この物語は機動戦士ガンダムSEEDに関係する全ての作品を再編集し、再構築した物語である。
話はSEED以前の物語から始まる。
なお、事実の部分と事実でない部分もあることを理解していただきながら観覧していただきたい。





「プロローグ1 隠された真実」




ユーレン:「どうだったのだ?」

スリカル:「駄目です。これも失敗作です」

木星に行く前ジョージ・グレン(いわゆるジョージ・グレンの告白)により明らかになった遺伝子操作された人間、コーディネーターの存在。
ここメンデルはその発表があってから15年後に建設されてから研究が行われた。
ただ人類の夢である最高のコーディネーターを作るために。

ミゴキマ:「ではどうしますか?」

ユーレン:「今回は実験体にしておいてくれ」

そう言って、ユーレンは去っていった。
すでに研究が開始されてから数年が過ぎるが成功作のコーディネーターは現れない。
失敗作となったコーディネーターは実験、あるいは処分される。
それが暗黙の了解で行われていた。

オキマ:「ユーレン教授達は何故、こうも簡単に命を捨てれるのだ?」

今話しているのは最近ここへ来た研究員達である。
この研究を担当する者は一年と経たずに辞表を出して去っていくものが多い。
それは毎日同じ作業でどうしても飽きてしまうからだ。
それでも研究したいと考える人は後を絶たないから現状が成り立っていた。
しかし、新たに就任したユーレン・ヒビキは違った。
彼は一年を超えてそのまま残っており、普通なら飽きてしまい、おろそかになる研究もユーレンは日が増すごとに熱心に研究するようになっていった。

ピプス:「ユーレン教授は昔からだ。あの時も・・・」

ピプスはそう言いながら、数年前の話をし始めた。



ユーレンは研究に熱心になりすぎて、研究資金に困った頃の事。
主に言えば、コズミック・イラ43年の話である。
丁度その頃に資産家で有名なアル・ダ・フラガがメンデルに訪れた。
理由は自分のクローンに後を継いでもらうため。
その時期、アルの妻のお腹の中には子供(後のムウ・ラ・フラガ)がいた。
しかし、アルは妻(とお腹の子供)を嫌い、家を継がせたくなかったのでメンデルへ来たというわけである。
なんのメリットもないクローンを作れと言うアルにユーレンは口を開く。

ユーレン:「断る!クローンの製造は禁止されている!」

ユーレンは反対していた。 クローンの製造は禁止されており、作ろうとしただけでも死刑にされた事例が多くあるからだ。
大体ユーレンは自分の得にならないことはしないのだ。
しかし、アルはこうなることを分かっていたのかある物を見せる。

アル:「禁止なのは知っている。だが、これなら嫌とは言えまい」

アルは執事らしき人物にケースを開けるように命じた。
執事は命令どおりケースを開け、そこに居た研究員全員を驚かせる。
全部で4つあるケースの中にはそれぞれ1億円、合計すると4億円が入っていた。
研究に4億円など普通に飛んでいくのだが、こんな大金を持ち歩く者はいくら大金持ちでもしない。
さらにアルはユーレンに決定的一言を述べる。

アル:「クローンを作ってくれれば、次世代コーディネーターのために資金をいくらでも提供してやろう。この4億は私の覚悟の証だよ」

この言葉により、資金に困っていたユーレンは分かりました・・・作りましょうと握手を交わした。
すぐにアルの遺伝子を元に何ヶ月か過ぎて、一体目のクローンが生まれた。
このクローンはアルからラウ(後のラウ・ル・クルーゼ)と名づけた。
当初、アルはラウに財産の全てを引き継いでもらおうと考えていたが、ラウを引き取る時ユーレンから絶望的な事を言われた。

ユーレン:「この子供は貴方の遺伝子を元にして作られているので、あまり長くは生きれません」

その話を聞いた瞬間にアルは早くも心変わりしてしまった。
財産は結局ムウに継がせることにして、ラウを捨てる事を決めたのである。
ラウはその後、フラガ家親族に渡されて育った。
ユーレン達はクローンを一応作ったので、資金の支援がされた。
この出来事から幾度も資金提供をしてもらっていたが、長くは続かなかった。
アルは数年後に火事により死亡したからである。

