校長:「分かりました。1年間でよろしいのですね?」
マサカズは頷き、その後は学校を後にした。
次にウズミから指定された家へたどり着く。
家の中を見る限り誰も居ない。ドアの鍵は開いていたのでとりあえず中へ入る。
中を見てマサカズは妙なものを感じた。
明らかに一人暮らしをするような広さではないからだ。
それに考えてみれば、一人なのにアパートではないのも引っかかる。
しかし、考えてもしょうがない為、住む事にした。
なんにしても住むところがなければ、コペルニクスには居られないのだ。
マサカズはキラやその家族と会う事を楽しみにしながら、部屋の整理をするのだった。
END
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