ヘリオポリス。
それはオーブの中立コロニーだった。
しかし、コロニーは最悪の結果を迎えてしまう。
崩壊という事態へと。

ナタル:「応答しろ!X−105ストライク!」

ストライクに通信を試みるナタル。
だが、当のキラは通信に答えられる状態ではなかった。
コロニーの崩壊という見てはいけないものを見てしまったのだからだ。
精神的なダメージが大きすぎる。
アークエンジェルの方では、キラの心配をしていたが、一方でマサカズは別の行動を取っていた。

マサカズ:「ウズミ様、カガリはシェルターにて目撃した者を発見。ヘリオポリスは地球軍とザフト軍の戦闘により、ヘリオポリスは・・・崩壊。これから、民間人を救助します。このような事態になり申し訳ありませんでした」

そう言って、彼は携帯での通信を終えた。
すぐにアークエンジェルへと連絡し、オーブ軍特殊01部隊の母艦であるフツノミタマの方へと連絡した。
今から、民間人の救助を行う、と。
彼は通信後、アークエンジェルと別れ、ヘリオポリス宙域へと向かった。





「PHASE−4 史上最高のお宝 Aパート」



アークエンジェルがヘリオポリス宙域を脱出して数時間後の事である。
ロンド・ギナ・サハクは一人で崩壊したヘリオポリスの秘密工場区に居た。
本来破棄されるはずだった、極秘開発機体のアストレイを取りに来たのである。
とりあえずP01に乗れた、までは良かった。
が、崩壊の影響で脱出するには武器を使わざるをえない状態に追い込まれたのである。
ギナは偶然にもその場にあったデュエル専用のバズーカをP01の右手を持ち、脱出路を切り開いた。

ギナ:「む、右手がバーストを起こしたか!」

アクシデントがさらに襲った。
まだ、P01は完全に調整されていないこともあり、右手がバーストを起こしたのだ。
やむなく、右腕を強制排除しギナは脱出した。
本音を言えば、P01の左手と他のアストレイも手に入れたかった。
しかし、そんなことをしている時間はない。
このまま、ここに居れば自分も被害をくらいかねないからだ。
彼はそのまま母艦へと向かった。
ギナが丁度、脱出した頃。
ジャンク屋はヘリオポリス宙域に訪れていた。

ロウ:「こりゃ、ひでぇな」

ジャンク屋のロウはヘリオポリスの様子を見てそう言った。
あまりにも酷いのだ。
ヘリオポリスが崩壊するほどの戦闘が行われた証なのだから。
そんな中、彼らは1機のMSを確認する。

ロウ:「なんだこのMSは?」

自分達の知っているMSじゃない。
敵か?と思ったロウ達だが、相手MSから通信が発せられる。 それに応じ、通信越しの相手を見てほっとする。
通信の相手はマサカズだったからだ。
マサカズはジャンク屋を認めているマルキオ導師の知り合いであり、自分たちとも面識がある人間だ。
ロウ達は彼にヘリオポリスの事を聞こうとし、通信越しに話しかける。

プロフェッサー:「マサカズ、こんなところで何が起きたの?」

マサカズ:「事情は後で話す。今は民間人の救助を手伝ってくれ」

彼は焦っていた。
助けられる命を無視することは出来ない。
いくら、シェルターにいても、脱出できない可能性だって有りえる。
だが一人では限界があり、戦艦も近くには居なかった。
フツノミタマはまだ数キロ先、アークエンジェルなどの戦艦はもうこの宙域には居ない。
このホームを除いて。

ロウ:「分かった!」

彼はあっさり了解した。
戦争に関係のない民間人を助けるのも仕事だからだ。
しかし彼の目は輝いていた。
ロウの本当の目的は別にあったからである。

イライジャ:「さすが、ハイエナどもだな。思ったより、対応が早い」

一方で、サーペントテールのイライジャと劾もこの宙域に訪れていた。
理由は、ある人物から受けた依頼を遂行するためだ。
ここから二手に分かれる。
劾はヘリオポリス内部へ、イライジャはジャンク屋の船を押さえにへと。
このとき、二人は気づかなかった。
レーダーにわずかな反応をあったことだ。
その反応がMS、後にゴールドフレームと呼ばれる機体がその宙域に居た事を。