だからと言って、資金の提供してくれる組織がなくなったわけではなかったため、ユーレンはクローンについての研究もさらに行っていった。
資金の提供してくれる組織の一つが地球軍である。
ユーレンは資金の引き換えに地球軍の戦闘用コーディネーターの研究を行い、C.E.45年には戦闘用コーディネーターの子供(後のC.E.最高クラスのMSパイロット叢雲劾)を誕生させた。
すぐにこの子供は地球軍の特別施設へと送られた。
この子供は生まれた時から戦闘能力に関してかなり完成していたため、ユーレン達の自信作であった。
しかし、地球軍からは心理コントロール関係の数値はあまりよくなかったため、失敗作と言われた。
ユーレンはこの言葉により研究に対し必死になっていった。
誰にも失敗作とは言わせないコーディネーターを作るために・・・

ミゴキマ:「だんだんユーレン教授達のやり方に賛同できなくなってきたよ」

今話しているのは最近この研究所に入った研究員達。
全ての研究員が失敗作となった子供を道具と見ている訳ではないのである。
彼らは話しているうちにユーレンを始めとする幹部を怨むようになっていく。

ボルフォス:「まさか、あんな事をするなんてユーレン教授は本当に人間なのか?」

ユーレンから失敗作と判子を押された子供は殺される、または実験体となる。
処分の順番はユーレンが失敗作と認める→他の研究者幹部に預けられる→専門の人達に子供が渡され処分されると、ユーレンから聞かされていた。
同時に処分する基準レベルも聞かされている。
ユーレンが定めた基準レベルとは多くの能力が一定値より下回っていた場合、処分を決定するということである。
そのため、研究者達は処分とされた子供は薬を打つなどの安楽死と呼ばれる方法で処分される、または実験体になると思っていた。

オキマ:「全くだ・・・あれは殺すというレベルではない」

しかし、処分の場合は安楽死などではなく実際は銃の的となることもあれば、水のある中で沈めるなど子供達は悲惨な運命を辿るのである。
だからと言って実験体のほうが楽と言う訳ではない。
体に色々な器具を付けてデータを採る行為も子供達からすれば苦しいことにしかならない。
電撃を流して各臓器の様子を見たりするパターンがほとんどであり、子供が痛いと言っても問答無用で時間になるまで続ける。
やがて、実験に耐え切れず命を落とす子供も少なくない。
実験の末に命を落とした場合、ある液体の中に沈められ、死んでからも実験体として扱われる。
処分にしても実験体になったとしても地獄であることに変わりはない。

ピプス:「だが、俺達はここに所属している限り、上からの命令に逆らえる身分でもないし、ましてや俺達は組織の人間であることに変わりない」

この研究員が話したことは事実であるため、誰も反論することが出来なかった。
それから、しばらく誰も話さなかった。
自分達の今行っている実験への罪悪感、本当にこのままでいいのかと感じる不安が静かな時の流れとともに心へ押し寄せる。
研究員達は考えれば考えるほど自分がしていることが恐ろしくなってきたのだ。
やがて、研究員達は日が過ぎていくほどにこの話はしなくなっていった。



研究員達の話から数年が過ぎた。
あれから研究員達はコーディネーターの研究を以前より積極的に行うようになっていた。
この数年で生まれた子供も居れば、死んでいった子供も数知れない。
だから、早く成功体を作りこれ以上犠牲者を増やさないためにという気持ちになっていったのだ。
一方、幹部の研究員達は一部の子供達に対して重点的に研究を行っていた。
しかし、一部といってもランダムに選ばれただけである。
セイという子供も偶然選ばれてしまった研究対象の一人であった。
この子が失敗作にされた理由は目と髪が違った、思考に短期的なDNAが見つかったこと。
ただ、それだけ。
とはいえ、セイからすれば何も悪いことをした覚えがないのだから研究の意味が分からず、毎日行われる研究を耐えていた。
そして、研究が終わると部屋へ戻り毎日涙を流していた。
だが、毎日涙を流していたのはセイだけではない。
普通に研究されている子供でさえも痛みで誰もが泣いているのである。
一人の子供を除いて・・・

