ナタル:「あなたはマサカズ・ライモート大佐!」
その言葉、先程のムウの発言以上にどよめく。
マサカズ・ライモート。
年齢のわりに高い階級を持ち、現オーブ代表ウズミ・ナラ・アスハの側近(その仕事をするのは少ないが)として有名である。
その知名度はザフト軍にも知られ、主に危険人物として認識されている。
マサカズ:「あなたは確か・・・ナタル・バジルールさん?でしたか?それにフラガ中尉も」
どうやら、相手もナタルのことを知っているようだ。
何故か、ムウのことまで。
話に出されたムウは「今は大尉です」と答えた。
ナタルの方は彼との関係を話す。
「PHASE−3 崩壊の大地 Bパート」
それは戦争が訪れる前の事。
軍家の名門バジルール家に訪れていたマサカズ。
なんでも、特殊部隊の適任な人はいないか?ということを聞きに来たらしい。
彼は年齢のわりに厳しい口調で「この人は駄目だ」などと斬っていく。
ナタルも斬られた一人だった。
特殊部隊に必要なのは彼なりの条件があるらしい。
何日か居続け、銃の射撃訓練やポイントを教えたが、結局は誰一人採用することなく去っていった。
結果的に彼に見てもらったバジルール家の者は銃の使いなども上達すると言う事態になったのだという。
マリュー:「で、何故あなたがここに?」
マサカズ:「ザフト軍にMSの情報がばれたという情報を手に入れましてね。民間人の救助、及びに調査も兼ねてここへ来ました」
スーツを着ている男、マサカズはいたって冷静だ。
そのままマリューの問いに答えていく。
ある程度、答えるとキラがたずねる。
キラ:「本当にマサカズ・ライモートなの?」
マサカズ:「キラ!やっぱりか・・・。こんなところで再会できるとは思ってなかったよ」
彼の質問に淡々とマサカズは答えた。
その顔は話している事とは別に他の事を考えているように伺える。
話し終えると、思い出したように彼は写真を出してキラにたずね返す。
マサカズ:「キラ、この写真の子は見なかったか?」
その写真にキラは見覚えがあった。
シェルターへ押し入れたあの子である。
キラ:「その子なら、カトウ教授に会いに来てたよ。地震が起こった後、勝手に工場区へ走って・・・僕がシェルターに押し込めたから無事だよ」
その答えを聞いたマサカズは一安心する。
カガリが死んでいたらウズミは悲しむ。
親子なんだから当たり前である。
マサカズ:「そうか、ありがとう。その子は僕の友達なんだ。にしても、いい友達を持ったな。コーディネーターということを認めてくれたうえで友達になってくれるなんて早々いないぞ?」
勝手に話が盛り上がるマサカズとキラ。
ムウはわざとせきをする。
これ以上、放っておくとさらに話が止まらないと感じたからだ。
マサカズ:「すみません。では、ブリッジに行きましょう。お話ししなければいけませんことが多いので」
ナタル:「では、私は人手の足りない医務室へ行きます。フラガ大尉とラミアス大尉は彼と共にブリッジへお願いします」
マサカズとマリュー、ムウはブリッジへと向かった。
ナタルは医務室へと。
何も指示されず、どうしたらいいか分からないキラ達。
そこにノイマンから指示が下される。
ノイマン:「君達!人手が足りないから手伝ってくれないか?医務室とこのデッキだ」
サイ:「分かりました。二手に分かれます!」
この発言にはミリアリア達も驚きを隠せない。
真意を疑う彼らにサイは答えた。
軍艦を見る経験はめったにない、だから今の間に見ておきたい。
確かに民間人が軍艦に乗る経験はまずない。
そういう意味では貴重な体験だ。
この意見に何故かトールも乗り気だ。
同じ考えに至ったらしい。
とりあえず、二手のチーム分けを行った。
医務室へ行くのがキラ、トール、ミリアリア、デッキに残るのがサイとカズイ。
そして、チームは分かれる。
*
ナタル:「おい、しっかりしろ!サンダース二等兵!これくらいの傷では死なんぞ!!」
サンダース:「バ、バジルール少尉殿・・・。少尉のような美人に看取られて死ねるなら、幸せであります。悔いは・・・ありません」
ナタル:「だから足を折ったくらいで、死ねんと言っている!」
とても話しにくい空気だ。
その静寂をミリアリアが破る。
ナタル:「なんだっ!今は忙しい・・・あ、ヘリオポリスの学生達か。すまない、怒鳴ってしまって。軍医がいなくて手の空いている者が手当てしている状況だから・・・君達名前は?」
思ったより、優しい人だ。
などと思いながら、自己紹介していく。
自己紹介が済むと、一人ずつ指示を与える。
ミリアリアはナタルの手伝い、トールとキラは艦内のけが人をつれてくる仕事だ。
キラとトールは言われたとおりに、けが人を探しに行った。
まず向かったのは通路だ。
すると、見事に一人発見した。
両足を負傷しているようだ。
キラとトールは医務室へと連れて行く。
すぐさま、次の場所へと向かった。
次に向かったのは展望台。
やはり、一人居た。
クッケト:「うぅぅ・・・。すまないが手を貸してくれないか?」
見ると、お腹に血が出ている。
包帯を一応、巻いているが、にじんだ状態だ。
トールが手を貸し、キラへとおんぶさせる。
そして、医務室へと連れて行く。
と、先程のように繰り返し、食堂へと向かった。
厨房の方を見るとけが人が居る。
どうやら、腕がまともに使えないのにジャガイモを運ぶのに手伝わされているらしい。
エレガツ:「兵隊も壊れちまえば食料以下ってこった・・・ぐっ!」
傷が開いたようだ。
キラとトールはあまり喋らないように促し、医務室へと運んだ。
他には見つからなかったという事もあり、医務室で彼らは解散した。
居住区に戻った彼らはミリアリアの話を聞いた。
ミリアリア:「それがさ、あのバジルール少尉って人すごい手際がいいの!どんどんけが人をさばいちゃってあたしなんかぽかーんと見ていただけって感じよ!」
そう話しているとサイ達も仕事が終わったらしく、居住区に顔を見せる。
何でも、MSのマニュアルとかを探させられたらしい。
などと話して一息つくのであった。
キラは眠りに入っていた。
*
クルーゼ:「ミゲルが戦闘記録を持ち帰ってくれたお陰で助かったよ」
ヴェサリウスのブリッジ。
クルーゼがG(ストライク)の映像を見て思ったことを口走る。
映像を見て、動きが明らかにおかしいくらい滑らかに動いている。
捕獲できないのであれば、ここで破壊する。
クルーゼはそう指示を行う。
アデス:「ミゲル、オロールはただちに出撃準備!D装備の許可が出ている!今度こそ完全に奴の息の根を止めてやれ!」
出撃許可が出なかったアスランは出撃を志願する。
しかし、クルーゼとハデスは許可しなかった。
もうアスランは任務を終えているのだから。
ディアッカ:「D装備だってよ!」
イザーク:「要塞攻略作戦でもやる気かな?クルーゼ隊長は・・・それに自業自得です。中立だとか言っといてさ」
ニコル:「くっ・・・!」
3人は待機して、事を見守ろうとしていた。
ヘリオポリスがどうなろうが、悪いのはオーブなのだから。
出撃許可が出なかったアスランは、ブリッジを後にするのであった。