コズミック・イラ70。
血のバレンタインの悲劇によって地球、プラント間の緊張は一気に本格的武力衝突へと発展した。
誰もが疑わなかった数で勝る地球軍の勝利。
が、当初の予測は大きく裏切られ戦局は疲弊したまますでに、数ヶ月が過ぎようとしていた。






「エピソード1 福岡襲撃



コズミック・イラ70。
血のバレンタインの悲劇により、地球連邦とプラントは戦争に発展した。
その年の11月。
二人の物語が大きく動き出す。

キョウコ:「もう!遅すぎるわ!」

ここで、怒りの言葉を呟いている彼女の名はキョウコ・テライ。
日本の字を借りて言えば、寺井響子。
彼女のはどこにでもいるような女子大学生。

ショウキ:「わりぃ!ごめんな」

キョウコに謝っている彼の名はショウキ・ホリイ。
日本の字を借りて言えば、堀井勝輝。
彼は軍人であるため、今日のデートに遅れた。

ショウキ:「本当にごめん!訓練が長引いて遅れたんだ」

キョウコ:「まだここは戦争にはなっていないのに・・・なんで訓練なんかあるのよ!」

ここは日本の福岡県。
彼女の言うとおり、まだ日本は戦場になっていない。
だが、正確には今までは、というべきかもしれない。
日本が戦場になる時間は刻一刻と近づいていたのである。

ショウキ:「仕方ないだろう?地球とプラントは戦争をしているんだからな」

少し重たげな口調で彼はそう言った。
戦争が起きて半年過ぎ。
世界の至る所が戦場になっている。
キョウコが話そうとしたとき、ショウキの携帯電話に電話が入った。
彼はすぐに電話に出た。

ショウキ:「ショウキです。はい・・・・・・・な!?」

いきなり大きい声を出した彼に周囲の人々は彼を一斉に見る。
間近にいたキョウコは一番の驚いていた。
さらに周囲の人々から見られたため、恥ずかしいという思いがいっぱいになった。
しかし、ショウキはそんな気持ちを察せずに問答無用で話をする。
その様子を見た人々も先程までと同じく何事もなかったかのように、歩き出す。
やがて、電話は終了し彼はキョウコに事情を話した。

ショウキ:「本当にごめん。上官に呼ばれたから、俺行かなきゃいけないんだ」

それだけ言うと、ショウキは走っていった。
彼は焦っていた。
上官の言葉が本当なら、福岡は・・・。
その思いが頭を駆け巡る。
だが、彼の走りも無意味となろうとしていた。

バルド:「こんな地球の極東を襲えなど上は何を考えているのだ?ま、いいか。お前ら!攻撃を開始する!」

男はそう言って、降下体制に入った。
1分後、彼らは降下した。
福岡の都市に。

キョウコ:「え?何よ!あれは!」

ショウキ:「まさか、MS?」

別々の場所で二人は降下してきたMSに見とれていた。
いや、見とれていたのは二人だけではない。
空を見上げた者は誰もが、見上げたままだった。

バルド:「そんなにMSが珍しいのか。だったら思い知らせてやるよ!」

コックピットの中でバルドは叫びながら、マシンガンを都市部に放った。
ビルに、道路に弾丸が降り注ぐ。
突然の攻撃に逃げ惑う人々の中、キョウコは動かなかった。
正確には動けないというべきだろう。
彼女にはMSの攻撃光景の衝撃が強すぎたのだろうか?
そんなキョウコの様子もお構いなく攻撃をするMSとさらに逃げ惑う人々。
気づいたときには、周囲に生きている人は殆ど残っていなかった。
その光景に思わず吐きそうになるキョウコ。
テレビのドラマなどで見たことあるとはいえ、実際のレベルと全く違うのだ。

キョウコ:『酷い・・・』

彼女は周りを見て、その言葉しか考えられなくなっていた。
あまりに酷すぎるのだ。

バルド:「そろそろか・・・よし、予定通り俺は軍へと攻撃を行う」

バルドは地域から離れた。
別の場所を襲うために。
残ったMS3機はただ、空に浮いていた。
バルドからの命令で軍の部隊を全滅させた後、この場所を本格的に襲うとミーティングで聞いているからだ。

レン:「こいつら!なんで街を!」

この男はショウキの上官。
ショウキが来るのを待てずに、出撃したと言う訳である。
敵は待ってくれないのだから。
しかし、レン自身勝てないような気がしていた。
自分達が搭乗しているのは、戦闘機。
自分が乗っているのは戦闘機ではなく、MAだ。
味方全員合わせて、21機は居るが敵はMS。
正直言えば、逃げたい。
それがレンの本音。

レン:「ここでやらなければ、もっと被害がでる!各機、まずはMS1機に対して集中砲火を行う!チームAとBは俺と共に1機に対し集中攻撃、チームCとチームDはそれぞれMSをかく乱せよ!各機、健闘を祈る。散開!」

日本軍兵士一同:「了解!」

このレンの判断が正しいかどうかなんて、分からない。
でも、上官の命令。
さらにレンは部下からの信頼も厚い。
逆らうなどと考える者など誰一人として居なかった。

所属不明兵1:「こいつら・・・力押しでなんとかなるだろう!」

MSに乗っている兵達は油断していた。
MSとMAの差は歴然としているのだ。
所属不明兵はマシンガンで力押しで攻撃する事を決意する。
何故か、3人ともだ。
しかしその考えは甘かった。

レン:「各機、攻撃中止!フォーメーションG!」

フォーメーションGは全チームに発令された。
この意は全員が回避に集中し、銃弾を無くなったところで攻撃を行うという至って普通の戦法。
フォーメーションにするのもどうかと思われがちだが、意外と戦場では役立つらしい。

所属不明兵2:「何故当たらん?所詮MAだぞ!」

言っている間にまず1機のジンのマシンガンの銃弾が切れた。
そこに日本兵の一斉攻撃。
いくら装甲が高くても、集中砲火を食らえばひとたまりもない。
1機が破れ、また1機、また1機と全てのジンの撃墜に成功する。

キョウコ:『MS相手にあそこまでやるなんて・・・』

などと考えていると、彼女は周辺に地下への通路があることに気づく。
マンホールにしては妙だし、地下鉄の通路にしてはおかしすぎる。
地下への通路が何故、こんなところにあるか分からない。
好奇心を頼りにキョウコは地下へと続く、階段を下りていく。
不思議と壁にひび割れなどは、全くなかった。
やがて、最深部へたどり着く。
彼女はそこで目にした。
立っている巨大人型兵器を。
キョウコはMSだと確信する。
だが、MSにしては慎重が低い。
しかもジンなどとは全く、外見が違っていた。
そのMSに見とれていると、突然地震が起こり、彼女は思い出す。
先程のリーダー機が戻ってきたのではないかと?

キョウコ:「これ以上、この街を壊させしない!」

彼女はそう、叫んでMSのコックピットへの階段を上がっていく。
もう、目の前で人が死んでいく様を見るのは嫌だから。
やがて、キョウコはコックピットに入り込む。
一応MSに登録されているマニュアルを見ていくキョウコ。
自分はナチュラルだが、記憶力には自信がある。
スイッチやレバー、動かし方を覚えると彼女は上に向かって銃を構える。
一般人である彼女がハッチを開ける方法なんて知らないのだ。
彼女はただ、この街を守るという思い出いっぱいだった。



END



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