コズミック・イラ70。
血のバレンタインの悲劇によって地球、プラント間の緊張は一気に本格的武力衝突へと発展した。
誰もが疑わなかった数で勝る地球軍の勝利。
が、当初の予測は大きく裏切られ戦局は疲弊したまますでに、11ヶ月が過ぎようとしていた。
「PHASE−1 偽りの平和 Aパート」
ラスティ:「こんなことをして俺達はいいのだろうか?」
彼は仲間に疑問をぶつける。
中立のヘリオポリスに攻撃を仕掛けるというのは何か罪が感じられるのだ。
確かに人を殺す事も罪なのだが、ラスティにとって現状がとても罪に重く感じられた。
今回は市民を巻き込みかねない作戦になるかもしれないのだ。
アスラン:「中立だと言っておきながら、連合に味方するオーブが悪いんだ」
彼の言う事はもっともだ。
中立とは平等にしなければならない。
しかし、ヘリオポリスがやっていることは連合にひいきしているとしか思えない。
でなければ中立へ攻撃を仕掛けろ、と命令するクルーゼ隊長ではないとアスランなりの考えた結論である。
イザーク:「そろそろ、中につくぞ!」
その言葉で皆、話をしなくなった。
中に入ったら自分達のやることは決まっているのだから。
皆、黙っている中アスランは別のことを考えていた。
かつて、コペルニクスに住んでいたときに別れた親友の事を。
あいつは今どこにいるんだと。
そして、彼らは作戦に入った。
全てはザフトのためにと・・・。
ヘリオポリス。
そこは中立のコロニー。
だが、ザフトにとって中立ではなかった。
クルーゼ隊の隊長であるラウ・ル・クルーゼは中立ではない確証を持っていた。
それはヘリオポリスで、地球軍の新型機動兵器が建造されているということ。
情報屋ケナフ・ルーキニからの情報を彼は持っていたのだから。
しかし、ケナフはザフトへ情報を渡した裏ではオーブへも情報を渡していた。
そのためオーブから依頼を受けたサーペントテール、話を聞きつけたオーブ軍特殊01部隊、事情を知っているロンド・ギナ・サハクやサキートを始めとするサハク家も動いていた。
このヘリオポリスへと。
一番先にここへ訪れたのはオーブ軍特殊01部隊のマサカズという男だった。
ザフトより、数分早くにここへ来たのである。
やがて、彼はヘリオポリス外から、隠れた場所へ入っていく。
そこはマサカズが極秘にレミフォン達に頼んでいたものが作られていた場所。
通路も狭くなり、メビウスを降りて、彼は歩く。
そして、細い道の先にある物を彼は見た。
マサカズ:「これが新型MSか・・・」
そこに存在していた物は5機のMSだった。
ザフトのジンではなく、より人型に近いタイプのMSが。
彼が見惚れていたのはグレーのMS。
見惚れていたが、通路から足音がしたことに気づき、銃を手に持つ。
サキート:「そこまでだ!マサカズ・ライモート!」
マサカズ:「お前は!サキート・マ・コウスか!?」
そこに居た男はサキートだった。
彼ははサハク家に従う者であり、サハク家関係者だ。
アストレイシリーズ、G兵器のMS建造についても知っていた男である。
二人は互いに銃を構えて、にらみ合っていた。
いつどちらが銃を放っても、おかしくない状況である。
そんな中、銃ではなく、先に口を開いたのはサキートであった。
サキート:「こんなところで新たなMSが建造されていたとは・・・貴様!どうやって、情報を!」
彼は怒っていた。
サハク家の関係者は口を割らない。
となれば、情報が漏れたとしかありえない。
相手は変装もある程度の声も変えれる(女性の声は不可能ではあるが)ことも出来る、マサカズ・ライモート。
エリカを騙せても可笑しくはない人物なのだ。
マサカズ:「そんなこと、口を割るわけないだろう?」
サキート:「そうか・・・貴様はてっきり、ウズミ・ナラ・アスハにべったり従っていると思っていたがな」
これがサキートにとっての一番の疑問だった。
目の前に居るマサカズはウズミのために動く男といって過言ではない。
彼がウズミの言葉に服従しているのはオーブ軍内でも有名な話。
サキートは何故、裏切るようなことをしたのかこれが今の疑問だった。