ロウ:「ヘへへっへ。宝はこの先にある。俺の勘はそう告げているぜ!」

彼の本当の目的はお宝。
ヘリオポリスに来たのもお宝が目的なのだ。
ジャンク屋である以上、宝に目がない。
そういう者こそがジャンク屋に所属している。
なお、民間人の救助は一応おこなった後に今の作業を開始している。
ちなみにロウの搭乗している機体は作業用MA。
通称キメラと呼ばれるMAだ。
地球連合では、アークエンジェルにも搭載されているほどの作業用MA。
武装はバルカン程度しかないのだが、元々戦闘用ではないので、仕方の無い事と言える。
このキメラを使って工場区を掘り進む中、ロウ達はあるものを見つける。
発見したのは金色のMSの右腕。
それがPO1の脱出の際にやむを得ず、切り離した左腕という事はキサト達が知るはずも無かった。
この近くにボディもある。 そうと感じたロウはキメラのドリルを使って、堀まくる。
しかし、ここでアクシデントは発生した。
掘りすぎて足場が崩れたのだ。
落下の衝撃でキメラは動かないが、何とか、ロウは意識があった。
とりあえず、ロウは周りを確認するため、キメラを降りる。
明かりがないと周辺は殆ど見えないまでに暗かった。
彼は左手に付いている、腕時計くらいの大きさのライトで周辺を確かめる。
それはライトを付けて、すぐのことだった。

ロウ:「ははは・・・・ハチ!すぐリーアム達にこの場所のポイントを知らせろ!見つけたぜェ!!!お宝を」

彼は見つけた。
そこには青と赤の2体の新型MSが、埋もれていたのである。
この2体こそが後々重要なMSとなるアストレイの試作機。
彼は青い機体にブルーフレームと名づけると、自分もコックピットに入ると8を接続し、OSの確認を行う。
武装もチェックしていく中、ビームライフルの存在に気づく。
すげぇ!などと思っていると、プロフェッサーから通信が入った。
完全武装した傭兵がこちらに向かっているらしい。
その話を聞いて、ロウはブルーフレームを起動させる事を決める。
OSは完全に起動し、頭文字から“GUNDAM”という言葉が並ぶ。
やがてブルーフレームは起き上がる。
傭兵相手に勝ち目が無い。
普通はそう判断する。
ナチュラルならば、なおさらだと言える。
だが、ロウ・ギュールは普通のナチュラルではない。
ナチュラルとは面白い考え方をする。
リーアムはコーディネーターだが、彼の観察を日課にしていた。
面白い考え方をナチュラルはするのだと。

ロウ:「二人はもう1機の運び出しを頼むぜ!」

そう外部にも聞こえるように伝えると、こちらへと向かっているMAを撃退するために、通路へと向かった。


通路を駆けていく、メビウス。
そのメビウスには蛇のマークがあった。
蛇のマークはサーペントテールを意味するマークだ。
さらに数字は1。
これはパイロットが叢雲劾ということを表している。
だが、そんなことを知らないロウは奇襲をかけた。
それは丁度、劾がイライジャとの通信を終えた頃に起きた。

ロウ:「先手必勝だぁ!!!」

何の迷いもなく、ロウはビームライフルからビームを放つ。
それは一瞬で空気をイオン化させた。
しかし、次の瞬間ロウは驚いた。
敵のメビウスは攻撃をかわし、バルカンを放ってきたのだ。
まさか、ビームが避けられると思ってなかったロウは上の通路へと退いた。
ビームは粒子にエネルギーを与え加速したモノで光に近い速度を持っている。
そのため、物理的には発射された後のビームを回避するのは無理に等しい。
劾がビームをかわせたのは、少なくともセンサーのおかげではない。
まず、センサーを使おうにもコロニーの残骸が漂っているため、ある意味デブリベルトのような状態だ。
この状態ではセンサーは使い物にならない。
彼がビームをかわせたのは長年の戦闘経験から養われた洞察力のたまものなのである。

ロウ:『さぁ、ここからどうする?傭兵さん』

劾が通路を抜けた先でジャンク屋は両手をあげていた。
これは降伏宣言とも呼べる状態だ。
いくら傭兵の劾でも、この状態で敵を撃つつもりはなかった。
ロウの作戦など知るはずのない、劾は一端距離を置いた。
距離にして30m前後だ。
これならば、ジャンク屋の男がMSのコックピットに戻るよりも、早く攻撃出来る。
劾がハッチを開けた時、ロウは叫んだ。

ロウ:「今だハチ!!」

その瞬間、MSは動いた。
正確に言えば、ビームライフルを持っている右腕である。
MSが動いた事を目にした劾は、メビウスの上部装甲を蹴り上げた。
蹴り上げた際のジャンプ力、ビームの風圧によって劾は体を流される。
結局は間一髪、避ける事が出来たのである。
メビウスの方は爆発して、激しい爆風が起きていた。
劾は恐ろしいほどの運動神経で、すぐに体のバランスを取り戻した。
そして、残骸を蹴っていき、ロウの両腕の手首を掴んだ。

劾:「中々良い作戦だったな」

ロウ:「何が目的だ!」

劾:「このMSを破壊する」

静かに答えた後、劾はロウを後方へと投げ飛ばした。
次にロウを投げ飛ばした反作用で、前方へと進む。
そして、コックピットへと入った。
一方のロウは投げ飛ばされたせいで頭を抑えながら、「あっ、てめぇ!」などと叫ぶ。

