サキート:「何を!?MSの居る方向へ向かって、艦を突っ込ませるだと!?ここの艦長は狂っているのか!!」
事細かに作戦を立案していたサキート。
しかし、目の前で起きていることは予想外の行動と言わざるをえなかった。
先程、サキートが声を上げたようにフツノミタマはMSの方へと逆に接近しているのである。
普通下方へ逃げるはずが、上方へ向かっているのだ。
だが、その予想外の行動にジン3機は回避できずに、艦の直撃を受ける。
直接的な攻撃ではなかったものの、衝撃は強かったようだ。
一瞬呆気にとられるサキートだが、艦から出てくる一筋の光を確認し、我に戻る。
光があると言うことは何かが出てきたということになるからだ。
キール:「貴様ら、こいつをくらえっ!」
「PHASE−14 野望を秘めて Bパート」
3機の固まっている所へミサイルを撃ち込むキール。
それに気づいた3機とも散開し、攻撃を回避する。
しかし、フツノミタマに放たれたそのミサイルをフツノミタマ自身がかわすことが出来なかった。
レミーナ:「キール!あなた、自分が何をしたか分かっているの!?」
キール:「仕方ないですよ!大体、外部装甲なんだから、これぐらい大丈夫でしょ?」
デオム:「お前達、喧嘩している場合ではないぞ!」
予想外の攻撃に驚きを見せた傭兵達とサキート。
しかし、時間が経つにつれ、落ち着きを取り戻していく。
敵は艦とMA1機。
4機でかかれば、それほど時間はかからない。
だが、サキートが本当に心配していた点はMSだ。
彼はあの艦にもう1機MSがあることを知っている。
サキート:「素早く、敵機を叩くぞ!2機はブリッジを!1機は俺と共にMAを潰しにかかる!」
そう指示するとサキートは再びジン1機へと指示を出す。
その後、狙いをMAへと向けた。
すぐさま、ビームライフルを構え、狙い撃つ。
キール:「でやぁ!」
その攻撃を先程の艦と同じくバレルロールで回避するキール。
ビームを回避し、安心するものの、それはつかの間の事だった。
どうせ回避されるだろうと思ったサキートは事前にジンへと指示していたのである。
指示の通りに傭兵は動き、メビウスに対し、後方からサーベルで切りにかかるジン。
だが、それが後方からの攻撃であったのがキールにとって救いだった。
キールはペダルを踏み込み、前方へ向けて、加速する。
前方は空いているので、逃げられるというわけだ。
途中でサキートからビームを撃たれる可能性もあったが、今はジンの攻撃を避けることが先決だった。
サユリ:「デオム、出撃するわ!」
デオム:「分かった!遅れた分は頼むぞ!」
二人のやり取りを聞いていたレミーナは手早く、格納庫ハッチを開かせた。
ハッチが開いたことを確認するとサユリは深呼吸する。
今乗っているMSは、本来マイが乗るMS。
壊すわけにもいかないし、討たれるわけにもいかなかった。
さらにここで死ねば、マサカズに会えない。
などのことを一度の深呼吸で考えながら、深呼吸を終える。
やがて、目の前へと集中する。
サユリ:「サユリ・ルミナーン!PX−02出ます!」
格納庫から暗闇広がる宇宙へと出るサユリ。
実戦はこれが初めてではないが、緊張はしてしまう。
だが、目の前に広がる光景のおかげで緊張している場合ではなかった。
ジン2機がこちらに迫っているのだ。
それを見たサユリは両肩にあるビームサーベルを引き抜いた。
サーベルを引き抜いたのち、ブースターで一気に加速する。
サユリ:「はあぁっ!」
急接近に唖然としていた傭兵の一人が事態に気づき、叫び声を上げる。
だが、それは気づくのが遅すぎた。
一筋の光がジンを真っ二つに切り落とす。
それはビームサーベルがジンを斬った証拠だった。
切り落とされたジンはすぐに爆発し、暗闇へと消えた。
傭兵2:「許さんぞぉ!」
仲間が死ぬのを間近で見ていた傭兵が声を上げる。
サーベルからマシンガンに持ち替え、攻撃を行う。
だが、PX−02はエールストライカーパックをこのMS専用に再設計し、改造したものを装備しているため、さらなるスピードを得ていた。
さらに言えば、ただでさえでも素早いアストレイに強化ブースターが付いたようなもの。
ザフト一般兵より少し上程度の傭兵では、追いつけるはずがなかった。
やがて、銃弾はなくなり、サーベルに替えようとするも、一気に接近され、先程のジンと同じように斬られ、爆発していった。
サキート:「2機がロストだとぉ!ええい!貴様は・・・何っ!」
予期せぬMSの登場に頭をフル回転させていたサキート。
しかし、残りの傭兵も討たれたことがすぐに判明する。
どうやら、PX−02のビームライフルを撃たれ、死んだらしい。
サキート:「ちっ!ならば、そこのMAだけでも!」
狙いを再びキールのメビウスへと移す。
改めて狙いを定め、ビームサーベルで切りかかろうとする。
それに気づいたキールは進路を母艦へと変え、逃げきろうとする。
だが、MSの機動力から言ってメビウスが逃げ切れるとは思えなかった。
状況をすぐさま整理し、キールを助けに向かうサユリ。
適度にビームライフルで牽制を行う。
キール:「助かったぜ!サユリさん!」
通信を繋ぎ、キールは言葉とともに一礼する。
その後、艦へと帰還した。
MAでは討たれる可能性が高いことを考慮した上での判断だった。
一方で、サユリはサキートの前に立ちふさがる。
サキート:「サユリ・ルミナーン、貴様も邪魔をするか?」
サユリ:「そうね。あなたが引いてくれない以上は!」