マサカズ:「今の時代はMSが必要だ。特別に貰ったジンだけではオーブを守れない。そこらへんはお前達と同じ考えだ。それに、最近になって日本でも新型MSが開発されたと聞いているからな」
彼がウズミに隠してまで、MS建造を黙っていた理由。
それはオーブを守るため。
オーブの理念を満たすにはどうしても力が要る。
サハク家と同じ考えに至ったマサカズは行動を起こしたというわけである。
サキート:「事情は分かった。しかしMSは全て頂こう。でなければ、ウズミに密告するぞ?それにお前がこんなことをしたならウズミは代表失格だ」
お前が言えることか!とマサカズが言おうとしたとき、巨大な爆音と共に彼らの居た場所が揺れる。
10秒程度で地震は収まり、マサカズは自分だけが持つ特別な携帯で仲間であるサユリに連絡を取る。
マサカズ:「何があった!?」
すると返ってきた返事は、ザフト軍がヘリオポリスへ攻撃を仕掛けたということ。
さらに今、マサカズ達の居る場所へ偶然かもしれないが、ザフトのMSが向かっているとも。
通信を聞いたマサカズに迷いはなかった。
自分はまだ死ぬわけにはいかない。
そう考えた彼は、近くにあったMSに搭乗を試みようとする。
サキート:「貴様!どこへ行く気だ!」
彼の行動に驚き、サキートは銃を3発ほど放つ。
が、彼はサキートより長い実戦経験と訓練経験により、養われた反射神経で全てかわした。
銃弾を避けた後、MSのハッチを開けたマサカズはMSに乗り込んだ。
次に彼はOSを立ち上げ、外にも声が聞こえるようにスイッチを押して、叫んだ。
マサカズ:「じゃあ、お前はこんなところで死ぬ気か!ザフトが攻撃を仕掛けているんだぞ!?」
その言葉に、自分もまだ死ぬわけにはいかないと考えたサキートも近くにあったMSに搭乗するのであった。
二人は、コックピットの中で色々と驚いた。
彼らは専用のジンを持っている。
これはプラントからの友好の証として極秘に渡された物。
しかし、オーブは中立であるため、サキートは練習で乗ったくらいだ。
一方のマサカズは実戦で使った事もあるが、数十時間前に大破している。
今乗っているMSは複雑で変わったスイッチ等もジンと比べると数知れず。
それでも、やるしかない。
二人は似たようなことを考え、動き出した。
横たわっていた2機のMSを立たせると同時に、機動スイッチの近くにあった特殊なスイッチを入れて。
ザフト兵:「なんだ、あれは?」
ジンに乗っているザフト兵士が驚くのは無理もなかった。
まさか、中にあると思った新型MSが自分達の居た場所から出てきたのだ。
出世のチャンスと考えたザフト兵は、マサカズ達に向かって攻撃を開始した。
ザフト兵:「おらおら!いくら新型といえど、これだけの攻撃はかわせ・・・」
彼らザフト兵達の考えは、甘かった。
マサカズとサキートはオーブ軍の中でも、トップクラスの実力を持っているのだ。
二人はビームサーベルを出して、攻撃をマシンガンをかわしながらジンへ向かう。
驚異的な素早さで驚くザフト兵をよそにコックピットを切り裂く。
ジンが爆発し、その中から現れる2機のMS。
戦いはすぐに終わった。
マサカズ:「この様子だとヘリオポリスが・・・」
そこに仲間であるサユリから通信が入る。
地上に居るレミフォンを経由し、情報が入ってきたことを伝えられた。
ヘリオポリスにカガリが居るということを。。
マサカズ:「(ちっ!コロニーにはカガリが居たのか!)分かった。キールをよこしてくれ。少しくらいメビウスがあっただろう。装備はMモードでいい。合流場所はヘリオポリス内部だ!」
ウズミの娘であるカガリがヘリオポリスに居る事を知った彼は、サキートを無視して、中へ向かった。
中立を襲うようなザフトだったら市民に危害を加えかねない。
だとしたらカガリが危ない。
そう考えた結論だった。
彼の行動を見たサキートはマサカズを追いかけようとしたが、そこへ自分の通信機に通信が入る。
ギナ:「サキート、すぐにこちらへ来てもらいたい。最重要だ」
相手はロンド・ギナ・サハクだった。
通信の内容はすぐに帰投しろとのこと。
その通信を受けたサキートは彼を追わずに、ギナの居る戦艦へ向かうのだった。
*
爆発が起きる前。
地球軍の新型艦、アークエンジェルを前にして艦長達は話していた。