劾:「俺達の任務はコイツの破壊。および、コイツを見てしまった者を消す事だ・・・・・・」

ロウ:「なんだって!ソイツは俺んだ。破壊するなんてヤツにはジャンク屋の意地にかけても渡せねェ!!もったいなくてな!!」

こう話している時、劾はあること気づいた。
自分はこの男に好感を持っていることだ。
手に入れたお宝のために命を張る、まさにジャンク屋に呼ぶのに相応しい。
今までも、この男は真っ直ぐに生きてきたのだろう。
彼はスーツのヘルメットをぬぎ、男に素顔をさらした。

劾:「・・・なるほど面白い考えだ。しかし、この状況ではどうすることもできまい?」

ロウ:「まだ分からないぜ。俺は宇宙一悪運が強いんだ。今日だってこんなお宝を見つけたんだからな」

劾:「運だけでは、戦場では生き残れない・・・・・・」

彼は失望していた。
このジャンク屋が悪運の持ち主ならば、この状況を打破したかもしれないというわずかな期待をかけていた自分に。
劾は依頼どおりピストルに引き金の力を込めた。
そして、放とうとした時。
思わぬことが起きた。
突如、劾の後ろからビビビビビ、と鳴る。
振り返ると、イライジャの顔が映し出されていた。

イライジャ:「大変だ劾!!依頼主がいきなり攻撃してきやがった。こっちは長く持ちそうにない!」

劾:「その周辺に他にザフトなどが居るか?」

イライジャ:「いや、ザフトや地球軍は居ないが・・・ジャンク屋の話だと、この周辺の宙域ににマサカズ・ライモートが居るらしい」

劾はマサカズの名に聞き覚えがあった。
奴とは幾度となく会ってきたことがある。
敵としても、味方としても。
だが、周辺では遠くに居る可能性もあり、それでは彼が来るのに時間は掛かる。
ならば、自分が行くしかなさそうだ。
それにイライジャを殺すわけにもいかないし、依頼者の裏切りは許さない。

ロウ:「どうやらアンタらも雇い主にとっては『コイツを見てしまった人間』らしいな」

勝ち誇ったような顔をロウはしていた。
まさか、コイツの悪運が?
そんなことはありえない。
すぐにイライジャのところへと行かなければならない。
だが、この男はどうする?
引き金に力を込めてこの男を殺しても、大したタイムロスでしかない。
だが、依頼主が裏切ったのであれば、アストレイの秘密を知った者を消すという依頼も消えた事を示している。
などと考えた挙句、劾は目の前に居る男を撃つことを止めた。

劾:「(本当に悪運の強い奴だ)コイツを借りるぞ!」

彼はピストルをしまうと、ジャンク屋の持ち物と思われるパソコンのようなものをコックピットからはずした。
そして、ロウにそれを投げつける。
ついにはコックピットも閉める。
外ではロウが叫んでいた。

ロウ:「傷つけたら弁償してもらうからな!!!」

劾はロウを無視して、システムのチェックを始めた。
エネルギーはほぼ満タン、システムにも問題はない。
しかし、OSは不完全だった。
動かすのがナチュラル前提のOSのせいだろう。
すぐさま、劾はコーディネーターの反射速度に合わせて書き換えていく。
その書き換えるスピードはキラ程ではないが、普通のコーディネーターを上回るスピードであるのは確かだろう。
数十秒でOSの調整を終えた劾は、イライジャの待つ外へとMSを飛ばす。
青いMSが去って数分後、すぐにロウはキサトやリーアム達と合流した。

リーアム:「・・・で“ホーム(母艦)”のプロフェッサーから連絡がありました。どうやらその傭兵は敵に襲われた『仲間』を助けに行ったようです」

キサト:「『敵』って・・・・・・?」

ロウ:「雇い主の事さ」

彼らは残った赤いMSにちょっとした修理をしながら話していた。
勿論、修理といっても小さな修理だ。

リーアム:「ところでコレを起動させてどうするつもりですか?ロウ・・・」

ロウ:「傭兵を助けるのさ」

この発言にはリーアムもキサトも驚いた。
何故、傭兵を助けるのか?
気づけばロウはコックピットに入っている。

ロウ:「あいつと俺らはすでに一蓮托生なんだよ・・・それに俺はな、あいつらに貸しているお宝を・・・・・・傷つけられたくないからな!!!」

リーアム:「あなたはパイロットではないんですよ!!戦うなんて無理です!!!」

彼の言う事は確かだ。
ナチュラルがMSを動かすなど不可能だ。
第一、彼は一度もMSを動かした事すらないのだ。

ロウ:「俺はメカの専門家“ジャンク屋”さ・・・・・・それに8も居るんだ。いざとなったらコイツに操作を任せる。・・・だからメカに関することならこの俺に不可能な事は・・・ないぜっ!!!」

彼は外と向かった。
傭兵を助けるために。
プロフェッサーを助けるために。
何より、お宝に傷を付けさせないために。





END
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