福岡、北海道が襲撃された同じ日の東京。
やはり、こちらでも戦闘は起きていた。
ただ、状況は攻撃されている3都市の中で最も危険だった。

ゴウ:「ケイト!本当にやべえぞ!」

ケイト:「ああ、これでは・・・東京が!」

彼らは上から順にゴウ・センジョウ(川条鋼)、ケイト・テンツ(天津圭人)。
二人は鉄火タイプのMSを使用していた。
福岡、北海道では状況を打開するに至った鉄火タイプのMS。
しかし、2機を使用しても状況は全く良くならない。
それどころか、だんだん追いやられていっているのだ。

ダト:「鉄火タイプのMSを使って、これとは・・・!」

彼はダト・イケルゾ(往蹴副打斗)。
この東京での戦いを指揮する立場。
つまり、指揮官である。
敵の勢力を見かねて、実践へ初めて鉄火タイプのMSを投入した。
以前から整備されていた事もあり、すぐには出せた。
だが、訓練は一応やっているとはいえ、殆どされていない状況。
そのため、パイロットが完全に扱えるはずもなかった。
さらにもう一つ、状況を打開できない理由がある。

ギゴー:「コイツ・・・中々やるじゃねえか。ガグー、そろそろ殺っちまうか?」

ガグー:「分かった。ならば、フォーメーションEFで殺るぞ!」






「エピソード5 東京占領」



日本軍が状況を打開できない理由。
それは、敵の中の4機が想像以上に強い事だった。
敵が使っているのはジン。
色が通常のタイプではないため、改造機なのだろう。
普通、鉄火タイプのMSとジンのスペックと比べれば、鉄火タイプの方が性能は上回る。
しかし、弱点がある。
まず、鉄火タイプのMSに乗るのはナチュラルが前提であるため、その分本来のスペック性能を生かしきれないということ。
加えて、パイロットの訓練が不十分である事。

ケイト:「ちょこまかと・・・動き回りやがって!」

彼の使っている鉄火タイプのMSの名は鉄火突(てっかつ)。
基本武装に加え、名前の通りに武装が加えられている。
だが、単純な武装であるので攻撃が読まれやすい武装なのである。

ガグー:「弟よ!やはり、コイツは!」

ギゴー:「馬鹿だな!兄よ、フォーメーションEF2だ!」

突進したケイト。
まあ、彼の性格と鉄火突という名前から彼自身には合っているのかもしれない。
しかし、相性など今の戦場ではそれほど関係がない。
敵のコンビネーションは鉄火突に確実にダメージを負わせていく。

ケイト:「ぐわぁ!?」

吹っ飛ばされる鉄火突。
突撃を主に作られているため、装甲は他の同タイプのMSを上回る。
しかし、装甲は装甲であり、パイロットばっかりは運も含まれる。
運が悪ければ、衝撃で頭を打ち、即死。
ということも有りえるからだ。

ゴウ:「ケイト!お前らァ!」

斧を振りつつ、敵の懐へと向かうゴウ。
彼のMSの名は鉄火斧(てっかふ)。
やはり、名の通り斧を主軸とした装備のMSである。
だが、彼の前に別のMS2機が立ちはだかる。
先程、ケイトと戦っていたジン2機と違うMSだ。
ジンといえば、ジンなのだが、色や武装などが違う。

シルク:「姉様、コイツには・・・」

ジェニー:「もちろん、あのフォーメーションよ!」

斧は威力があるが、振り下ろすのが遅い。
これは鉄火タイプのMSは、全体的にある程度のスピードと装甲を意識されて作られているため、仕方のないことである。
2機は左右に別れ、鉄火斧をマシンガンで攻め立てる。