そこにはGに乗る事を選ばれた、パイロットとの挨拶なども行われていたのである。
だが突然、そこに爆風が襲う。
爆風にその場に居合わせたナタル・バジルールやアーノルド・ノイマンは吹き飛ばされた。
この爆発によって、アークエンジェル艦長を始めとする上官、パイロットの者達は死亡した。
ザフトの設置した爆弾の爆発によって。
ゲイル:「え!?うわぁぁぁぁぁ!!!」
爆発が起きて、すぐのことだった。
ヘリオポリスの外の入り口周辺ではメビウスの部隊が戦闘を行っていた。
しかし、MAとMSの差は1:3。
ゲイルというメビウスに乗っていた男はすぐさま、討たれた。
ムウは1機のジンを撃退するも、残りを取り逃がしてしまった。
そして、残りの機体はヘリオポリスへの侵入を許してしまう。
MAミストラルが応戦するが、全く歯が立たない。
それに敵が2隻。
ナスカ級とローラシア級が相手だ。
これじゃあ、手強いな。
そう思いながらも、ムウは敵艦へ向かった。
無理でも、やるだけやる。
それになんとなくだが、1隻から、知っている男が居るように感じていた。
ラウ・ル・クルーゼという男が居るような。
*
これは外で戦闘の起きる前の事である。
トール:「こんなとこに居たのかよ。カトウ教授がお前のこと探してたぜ」
ミリアリア:「見かけたら、すぐ呼び戻して来いって」
キラ:「またぁ〜?昨日渡されたやつだって、まだ終わってないのに」
彼らはガレッジの学生。
中立コロニーのヘリオポリスを選んだのは、ここが戦闘に巻き込まれることはないと思ったからだ。
彼らは年齢的に16歳前後。
特に制服があるわけではなく、私服が許されている。
キラは車の運転が出来ると言う事もあり、すぐに教授のところへと向かう事が出来た。
しかし、部屋に来たのはいいが教授はおらず、お客とサイ・アーガイル、カズイ・バスカークが居るくらいだ。
すぐにカトウ教授に頼まれた事をしていくキラ。
だが、事件は起きた。
突然、ガレッジが揺れたのである。
避難階段に向かうキラ達。
同じく避難していた人にサイは何があったかのかをたずねた。
サイ:「何があったんですか?」
避難者:「ザフトに攻撃されてるんだ!コロニーの中にMSが入って来てるんだよ!君たちも早く!」
揺れた理由はザフトの攻撃であると言う事が分かった。
避難をしようと急ぐミリアリア達。
だが、カトウ教授に会いに来た客はどこかへと走っていった。
キラ:「あ、君!」
カトウ教授に呼ばれていたお客が、避難の道とは違う方向へ走っていくではないか。
呼びかけるトールに後で必ず行くように伝え、キラはその子を追いかける。
放っておく訳にはいかないのだ。
追いかける中、その客に追いつき、避難するように言う。
その際に爆風が起きて、その客の帽子が飛ぶ。
キラ:「お・・・女の子?」
このとき始めて気づいた。
その子が女の子であることを。
カガリ:「なんだと思ってたんだ?今まで」
キラ:「いや、だって・・・」
再び爆風が起きる。
その子は確かめねばならんことがあると言って、キラに戻るように言う。
しかし、爆風のせいでもう戻れない。
キラはとっさに女の子を連れて、道あるところへ走る。
女の子は離なせ!この馬鹿!などと大声を上げるが、無視して進むキラ。
カガリ:「こんなことになって私は・・・・」
キラ:「大丈夫!まだ、工場区に行けば避難シェルターがある!」
彼は女の子に言葉をかける。
避難シェルターに行けば、助かると。
しばらく二人は走った。
そして、出口へたどり着く。
工場区はもう戦場と化していた。
横たわる2機のMSをよそに。
キラ:「これって・・・」
カガリ:「やっぱり・・・地球軍の新型起動兵器・・・・・・お父様の裏切り者!!!」
横で泣き崩れる女の子。
キラはこの時、何故お父様の裏切り者と言っているか分からなかった。
しばらく戦場を眺めていると、地球軍の兵士が銃を向けられたことに気がつく。
急いでその子の手を握り、走る。
お陰で何とか二人に銃弾は当たらなかった。
あと少し遅かったら銃弾に当たっていただろう。
キラ:「ほら!走って」
*
ほぼ同時期。
地球軍の新型起動兵器の3機はもう奪取されていた。
イザーク:「ほぅ。凄いものだな。これは。どうだディアッカ?」
