サキート:「さて、奴は来るかな?」

オレンド:「どういうメールを送ったんだ?」

サキート:「決まっているだろう?オレンド・ギフを監禁している。返して欲しければ、このポイント(場所)へ来いとな」

オレンド:「そうか・・・奴は来ないと思うがな(マサカズ、来るなよ)」

来ないように願うオレンド。
だが、数十分後。
その願いは藻屑へと消えた。

マサカズ:「サキート・マ・コウス。言われたとおり、来たぞ」



「PHASE−17 彷徨う意思 Bパート」





サキート:「愚かな奴だ。まさか、本当に来るとはな」

マサカズ:「来てほしかったから、呼んだのだろう?まずはオレンドの無事を確認させてもらおうか」

通信越しに会話をする二人。
やがて、オレンドの様子が通信越しで映った。
サキートのMSとは別のMSのコックピット内にオレンドは居た。
宇宙服にロープで縛りつけられているのが、すぐに分かった。
だが、少しの隙で助けられるとは思えなかった。
となれば、サキートのMSのエネルギーを切らせるという考えに至った。

マサカズ:「言っておくが手加減などしないぞ?」

サキート:「お前に手加減などしている余裕があるわけないだろ。何せ、遺伝子的には俺の方が優秀ということになるのだからな!」

その言葉を皮切りに戦いは始まった。
互いに接近し、ビームサーベルを肩から取り出すと打ち合い始める。
激しい打ち合いを繰り広げた後、距離を取り、マサカズはマウントしていたビームライフルを左手に持ち、攻撃を仕掛けた。

サキート:「当たらんな!」

数発のビームを避けるとサキートもビームライフルで攻撃を仕掛ける。
その攻撃をマサカズはこの場所の利点を利用しながら、かわしていく。
ここはいわゆるデブリ帯だった。
それを利用し、マサカズは浮遊する岩などを壁として使いながら、避けていく。

マサカズ:「この場所の特性を利用できないとは、それでも頭の良いサハク家の一人なのか!?」

後ろにあった岩を壁を蹴るようにすると、一気にマサカズのMSは加速した。
さらにブースターのスピードも加わる。
そのスピードでマサカズは右手に持っていたビームサーベルでサキートのMSを斬りにかかった。
しかし、いくらスピードが加わったと言っても、場所と距離の関係もあり、サキートは冷静にその攻撃をかわした。
この行動はマサカズの予測範囲内だった。
そのまま、駆け抜けると目の前にあった岩を切り裂いた。
そして、宙返りをするように岩を飛び越え、向きをサキートへと向ける。
すると、さらに岩をビームサーベルで切ったのち、小さくなった岩に対し、次々にパンチを繰り出した。

サキート:「何を愚かなことを・・・!?そういうことか!」

彼の作戦に気づくとサキートはMSを上昇させた。
ビームサーベルで大きい岩を切り裂き、小さい岩となる。
それをパンチという力で後ろから押し出せば、岩と言えど、ダメージを与えるのに十分な威力になるのである。
岩の攻撃をかわすことの出来たサキート。
しかし、避けることに夢中になっていたせいで、肝心のマサカズのMSを見失っていた。

サキート:「どこへ行った?」

場所が場所だけにどこからでも攻撃できる。
さらに言えば下手な動きは命取りになる。
そのことを理解しているからこそ、行動には慎重さが問われた。

マサカズ:「もらった!」

サキート:「なっ!?」

それは左方からの攻撃だった。
右手に持ったビームライフルから2発ほどビームが放たれる。
そのビームを避けるサキート。
しかし、避けるのは当たり前の行動であり、これもマサカズの予測範囲内だった。
彼のMSの中央部からは別の武装がむき出しとなっており、それをアンカーやフックのようにサキートのMSに掴まれたのである。

マサカズ:「冥土の土産ついでにこの武器の名称を教えてやる。この武器はEDH(エネルギードレインフック)と言って、掴んだ機体からエネルギーを奪うという武装だ」

サキート:「何だとっ!」

通信越しに言いながらもマサカズは攻撃の手を緩めなかった。
EDHでエネルギーを奪うスイッチを押しつつ、腰部にあるレールガンで攻撃準備を行っていたのである。
準備が出来ると、それを放った。

サキート:「うぐっ!?」

PS装甲を発動しているとはいえ、コックピット内の衝撃までは抑えられるわけではない。
レールガンを撃たれ、コックピットの中で揺れるサキート。
さらにエネルギーまで奪われては、状況は危なすぎだった。
何とかサキートは右手にビームライフルを持つと、それを放った。
ビームライフルを持ったのを見て、マサカズはすぐさま回避行動に移った。

マサカズ:「ここまでエネルギーを消費させれれば、十分だな。あとは奴を撃つか、エネルギー切れで終わる!」

サキート:「かくなる上は・・・」

次の作戦に入ろうとする両者。
しかし、そこへオープンチャンネルの通信が入った。

ルキーニ:「熱いねぇ、お二人さん」

相手は情報屋のケナフ・ルキーニだった。

マサカズ:「何の真似だ?こんな時に邪魔とは」

ケナフ:「まあ、そう言わなさんな。お前の仲間はこの位置のジンの残骸の中に居る。ほらほら、場所が分かったら、さっさ行くべきではないのかな?」

マサカズ:「(こいつ、サキートを助けるためか?だが、情報屋の奴がサキートを助けて何がある?だが、今は・・・)そうだな。では、仲間を助けさせてもらおうか」

彼の情報を信じ、マサカズは指定されたポイントへと向かった。
PX−05が周辺から居なくなると、彼はサキートにあることを伝えた。

ケナフ:「君も早く艦へ戻るべきではないかね?私の情報では君の帰りを彼らは待っているらしいが?」

サキート:「くっ。この屈辱、忘れんぞ!」

PS装甲のスイッチを切ると、サキートはある場所へと向かった。
そこへはバッテリーを置いていたのだ。
そのバッテリーを回収しなければ、艦へ帰れないほどサキートのMSはエネルギーを消費していたのである。
一方で、サキートがその場所にたどりつく頃、マサカズもオレンドを助けることに成功していた。

マサカズ:「全く、酒の飲みすぎでバーで寝てしまい、気づいたら、捕まっていたとは・・・経験豊富な軍人が聞いて呆れる。情けないな」

オレンド:「面目ない。だが、どうして助けに来た?それに来るにしても、一人で来る必要はなかったのではないか?もしかしてまだ、あの事を気にしているのか?」

マサカズ:「あの事・・・か。ああ、そうだろうな。だからこそ、お前を助けに来たのかもしれないな。それに一人で来たのはみんなを起こさないためさ。パイロットは寝れる時に寝る。それもまた仕事だ。ともかく、艦へ戻ろう」

エネルギー残量はギリギリだった。
それでようやく艦にたどり着けるといったところだろう。
何にしても、今は艦へ戻る。
それが現時点で優先すべきことだった。






END
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