互いに通信で言う事を言うと、共に通信を閉じる。
そして、2機とも接近戦を試みた。
二刀流で攻めるサユリに対し、片手ながらも奮闘するサキート。
だが、戦況はサキートの方が不利な事を示していた。
先程から戦闘しているサキートと先程出撃したばかりのサユリのMSでは、エネルギーの差が歴然だったからだ。
サユリ:「これでっ!」
サーベルを撃ち合った後、後方へ一端距離を取る。
やがて、背中にあった武装が左肩上部へと姿を現した。
武装の姿が現してすぐに砲弾は放たれた。
サキート:「回避不可能か!ならば、シールドをっ!」
予想外の攻撃に一瞬呆気にとられてしまうサキート。
呆気にとられた自分を恨みながら、サキートは何とかシールドで防御する。
何とか防御できたものの、何度も防御すると言うのは無理そうだった。
PXシリーズのシールドはG兵器などと同じく、主にビーム兵対策が主流であるからだった。
そのせいで実弾に対する攻撃はあまり防げない傾向が強かったのである。
サキート:『実弾はPS装甲で何とか出来るが、これ以上のエネルギーの減少は母艦への帰還が・・・となれば仕方ないな』
サユリ:「えっ?降参?」
武器を全て収め、両手を上げるPX−04。
その予想外の光景にサユリだけでなく、艦に居るデオム達も見とれてしまう。
だが、それは一瞬で起きた。
敵が見とれていた隙にサキートは素早く、その場を離脱したのである。
サユリ:「デオム、追撃はしないで帰還するわ。誰かさんのせいで修理するべき場所も増えちゃったしね」
デオム:「そうだな。せめて、あいつが帰ってくる前に済まさねばな」
*
オレンド:「それで、修理しているというわけか」
戦闘から数時間後。
仕事を終えたオレンドは予定より少し早く帰還した。
だが、フツノミタマの惨事に驚いていた。
外部装甲は核攻撃を受けても丈夫なように作られている。
そのはずが、修理しているのだから、オレンドが驚くのも無理はなかった。
レミーナ:「そういうことよ。ところで、これからあなたはどうするの?」
一通りの説明を終えたレミーナ。
彼女はブリッジの仕事を一人でしていた。
艦長であるデオムは戦闘があったための報告書の作成をするために自室で仕事をしている。
一方、サユリとキールは修理の方をしていた。
オレンド:「俺は少し飲みに行って来るさ。飲み仲間達のところへな。あ、もちろんMSじゃなくてシャトルで、だぞ?」
レミーナ:「そう・・・。ちゃんと任務に関する報告書は提出してね。マサカズはそういうところはうるさいから」
オレンド:「知っているさ。お前より前にここへ配属されたからな」
そう言ってオレンドはブリッジを去ろうとした。
しかし、その時レミーナに声をかけられる。
レミーナ:「ねえ、マサカズってどうしてあんなに強いの?それに指示もしっかりしているし・・・」
オレンド:「別に強いわけじゃない。あいつでも人間だ。それに俺やお前が来るまでに色々あったんだろう。そうでなければ、15歳であそこまで落ち着いているわけがない。あいつはたぶん、色々あった事を繰り返させないようにまず自分自身が強くなって、そしてお前達を死なせないように指示をするんだろうさ」
そう言い残すとオレンドはブリッジを後にした。
一人残されたレミーナは本来の仕事へと戻る。
だが、仕事をしながらも彼女はマサカズのことが気がかりだった。
彼女はマサカズを特別好きなわけではない。
ただ、放っておけないのだ。
それはみんな同じ気持ちだろう。
だからこそ、この部隊は今も続いていると言ってもいいのである。
本当は自由にこの部隊から去っても、特に咎められるわけではないのだが、誰一人としてこの部隊から抜けた者は居ない。
ただし、戦死などは除くが。
レミーナ:「少し、調べてみるかしら・・・」
仕事を一時中断し、レミーナは彼の過去に関する情報を調べ始めた。
彼女は情報操作も担当するということもあり、ほとんどのパスワードを熟知していた。
それらのパスワードを使い、ブロックを潜り抜け、彼女はそれらの事は彼の部屋にある事を知る。
気づけば彼女はマサカズの部屋のロックを外し、部屋へと入っていた。
そして、数ある報告書のファイルを確認する。
レミーナ:「何々・・・、コペルニクス出張任務、ミレーユ王女護衛任務・・・」
順に見ていく中、レミーナは一つだけ色の違うファイルを見つけた。
題名は“初任務”と書かれていた。
彼の初任務はどんな任務だったのだろう。
その疑問が彼女を動かし、レミーナはそのファイルへと手を伸ばした。
レミーナ:「何よこれ・・・」
その内容は彼女を絶句させた。
見終えた後、彼が何故、初任務に関して自分やデオムに何も言っていないか、彼が名前を変えた理由などが理解できた。
10歳でその任務に就くにはあまりに重いのだ。
いや、任務に就くならまだしも結果が重かったのである。
しかも、10歳ならばトラウマとなっても不思議ではないほどに。
これは簡単に他人に話せるものじゃない、レミーナはそう結論を出した。
レミーナ:『これ以上は見てはいけない・・・』
あまりの内容に怖くなったレミーナはファイルを元に戻し、部屋を後にした。
彼の部屋を去ると、ブリッジに戻り、今一度彼の部屋をロックし、同時にロックを外した履歴などを完全に削除する。
それを終えるとレミーナは先程まで就いていた仕事を再開した。
あのファイルを見たことを忘れようとして。
END
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