ディアッカ:「OK。全く、つつけば巣穴から出てくるってね。アップデータ起動。再構築・・・・グゥレイト!動ける!」
イザーク:「ニコル」
ニコル:「待ってください。もう少し・・・」
彼らはGAT−X102デュエルをイザーク・ジュール、GAT−X103バスターをディアッカ・エルスマン、GAT−X207ブリッツをニコル・アマルフィ、それぞれ新型MSを奪取した。
イザーク:「先にこの3機をクルーゼ隊長にお渡しする。それまで傷つけるなよ」
3人は先に母艦へと戻った。
本来の予定であれば、アスラン・ザラとラスティ・マッケンジーが後の2機を奪って作戦は終了するはずだった。
しかし、運命なのか必然か。
ザフトの予定は変わろうとしていた。
一方のヘリオポリスの外では、マサカズからの連絡を受けたキールが、発進準備をしていた。
彼女、カガリの確保が最優先だが、市民の安全も確保しなければならない。
キール:「キール・ガッツウィング、メビウス出るぜェ!」
彼は発進した。
内部では戦闘が起きている。
そのため急がなければならなかった。
アデス:「クルーゼ隊長!あれは!」
クルーゼ:「ほう。あれはオーブ軍、しかも特殊部隊のメビウスだな。放っておくべきだな」
ザフトは彼を見逃した。
これは彼にとって、大変都合が良かった。
*
キラと女の子は何とか、シェルターのところへ来ていた。
ただし、スペースが開いてないらしい。
キラは必死に説得した。
その結果、女の子だけでも、入れてもらえることになった。
そう聞いた、彼は女の子をエレベーターへと押し込む。
カガリ:「おい、お前!」
キラ:「僕はもう一つのシェルターへ行くから、大丈夫!」
エレベーターは下へと向かった。
それを確認すると、キラはもう一つのシェルターへと走る。
走る際、キラは下を見た。
先程、自分に向かって発砲した女性が戦っていた。
すると、女性の気づかないところで、敵兵が女性を撃とうとしていたのだ。
キラ:「危ない!後ろ!」
思わずキラは、女性に注意した。
どうしてかは、キラ自身にもよく分からない。
女性はすぐに後ろへ向き、銃を放つ。
そうすることで、危機を回避し、敵兵を撃ったのである。
マリュー:「来い!」
彼女は大声で、キラに向かって叫んだ。
キラは左ブロックのシェルターへ行くと言った。
だが、相手の女性から返ってきた答えはキラにとって、残酷な知らせだった。
マリュー:「あそこはもうドアしかない!」
彼女の話を聞いたキラは少し迷ったものの飛び降りた。
マリューはその光景に、驚愕する。
1メートルならともかく、5メートルはあっただろう。
キラはGの上に着地した。
とはいえ、ちょっとバランスを崩したが。
ラスティ:「うっ!?」
アスランの横で彼は討たれた。
顔というよりは、脳を撃たれ、即死だ。
だが、アスランからすれば、ラスティが死んだ事には変わりない。
彼は叫び声を上げながら、銃を撃ちつつ、横へと走った。
女性は、仲間を撃たれたことに気づき、応戦しようとするが、敵の方が撃つのは、早かった。
女性は左肩を撃たれたのだ。
キラはその様子を見て助けようと、アスランはマシンガンの弾がなくなり、ナイフでとどめを刺そうとホバーを使って、Gの上へと上がる。
二人は偶然にも視線が合った。
いや、合ってしまったのだ。
キラ:「アスラン?」
アスラン:「キラ?」
二人は思わず、呟いた。
それが互いに聞こえたのかは分からない。
視線が合ってすぐに爆発が起きる。
まるで、何かがあるかのように。
キラの横でマリューは右手で、目の前のザフト兵に対し銃を向ける。
弾は入っていない。
だが、アスランは後ろへと退いた。
そんなことを知るはずも無いのだから。
マリューは左手でキラをコックピットへと押した。
キラをコックピットへと無理矢理入れた後、マリューも乗り込んだ。
アスランの方は、もう一つのGであるX303イージスへと乗った。
キラを乗せたG、X105ストライクは爆風の中を立ち上がる。
これが、キラとアスランの後の運命を変えることになろうとは、二人も思っていなかった・・・。
END
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