ゴウ:「うっ!」

明らかに状況は不利。
鉄火タイプのMSといえど、乗っているのはナチュラル。
コーディネーターではない。
ゆえに限界も近い。
指揮官であるダトはある決意に達した。

ダト:「(このままでは・・・・・・)エイカ、鉄火弓を起動し、二人を援護、その後、東京から脱出し、長野基地へ向かえ!」

この命令に戸惑った。
エイカはフルネームで、エイカ・キモト(木本英香)。
ゴウとケイトとは、幼馴染だ。
まあ、3人とも幼馴染と言えば話が早いだろう。
ちなみに鉄火弓(てっかゆ)とは、鉄火タイプのMSの1種である。
このMSの最大の特徴は、粒子の弓矢と実弾の弓矢を使い分ける事。
それゆえに、コックピットの中も少々特殊となっている。

エイカ:「出来ません!イケルゾ隊長を見捨てて、敵に背を向けて逃げるわけには・・・」

戦場において、上からの命令は絶対。
でも、エイカはそれが出来ないで居た。
彼の考えていることが何となく分かるからだ。

ダト:「甘ったれるな!エイカ・キモト!お前には二人を無事に、この東京から連れ出す必要がある!今の二人では、絶対に奴らに勝てんのだ!ならば、時を待つのだ!」

エイカ:「それは逃げる事では!?」

ダト:「そうだな・・・しかし、逃げる事は悪いわけではない。昔、教官が言ってたよ。戦場では最後に立っていた者が正しいと。ならば、何としても二人を生き延びさせろ!そして、今日・・・犠牲となった者達の仇を取るように・・・・・・それが俺からの命令だ!」

その気迫にエイカは、逆らう事が出来なかった。
彼女は素直に指示に従い、格納庫へと向かう。
そして、鉄火弓のシステムを起動。
システムの起動を確認後、彼女はすぐさま出撃する。

エイカ:「隊長、ご無事で・・・エイカ・キモト!鉄火弓出ます!」

彼女もまた、出撃した。
一緒に育った二人を助けるために。
二人を連れて無事に東京から逃げると言う使命を持って。

ジェニー:「MS反応・・・まだ、こんなMSを!」

エイカ:「女だからって、あまく見ないほうがいいわよ」

素早く弓から粒子の矢を放つエイカ。
予想外の攻撃に敵MSは一端、後退し始める。
今がチャンスと思い、エイカは二人に通信を入れた。

エイカ:「二人とも!東京から脱出するのよ!」

ゴウ:「ふざけるな!俺達が離れたら、東京が・・・」

ケイト:「そうだ!大体、鉄火弓を起動させたんなら、俺達とともに戦うんだ!そうすれば・・・」

二人はあくまで戦う気だ。
この街は自分達が生まれ育ち、通った学校もある。
その気持ちはエイカも分からないわけではない。
しかし・・・。

エイカ:「イケルゾ隊長からの命令なの・・・。軍では上からの命令が絶対なのよ!二人とも、早く脱出しなさい!隙は私が作る!」

彼女は泣きながら、訴える。
軍では上からの命令が絶対なのだ。
言い終えると、彼女は矢を乱射した。
二人が逃げ出す隙を作るために。

ギゴー:「くっ!これでは、奴らが逃げてしまう!」

シルク:「安心なさい!所詮は乱射よ。下手に動かなければ当たらない!それに、彼らが居なくなることでこちらも東京を占領できるじゃない?」

言われてみればそうだ。
彼らが引くのであれば、すぐに東京を占拠できる。
同じくその通信を聞いていたガグー達もその意見に賛成した。
おかげでケイト達はすんなり脱出する事が出来た。

ゴウ:「ケイト、エイカ・・・俺は悔しい。自分にもっと力があれば!」

ケイト:「俺だって、そうだ。もっと、もっと、もっと・・・・」

このような事態になったのは自分達のせいだと考えるケイト達。
そのことはエイカも考えていた。
自分に力があれば・・・。
3人はそのまま長野基地へと向かった。
自分達が出来る事は、今はそれしかなかったのだから。



END



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