ガルグ:「みんな!今日もよく頑張った!いつかあいつらに見返すためにも俺達は研究に耐えるんだ!」

誰もが泣いている中で一人声を高らかに上げるこの子供の名前はガルクルド。
他の子供達からガルグと呼ばれている子供だ。
毎日、みんなを励まし、時には外界(地球やプラント)の話をみんなに聞かせたりしている。
研究員から外界の情報を教えてくれないためガルグに頼り、話を聞きたがる子供も多い。
ガルグは得意の盗み聞きした情報を自分と同じ部屋に居るみんなに多くの話を聞かせた。
特にファーストコーディネーターであるジョージ・グレンが死んだことに関して話を聞いた子供を驚かせた。
このように外界からの情報を教えているが子供達に教えてはならない話まではしていない。
例えば、実験の後に帰ってこない子供がどうなるかを・・・
ガルグは知能の発達に関して最高クラスとして生まれたが失敗作とされた。
理由は体重が予定値を上回ったこと、食べ物に関するアレルギーが見つかっただけである。
この理由はガルグ自身も知っている。

夜、手薄になる研究員達から得意の盗み聞きで知ったからだ。
昨日研究員達から盗み聞いた話は、カナードという子供が地球軍に渡ったということ。
生まれて間もなく地球軍に渡ったため、ガルグはカナードという子供が長くは生きられないだろうとすぐに推測した。
地球軍はここより訓練や実験が厳しく、対コーディネーター用として作られていくため、人格自体保てず自分が何者だったのかも分からない状態で死んでいくのだと以前聞いたからだ。
カナードを哀れに思い、それから考えないようにしたつもりだった。
しかし、今日の夜になり何故か思い出してしまう。
ただ、名前とどこへ送られたか聞いただけなのに。
それでも、ガルグはカナードの事を振り切って行動する。
いつものように盗み聞きする所へ行くがそこには、研究員がフォルス一人しか居ない。
ガルグは他に研究員が居るか確認するが、どう見てもフォルスしか居ない。
今日は帰るかと思い、部屋へ戻ろうとした時、フォルスは動き出した。

ガルグ:『これは何かありそうだな』

何かあると思ったガルグは子供特有の好奇心で行動することにした。
フォルスに気づかれないようにガルグもこっそり後をつけていく。
そこはガルグの始めて見る部屋だった。
だが、ここで恐るべき事実を知ることになるとはガルグも思っていなかった。



フォルス:「これは・・・」

フォルスは喋ってから口を閉ざした。
新たに生まれた子供が何かあるのだろうか?とガルグは考えた。
余程数値が酷い子供が生まれたのかと。
しかし、実際は違った。

フォルス「まさか・・この数値、データを見る限り予定値を上回っている?ついに生まれたのか?成功体が?」

この言葉にガルグも体が震える。
成功体が生まれたということは自分達は彼らに必要とされなくなり、自由になるのか?
自分がほしいものは自由。
自由になれるのなら構わない。
もうみんなも、つらい思いをしなくて済むのだと。
しかし、ガルグの思いとは裏腹に運命は残酷な道へ歩き出す。

アマドス:「成功体が出来たか・・・」

フォルスの言葉に反応するかのように別の扉から研究員の誰かが現れた。
一瞬だが、ガルグは見てすぐに誰か理解できた。
その人物は研究員の幹部でもあるアマドスだった。
アマドスと言えば研究所でも幅広く子供達に知られている。
主に子供達の毎日の研究内容や実験メニューを考える立場であり、研究員の幹部と言える存在なのだ。
などとガルグは頭の中で整理しながら耳を立てていた。

フォルス:「ユーレン教授には黙ったまま、この子を持ち出すのですか?この部屋で研究していたことも黙って・・・」

その言葉に反応したガルグはそっと覗く。
アマドスは子供を抱きかかえていた。
ガルグは疑問に思う。
今の話の内容から言って、ユーレンには秘密でこの研究が行われていたかのようなことだ。
そんな事がありえるのだろうか?
あの男なしで成功体が生まれるなどあってはならないことだとも言えるからだ。

アマドス:「そうだ。私は辞表を出して早く逃げるとしよう。フォルス今まで助かった。礼を言う」

それだけ言うとアマドスは成功体を抱いて去っていった。
ガルグはすぐにアマドスを追いかけようと思ったが、部屋にはフォルスが居るため大人しく待つことにした。
やがて、フォルスはアマドスの来た扉から部屋を後にする。
ガルグは時間の関係上アマドスを追うのは不可能と考え、自分の部屋へ戻った。
今日の事は夢かもしれないが、一応心の中に留めておこう。
そう、思いガルグは明日に備え寝ることにした。



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